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特殊清掃「戦う男たち」

自殺・孤独死・事故死・殺人・焼死・溺死・ 飛び込み・・・遺体処置から特殊清掃・撤去・遺品処理・整理まで施行する男たち

ビッグウェーブ【トラックバック】

2024-12-18 05:52:44 | 特殊清掃
人間であるかぎり、気分・感情に波があるのは自然なことだろう、
ただ、私においては、その波の高低差が激しいのが難点。
特に、30歳を過ぎてからは、全体的に低い位置で上下している。
歳のせいかメンタルな問題か分からないが、若い頃に比べて、気分がスカーッと晴れることが少ない。


そうは言いながらも、特掃業務においては、年々パワーが上がっている。
特掃業務に対しては、体力は落ちても、精神力は上がっているのだ。
単に、経験を重ねている がゆえの「慣れ」かもしれないけど、我ながら、「たくましくなったなぁ」と思うことが増えてきた。
そんな今では、どんな現場でも臆することなくズカズカと入り込む。
そして、「こりゃヒドイ!」等と、時には無神経な言葉を吐いてしまう。


そんな私でも、特掃を始めた頃はいつもビビりながら現場に入っていたものだ。
あまりの凄惨さに、目を閉じたこともある。
あまりの悪臭に、一分と部屋に留まれなかったこともある。


そんな初々しかった頃の話。
とある1Rマンションの一室。
腐乱現場はトイレだった。
依頼者はマンションのオーナー。


玄関を開けた途端に強烈な腐敗臭とハエが襲ってきた。
それだけで、逃げたい気分。
内心ではかなりビビっていたのだが、そんな心情を依頼者に悟られてはマズイので、精一杯気丈に振る舞った。


玄関を突破し、問題のトイレの前へ。
悪臭が外にもれないように、玄関ドアは閉められてしまった。
もちろん、依頼者は外。
薄暗くて臭い室内には私一人きり。
その時点で、既に半泣き状態。


しばらく悶々とした後、勇気を振り絞ってトイレのドアを開けてみた。
すると、衝撃の光景が目に飛び込んできた。
液化汚物になった元人間が床一面に溜まっていたのだ。
ユニットトイレの床は、液体を浸透させないから、腐敗液はドア下面までなみなみと溜まっていた。


気持ち悪さを通り越した嫌悪感で、私の脳と心は、「イヤ!嫌!イヤ!無理!ムリ!無理!」と、完全な拒絶反応を示した。
まるで、脳ミソと心臓が、プルプルと横振れするかのように。


「これをきれいに掃除するのが俺の仕事(責任)か?」
そう考えると物凄い重圧がのしかかってきた。
更に、何とも言えない惨めで悲しい気分に襲われた。


「何で俺がこんなことしなきゃならないんだ?」
「生きていくためか?」
「食っていくためか?」
「俺は、こんなことをしなきゃ生きていけない人間なのか?」
その葛藤の中で、私は深く落ち込んだ。
「最低だ・・・最悪だ・・・」
私の心は完全に泣いていた。


あれから、私も歳を重ねた。
葛藤と戦いの日々に変わりはないが、私は強くもなり弱くもなった。
頑張れるときもあれば、頑張れないときもある。
晴れの日もあれば、雨の日もある。


日々の気分にも波はあるし、人生にも波がある。


私には、凪の道ではなく波浪の道が定められているのだろうか(それとも水中?)。


今でもアップアップ状態なのだが、どうせならビッグウェーブを待ちたい(望みたい)。
波にのまれるのもよし、乗れれば尚よし。
それが私の人生。
でも、希望の浮袋を持っていれば、とりあえず溺れることはなさそうだ。


私のアップアップ人生は、まだしばらく続きそうだ。


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2006-10-22 13:06:53より

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リアル【トラックバック】

2024-12-13 04:49:59 | 特殊清掃
現場に行ってから、「こんなのありかよぉ」と思うことは多い。
床を埋め尽くすウジの集団、壁を黒く染めるハエの大群、飛び散る血、正体不明の肉塊etc。

私が現場に到着するのは、腐乱死体の本体は警察が回収した遺体の後。
死体本体が残っていることは稀である。

まぁ、「死体本体」と言っても、その溶け具合いによって、指すモノが変わってくるのだが。
溶けた人間が相手じゃ、何が「死体本体」なのか不明確だ。
とりあえずは、骨は本体にあたる。
では、「死体本体」に含まれないものは?
お馴染みの、腐敗液・腐敗粘土・毛髪などの小物(?)がそう。

現場によっては、残された汚物から遺体があった状況がリアルに想像できるところがある。
手足や頭があった位置がハッキリ分かると、結構不気味なものである。
人間の痕を残す汚物が、私の想像力をバーチャルな世界に引き込むのだ。

そんな時は、いつもの手段で脳の思考を停止させるしかない。
防衛策はそれしかない。
ある腐乱現場。
汚染場所は洗面所だった。
洗面台の前に膝まづくような格好で汚染が広がっていた。
その汚染から、シンクに両腕と頭を突っ込み、膝立ち状態だったことがうかがえた。
シンクの内側には無数の頭髪がつき、腐敗液・腐敗脂が溜まっていた。

死後日数がそんなに経っていなかったのだろう、腐敗液はみずみずしい(変な表現?)ままで、腐敗粘土にまではなっていなかった。

大量の髪が小さな排水口に詰まっているらしく、先に腐敗液を除去するしかなかった。
吸水・吸油用のパックを使って吸い取りながら、髪の毛も拭き取った。

排水口が浅いところで詰まっていたのは不幸中の幸いだった。
深いところまで汚染されていると、水回りの管を通じて風呂・トイレ・キッチンにまで悪臭がまわる可能性があるからだ。

アパートやマンション等の集合住宅の場合、その臭いは他住居にまでまわることもある。
「家の水回りから変な臭いがしてくると思ったら、他世帯の腐乱死体臭だった」なんてことも有り得るわけ。
こうなると、部屋の消臭だけではどうすることもできない。
ま、ここではそこまでのことにはなっていなかったので、よかった。

シンクの脇には腕の痕、ワインレッドの液体が伸びていた。
腐敗液の態様からは、警察が遺体を回収した様もうかがえる。
それもひたすら拭き取るしかなかった。
床の汚染も同様。

特掃作業が終わってから、依頼者が現場確認にきた。

「遺体はどんな格好で死んでたんでしょうね?」
そう尋ねられた私は、洗面台の前に膝まづきポーズをとって言った。
「ちょうど、こんな感じだったと思います」

何も考えずに安易な行動をとってしまった私。
とっさに、特掃前の光景が頭を過ぎった。
頭の中で、自分と腐乱死体が重なってしまい、思わず「ウワッ!」と叫んで飛び退いた。

こともあろうに、実際の現場で腐乱死体を代演する自分にこう思った。
「いい度胸をしてるのか、バカなのか・・・」

汚物が人間的だと精神的にキツい!
人間が汚物的だと、これまたキツそうだけど。


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2006-10-20 16:05:29
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笑いのツボ【トラックバック】

2024-12-10 05:14:05 | 特殊清掃
この仕事をやっていると、「大変な仕事ですね」と言われることが多い。


その言葉が意味するところは、労い・励まし・感謝であり、嫌悪・蔑み・同情である。
同じセリフでも、声のトーン・顔の表情から、その人が何を思ってそんなセリフを発するのかが、だいたい分かる。


今更、奇異の目で見られたところで気にするまでもないが、時々、「俺って、しょうがないヤツだなぁ」と思うことがある。


ある日の夕方、マンションの一室に出向いた。
依頼者はマンションのオーナー。
現場マンションの駐車場で待ち合わせすることになっていたのだが、約束の時間になってもなかなか現れなかった。


時間を持て余した私は、現場の部屋の前に行き、玄関ドアの隙間から腐敗臭を嗅いだりしながら待っていた。
(※腐敗臭フェチではないので、くれぐれも誤解のないように。中の状況を想定するための行為である。)
それなりの臭いを感じたので、並、またはそれ以上の汚染であることを想像した。


しばらくすると、依頼者がやって来た。
手には、この場に合わないバッグを持っていた。


簡単な挨拶を交わして、とりあえず現場を見ることに。


すると、「今、仕度をしますから」と、依頼者はバッグから何かを取り出した。
上下の雨合羽(深緑色)、ゴーグル、防塵マスク、手袋、長靴etc・・・次から次へと色んなモノがでてきた。
そして、それらを身につけはじめた。


本格的な装備を整えた依頼者は、「一体、これからどこに行くの?」と言いたいくらいの格好になっていた。
軍隊の化学部隊みたいに。
一方の私はいたって軽装。
作業ズボンにスニーカー、半袖のポロシャツ。
衛生用品と言えば、薄っぺらいマスクと手袋ぐらい。


二人のギャップがあまりに大き過ぎて、かなりおかしなコンビになってしまった。
私は、別の意味で回りの人の視線が気になった。


依頼者と私は、現場の玄関の前に立った。
先に嗅いでおいた腐敗臭がしてきて、依頼者の息づかいが急に荒くなってきた。


「大丈夫ですか?」
「だ、大丈夫です・・・」
しかし、あまり大丈夫そうではなかった。


「私一人で行ってきますよ」
「え?一人で行ってきてくれるんですか?」
「ええ、かまいませんが」


私は、依頼者の重装備を見回しながら言った。
「せっかく準備をして来られたのですから、一緒に入られてもいいですけど・・・」
依頼者は首を横にプルプルさせながら、「お願いします!」


依頼者は、てっきり自分も現場に入らなければならないものと思って、かなり気を重くしていたらしかった。
そして、その憂鬱さが、現場到着を遅らせたのだろう。


依頼者に現場を見てもらうことはベターなのだが、気が進まないなら見ない方がいい。
凄惨かつインパクトのある腐乱死体現場は、トラウマになって一生引きづることにもなりかねないから。


結局、私一人が現場に入って、中の状況を確認した。
中の見分が終わってから外に出ると、依頼者は重装備のままで「スーハー、スーハー」と荒い呼吸。
中に入った訳でもないのに、前より息が荒くなっていた。
ゴーグルも曇って、回りがよく見えていないようで、玄関から離れる私の後ろをピッタリくっついて来た。


我々は駐車場に戻り、私は中の状況を伝えた。
素人でも理解しやすいように、丁寧に説明。


私の話を黙って聞く、謎の化学部隊員の姿がかなり可笑しくて、思わず笑いながら話す私だった。


「こんな現場でも笑っていられるなんてスゴイですね」と依頼者は感心してくれた。
「いやぁ、こんな仕事だからこそ、自分を鼓舞するために無理矢理笑ってるんですよ」と私はごまかした。


作業の打ち合わせが済み、我々は後日(作業日)の再会を約して別れた。


「俺って、しょうがないヤツだなぁ」と思いながらも、依頼者の姿に笑いを抑えられない私だった。
緊張の糸が解けたのだろう、謎の化学部隊員は、自分の姿が平和な街に馴染まないことに気づかないまま歩き去って行った。


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2006-10-15 10:57:28
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汗と涙(後編)【トラックバック】

2024-12-07 05:53:24 | 特殊清掃
「しょうがない!やるしかない!」
私はまず、道具を揃えることを考えた。
代用できる物は、だいたいどこの家にもある。
男性の許可をもらって、あちこちを物色した。
そして、手袋・マスク以外は、台所・風呂・洗面所にある一般の生活用品を使わせてもらうことにした。


一通りの代替道具を揃えてから、私は腐敗液の除去に取り掛かった。
男性は、部屋を出たり入ったりして落ち着かない様子だった。


手始めに固形物の除去。
頭皮付の毛髪(毛髪付の頭皮?)を持ち上げた。
長い髪の毛に腐敗液がベットリの光っており、それが手に絡んでくる様が髪が生きているようで不気味だった。
多少のウジはいたものの、無視できるレベルだった。


次に、腐敗液を拭き取る作業。
厚い部分や乾いた部分は、「拭く」と言うより「削る」と言った方が適切。
私は、床にしゃがみこんで、ひたすら腐敗液と格闘した。
暑い季節ではないのに、私の額と首筋には汗が滲んできて、そのうちに床にポタポタと垂れ始めた。


しばらくすると、男性が寄って来て、黙って私の作業を見始めた。
私は、男性の存在は無視してコツコツと腐敗液を片付けていった。


しばらくの沈黙の時を経て、男性が声を掛けてきた。
「大変な仕事だね」
「よく言われます」
「稼げるんでしょ?」
「そうでもないですよ」
「だったら、なんでやってるの?」
「他に取りえがないもんで」
「そんなことないでしょ」
「残念ながら、そんなことあるんですよ」


男性は、私の作業の過酷さを目の当たりにして同情してくれたのか、横暴キャラから柔和キャラに変身してくれていた。
そして、話しているうちに、お互い打ち解けてきた。


私は、床にしゃがんで手を動かしながら、男性は私の傍に立ったままで会話は続いた。


「娘は自殺した可能性が高いらしいんだよ・・・」
「そうですか・・・」
「女房は、そのショックでまともに話もできなくなってね・・・」
「・・・」
「驚かないんだね」
「職業病ですかね」
「娘は精神科に通ってたらしくて・・・薬を大量に飲んだらしいんだ」
「そうだったんですか・・・」
「精神科に通ってたことすら知らなかった私は、親として失格だよ」


男性は悔しそうに言いながら、自分に腹が立って仕方がないみたいだった。


腐敗液もだいぶ除去できたところで、男性は私の作業を手伝い始めた。
素手でやろうとしたため、私は慌てて手袋を勧めた。


「死んだ娘のためにしてやれることと言ったら、これくらいのことだから」
男性は私と一緒になって床を拭いた。


気づくと、男性の足元にポタポタと雫が落ちている。
どうも、泣いて涙を落としているみたいだった。
悲しくて、寂しくて、悔しくて仕方がないのだろう。
少しは男性の気持ちが分かった私は、気づかないフリをして床を拭きつづけた。


腐敗液の上に男性は涙を、私は汗を落としていた。
涙と汗で拭く腐敗液、こんな局面を故人は想像することができただろうか。


「涙は心の汗って言うよね」
「TVか何かで聞いたことがありますね」
「なんだか涙がでて仕方がないよ」
「涙が心の汗なら、汗は心の涙ですかね?」
「・・・そうかもね」
「現場で汗をかくことが多い私は、心が泣いているのかもしれません・・・こんな仕事はイヤだってね」
「正直言わせてもらうと、色んな意味できつそうな仕事だよね」
「おっしゃる通りです」
「でも、アンタに頼んで助かったよ」
「そう言っていただけると幸いです」
「大家と近隣からうるさく言われて、弱っていたもんで・・・こっちは、娘が死んだって言うのに」
「さっさとここ片付けて、また新しい日を迎えましょうよ」


汚染箇所の掃除と汚物の撤去を終えた私は、汗を拭いながら残された両親の今後を考えた。
そして、眠くなりながら帰途についた。


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2006-10-12 16:32:00
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汗と涙(前編)【トラックバック】

2024-12-05 12:47:16 | 特殊清掃
夜の出動は身体にこたえる。
特に、家でくつろいでいる時に出動要請が入ってくると、かなり気落ちする。
その重さは想像してもらえると思う。
普通の仕事でもかなり面倒だろうに、私の場合は行き先にあるものがアレだからなおさらだ。

そんなある日、一本の電話が入った。
ぶっきらぼうな男性が一方的に特掃を指示してきた。
ハイテンションで私の言うことを最後まで聞かない男性は、なんだか怒っているようでもあった。
私の質問にも最後まで答えず、とにかく一方的に、命令口調に近い話し方だった。

私としては、見ず知らずの男性に横柄な態度をとられる筋合いはない。
見積りだけだったら翌日にしてもらおうかと交渉したが、男性は聞く耳を持たず「とにかく、今すぐ来い!」と言わんばかりの勢いだった。

寛容さがない私は、男性の無礼な態度に不満を覚え、見積依頼を断ってしまおうかと思った。
しかし、「いちいちそんなことに引っ掛かっていたんじゃ、死体業なんかできないか」と、気を取り直して現場に向かうことにした。

現場に着いたのは、夜中近くになっていた。
電話をしてきた男性は、イメージ通りの横暴キャラで、私に労いの言葉ひとつ掛けることはなく、いきなり部屋に案内した。

現場は新しいアパートで、フローリングの中央に腐敗液が広がっていた。
汚染としては並。
腐敗液に、頭皮とともにくっついたままの長い髪の毛と部屋の雰囲気が、故人が女性であることを示していた。

男性は故人の父親、つまり、死んだのは男性の娘らしかった。
故人はまだ若そうだったが、雰囲気的な判断で男性に故人の年齢を尋ねることは控えた。
ましてや、そんな雰囲気では死因なんか聞けるはずもなかった。

「故人は若い女性・・・」
私は、とりあえず自殺を疑った。
だから、まず先に汚染箇所に面した壁や天井を観察した。
念入りに凝視したが、首吊りを思わせるようなものは発見できなかった。

自殺方法は首吊りとは限らないが、今までの経験から、まず首吊りを疑う私なのである。

時間も時間だったので、私はそそくさと現場の状況を観察して、特掃の見積金額を提示。
すると、男性は、私が提示した金額に異を唱えることなくすんなり了承した。
私は、電話の時から男性の態度が気に入らなかったので、「仕事にならなくてもいいや」と、始めから値引き交渉には乗らないつもりでいた。
しかし、予想に反して男性の方から値引要請はなかったので少し拍子抜けした。

金額の問題はあっさり片付いたのはよかったが、それからが問題だった。
男性は、「これから直ちに作業してほしい」との依頼(指示)してきたのだ。

「えっ!?これから?」私は困った。
現場見分・見積だけのつもりで来たため、ろくな装備がなかったためだ。
明日、夜が明けてからの出直しではダメなのかどうか交渉したが、男性は頑として受け付けてくれなかった。

「わざと俺を困らせているのか?」
「俺が困る様を見て楽しんでいるのか?」
私は疑心暗鬼になってきた。

どんなに頑張っても、できることとできないことがある。
私は、最初より低い姿勢をとって(チャッカリしてるでしょ)作業スケジュールを交渉した。
それでも、汚染部分の清掃と汚物の撤去は当夜中に行うことになった。

「上等だよ!やってやろうじゃないか!」
私は、ヤケクソ気味に特掃の仕度にとりかかった。

つづく



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2006/10/11 15:54:02
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女心Ⅱ(前編) ~独居女の悲哀~【トラックバック】

2024-11-22 07:09:31 | 特殊清掃
統計によると、自殺者数の性別比は、だいたい男7:女3らしい。
私の経験からもそれは実証されている。
また、孤独死の数も男性の方が多いと思う。


自殺をする人間を一概に「弱い」とするのは軽率かとも思うが、生きることの本質においては男性より女性の方が強いのだろう。
平均寿命が男性より女性の方が長いこともしかり。
ちなみに、街で見かける浮浪者は、圧倒的に男性が多いことにも 何か共通するものがあるような気がする。


中年の女性が孤独死した。
離婚経験のある故人は、子供もいなかったらしかった。


「オシャレな人だった」
「上品な人だった」


遺族の言葉通り、部屋はきれいに整理整頓されており、インテリアもオシャレにコーディネイトされていた。


ただ、どんなにオシャレできれいな部屋でも、腐乱死体がだいなしにしてしまう。
腐乱の程度は酷かったが、汚染状態はシンプルだった。
主だった汚染は布団とベッドくらい。
それを撤去してウジ・ハエを始末してしまえば、見た目には普通の部屋になった。
「見た目には」というのは、「腐乱臭はバッチリ残っている」ということ。


遺族は、「いくつかの物を持ち帰りたい」と言う。
廃棄物が少なくなるのは私にとっても助かることなので、家財の選別を手伝うことにした。


その前に、消臭剤を噴霧し、窓を開け、悪臭を軽減させた。
それから、遺族にマスクと手袋を渡して、部屋に入ってもらった。
遺族は、あれこれと相談しながら捨てる物と捨てない物を仕分け始めた。
汚染物を片付けたとは言え、遺族は、腐乱部屋には入りたがらなかった。
その部屋は悪臭も強く、何よりも精神的に抵抗があるようだった。


そういう訳で、その部屋にある荷物の分別は私が代行することになった。
タンス・書庫・収納ケース・引き出し類の中身を一つ一つ確認。
そして、それらの物の必要or不要を隣の部屋で作業中の遺族に尋ねた。
必要な物は遺族のいる部屋に運び、不要な物は廃棄物袋にポイッ。


部屋には小さな仏壇があった。
家具調の仏壇で、特に汚れてもいなかった。
私は、遺族が見やすい所まで仏壇を移動して、その処分についての指示を仰いだ。


遺族は、仏壇を捨てるかどうか悩んだ。
「捨てたいのに捨てられない」と言った感じで。
アドバイスを求められた私は、あくまで個人的な見解であることを前置きしてから応えた。


「仏壇や位牌なんて、 ただのモノ」
「魂や霊とは関わりのない」
「家具やインテリアと同じ」
「物理的な存在を維持するには限界がある」
「したがって、捨てたって構わないと思う」


それを聞いた遺族は、「そりゃまた極端な考え方だなぁ・・・」と、割り切れない様子だった。


自論を吐いた私も、ほとんどの人には賛同を得られない理屈であることは承知していた。
後は、遺族の判断を待つしかなかった。


結果、位牌などの中身だけを持ち帰って、仏壇本体は廃棄することになった。
よくあるパターンの結論だ。


私は、仏壇の中身を丁寧に取り出し、一つ一つを遺族へ渡していった。
下部の引き出しからは、経本や予備の線香・ローソクなどがでてきた。


そして、その中に、布に包まれた細長いモノがあった。
手に取ると、ズシッとした重量感。
「多分、仏像だと思います」
「この大きさでこの重さだと、高価なモノだと思いますよ」
と調子のいいことを言いながら、うやうやしく布をめくってみた。


「ん?何だこりゃ!」
そこで私が目にしたモノとは・・・


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2006-10-02 17:59:32
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変身【トラックバック】

2024-11-20 05:14:36 | 特殊清掃
子供の頃、私の回りには多くの変身ヒーローがいた。
ウルトラマン・仮面ライダー・ゴレンジャー・キカイダーetc
ちょっとマイナーな者を含めると、もっとある。
ちなみに、私はそっち系のマニアではない。


彼等は、何故か窮地に陥るまでは変身しないで戦う。
そして、やっと変身したかと思うと、いきなりパワーアップ。
必殺技を繰り出して大逆転。
悪者を倒して一件落着。


毎回、「もっと早く変身すればいいのに」と思いながらも、お決まりのストーリーにのめり込む幼い私だった。


その他にも変身が得意(好き)な人達がいる。


「女性」だ。
女性は、持ち物や服装等によって見事に変身する。
その最たるものは化粧だろう。
全ての女性に当てはまる訳ではないだろうが、before.afterでは、とても同一人物とは思えないくらいの変身を遂げる人がいる。
自分の顔に化粧を施して変身するということは、ハイレベルな技術を要すると思われる。


また、凝り過ぎの化粧が、変身効果をマイナスに逆行させているような人もいる・・・汗をかいてパンダ顔になっている人とか。
・・・セクハラになるので、このネタはこの辺でやめておこう。


ま、女性の変身ぶりには感心するということだ。


まだ他にも、スゴイ変身ができるヤツがいる。
ウジ→ハエだ。


ある腐乱現場。
散らかった部屋の中央に、生々しい汚腐団があった。
「こりゃまたヒドイなぁ」
死体+布団+時間=汚腐団
なかなか完成度の高い汚腐団だった。


原則として、現場初見(見積)と特掃作業は別々の日に行うもの。
しかし、この現場では依頼者の強い希望で、汚腐団だけは直ちに梱包することになった。


汚腐団は、腐敗液で真っ黒に染まっていた。
敷布団をメインに、肌掛・毛布・掛布団まで汚染済み。
端を持ち上げただけで、布団とは思えないズッシリとした重量感。
目にも腕にも、腐敗液をタップリ吸っていることは明白だった。


当然、大小のウジがウヨウヨ。
無数のウジが、いくつかの大きな塊をつくっていた。
個々のウジを相手にしていてもラチがあかないので、私は、そのままの状態で汚腐団をクルクル巻き巻きして袋に入れた。
滴る腐敗液に「ヒェ~ッ」、漂う腐敗臭に「オェ~ッ」。
高濃度の腐敗ガス(メチャクチャ臭い!)を防ぐため、袋は完全密閉。
翌日の特掃作業で撤収するつもりで、その汚腐団袋は部屋の隅に置いておいた。


翌日の朝。
特掃の装備を携えた私は、現場に入った。
そして、前日に梱包しておいた汚腐団の袋を見て驚いた。
袋の内側を、無数のハエが黒く埋め尽くしていたのだ。


「お゛ーっ!なんだ?このハエはーっ!」
しばし頭が混乱。


昨日の時点では、袋の中にハエなんていなかった。
そして、完全密閉状態の袋には、外部からハエが進入できるはずもなかった。
しかも、現実には大量のハエが袋の中にいた。


前日、私が梱包した汚腐団には、大量のウジが暮らしていた。
そのウジ達が一晩でハエに羽化したのか・・・そうとしか考えようがなかった。


汚腐団の中は、ウジにとっては食べる物にも寝るところにも不自由しない快適な環境。
スクスクと成長したとしてもおかしくはない。


しかし、その成長スピードには目を見張るものがある。
前日の午後から当日の朝まで、24時間は経っていない。
正味、たった十数時間でウジは立派な?ハエに変身した訳だ。
んー、凄過ぎる!


ウジの変身パワーに、驚かされるばかりだった。
前段で女性の変身ネタを書いた。
では、男性はどうだろう。


自分より力のある人にはペコペコ、自分より弱い者には横柄に大威張り。
こんなのも、一種の変身かも。
TVヒーローや女性と違って、格好悪い変身だね。


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2006-09-29 16:04:13
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デストロイヤー【トラックバック】

2024-11-18 06:50:13 | 特殊清掃
「デストロイヤー」と聞いて何を思い浮かべるだろう。
私は、プロレスラー。
白いマスクをした謎の覆面レスラーだった。
・・・もう30年も前、懐かしい昔のことだ。


世の中には、今でも色々なデストロイヤーがいる。


特掃の依頼が入った。
現場はマンションのベランダ。
ベランダと言うより、ルーフバルコニーと言った感じの、広めのスペースだった。


そこには、大量の血痕が広がっており、茶色く乾いていた。


屋上から人が転落してきたらしい。
血痕の広さから、転落した本人は死んだものと思ったが、重傷は負ったものの一命は取り留めていた。


自殺を図って屋上から飛び降りたのだが、高幸か不幸か、その家のベランダに引っ掛かったらしい。


驚いたのは家の人(依頼者一家)。
ベランダから大きな衝撃音が聞こえたかと思ったら、人間が倒れていた・・・しかも、周囲は血まみれで。
それから、救急車が駆けつけたりして、大騒ぎになったらしい。


私が行ったとき、その家は既に空家になっていた。
依頼者一家は、まだ住宅ローンがタップリ残っているのに、「気持ち悪くて住めない」と、出て行ったらしい。
「とても、悲しくて寂しかった」とのこと。


すこし前まで、依頼者一家は古くて狭い公営団地で暮らしていた。
そして、夫婦でコツコツ貯めたお金を頭金に、夢のマンションを購入。
依頼者は、自分も嬉しかったが、妻子の喜ぶ姿が何よりも嬉しかったそう。
平凡でも、平穏な暮らしだった。
しかし、その生活を奪う人間が現れたのであった。


この件は、賠償問題に発展しそうだった。
そして、多分揉めることになるのだろう。
残念ながら、結果的に泣きを見るのは依頼者の方。
仮に、賠償金がとれたとしても、住宅ローン(売却損)・改修費用・引越費用・新生活の経費を満額補填できる金額にはならないはず。


日常生活はもちろん、経済的に受けるダメージも大きい。
平和な家族の暮らしが、一人の人間の勝手な行動によって、いきなり破壊された訳だ。
もう、それは取り返しがつかない。


不幸中の幸いだったのは、飛び降りた人が死ななかったこと。
第三者からすると、「死んだ」と「生きている」では印象がまるで違う。
将来、この部屋を売却するにしても賃貸にだすとしても、その生死は大きく影響してくるはず。


冷たいようだが、本人にとっては命が助かったことがよかったのかどうかは分からない。
ここまでいったら、助からない方がよかったかもしれないと思ってしまう。


どちらにしろ、迷惑をかける筋合いのない他人を不幸に陥れた責任は重い。


清掃作業自体は簡単なものだった。
血液の分解に効く洗剤を使って洗い流すのみ。
短時間で終了した。


作業終了に合わせて、依頼者に来てもらった。
そして、清掃後のベランダを確認してもらった。


依頼者は、いきなり襲ってきた災難に対する怒りと悲しみをどこに持って行けばいいのか分からないみたいだった。


この自殺未遂者に同情する気持ちなんてなく、怒り心頭の様子。
当然と言えば当然の感情だ。


「俺達の生活をブチ壊しにしやがって!」
「病室に殴りこんでやりたい!」
「自殺するくらいなら俺が殺してやる!」
「本人の生死なんて俺の知ったことではない」
「償いのために苦しんで生きるべきだ!」


私に愚痴ることで、少しでも欝憤が晴ればいいので、私は頷きながら黙って聞いていた。


「でも、本人は死ななくてよかったですね・・・色んな意味で」
と、私。


自殺は、自分の人生を破壊するだけでは終わらない。
他人をも巻き込んで、その人生を破壊していくところに、本当の恐さがある。


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2006-09-27 16:46:59
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How much?Ⅱ

2024-11-15 05:33:05 | 特殊清掃
「お金で買えないものはない」
少し前、こんな言葉が物議をかもしたことがあった。
発言の主は、世間から異論や非難を受けることも承知したうえで、そういった言葉を吐いたのだろうと思う。


発言者の真意は計りかねるが、私は、この言葉に何か深い意味を感じる。
そして、否定したくても、否定できない自分がいる。


私は、お金で買えないものはたくさんあると思っている。
ただ、それらのほとんどは目に見えないもの。
人の心であり、身体の健康であり、時間でもある。
そう言いながら、目に見えないモノに対しても、金が何らかのかたちで影響を及ぼすことがあることも認めざるを得ない。


私も、目に見えるモノのほとんどは金で買えると思う。
そして、目に見えないモノに対しても影響する・・・お金って、それだけの力を持つものだ。


「いい給料もらってるんでしょ?」
色々な人と出会う中で、たまにこんなことを言われる。
「そんなことないですよ」
と返しても、信じてもらえない。
隠しておく必要もないので、具体的な金額を話しても、「また、冗談を・・・」と言わんばかりの表情をされてしまう。


「人の嫌がる仕事をやれば、人より高い給料がもらえる」といった構図は、もはや過去のものになっていると思う。
今は、個人の能力・資質や労働生産性、需給のバランスが、得られる報酬にストレートに反映される時代。


そして、人は個人の能力と資質に合った仕事をするしかなく、それが人の嫌がる仕事であってもなくても、個人の能力・資質・成果によって手にできる収入が変わるのは当然のことだろう。


自分を守ってくれるのは、自分の能力と自分がだす成果。
努力やプロセスより結果重視。
私は、この現実をシビアだとは思わない。
資本主義社会においては当然のことだ。
でも、そんな傾向一色に染まっていく社会に、いくらかの寂しさを覚える。


「幸せは買うものではなく創るもの」
こう言う人がいる。
非常に耳障りのいい言葉だし、ある種納得できる理屈でもある。
しかし、何となくシックリこない。
私レベルの人間は、創る材料は、やはり買わないと手に入らないような気がするのだ。


TV番組によくあるパターン。
発展途上国の自給自足生活やそんな暮らしをする人達を見て、「本当の豊かさとは、こういうものだ」「心が豊かな人達た」「幸せな人生を送っている」「日本人は心が貧しい」等とコメントするTV人がいる。
この類の発言は、私にとっては耳障りなものである。


そもそも、人の幸せや豊かさには万民共通の定義なんて持ちようがない。
なのに、自給自足生活の一部、しかも表面だけしか見えていないのに全部を知り尽くしたかのようなコメントを吐く。
そんな無責任さに抵抗感があるのだ。


「あんな貧乏暮らし、私はイヤだ」
「こんな不衛生な暮らし、私は耐えらない」
「私は、物が豊かで便利な日本の方がいい」
たまには、こんなコメントをするTV人がいたっていいのにね(そんなこと言ったら番組にならないか)。


「人は何のために生きるのだろうか」
「人の幸せって何だろうか」
「・・・やっぱ、金かなぁ」
生きている限り、尽きない悩みだ。


「ボロは着てても心は錦」⇔「心はボロでも錦が着たい」
こんな中途半端なところを行ったり来たりしながら、ここまでやってきた私。
多分、これからもそんな宙ブラリンのまま生きていくんだろう。


予想して(恐れて)いた通り、今年の収入が前年割れすることが確実になったので、少しスネている私である。
何か、支出を削らないとなぁ・・・やっぱ、食費かな。


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2006-09-24 08:49:07
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脂肪で死亡

2024-11-14 06:11:56 | 特殊清掃
世の中には、好きなだけ飲み食いしても体重が変化しない、羨ましい体質を持った人がいる。
私も、若い頃はそうだった。


二十歳前後の頃は、一食の御飯の量が二合位、多いときは三合の御飯をペロリとたいらげていた。
それでも、体重は増えることなく、わりとスリムな体型を維持できていた。
標準体重を少し下回るくらいで。


ところがである。
20代後半から、少しずつ何かが狂い始めた。
飲み食いした分が、体重に乗ってしまうようになったのだ。
みるみるうちに標準体重を突破したかと思うと、あれよあれよと言う間に「やや肥満」に。
気がついた時には、「肥満!」と太鼓判を押されるような始末になっていた。


私にとって、飲み食いは大事な楽しみの一つ。
大袈裟なようだが、生きる喜びの一つなのである。
特に、酒・肉料理・甘味には目がない。
焼肉+ビール、食後にアイスクリームなんて最高だね!
でも、身体には最悪・・・。
(しかし、飲み食いぐらいしか楽しみがないなんて、寂しい人生だね。)


腐乱した故人も、私と似たような趣向の持ち主だったみたい。
医師からはカロリー制限とダイエットを指示されていたらしい。


「腐乱場所は、浴室と脱衣場」と聞いていたので、私は浴室の方にウェイトを置いて行った。
風呂場の汚染は、これまた独特で、インパクトのある現場ばかり。
今までの経験から、どうしても風呂場の汚染ばかりが頭に浮かんできた。


ところが、汚染のほとんどは浴室の前の脱衣場が占めていた。
風呂場の汚染に比べれば少しはマシだったが、その汚染はジュニアヘビー級。
「うへぇー、こりゃヒドイなぁ」
と、いつもの一言。


作業は単純。
腐敗液を吸い取りながら、腐敗粘土を削り取る。
ひたすら、その繰り返し。
床にある、バスマットや細かい生活用品も、腐敗液・腐敗粘土にまみれてヒドイことになっていた。
そんな汚物を一つ一つ持ち上げて取り除く作業には、たまらないものがある。


そんな中、床の片隅に四角く盛り上がっている所があった。


「ここにも何かあるな」
私は、躊躇うことなく、それに手を出し、そして持ち上げた。
ズシリとした重量感があった。


ボト!ボト!ボト!ボトーッ!!!


「うげー!何だこりゃ?」
持ち上げたモノの中から、淡黄色の腐敗脂とウジが大量に溢れ落ちてきたのである。
その量と言ったら、半端じゃなかった。
フライパンに入れたら揚げ物ができそうなくらい(想像しなくていい)。


ひょっとしたら、故人は風呂上がりに体重計に乗ったところで倒れたのかもしれない。
そして、誰にも発見されないまま溶けていった・・・。

故人が、床に広がる自分の脂の量を見たら驚くに違いない。
そして、思うだろう。
「真剣にダイエットするべきだった」と。


私は、ウジのオイル漬を片付けながら考えた。
「食欲って、どうやったら抑えられるんだろう」
え?
食事前に特掃現場を思い出せばいい?


残念ながら、そのくらいことじゃ私の食欲は微動だにしないんだよねぇ。・・・だけど、一般の人には効果があるかもね。


そう!
ダイエットに苦しんでいる方には、私のブログはおすすめだ!






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2006-09-23 09:17:31
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寝込んだネコ!!

2024-11-10 12:49:22 | 特殊清掃
猫という動物は、好む人と嫌う人がわりとハッキリ分かれる動物ではないだろうか。
私は、猫より犬の方が好きだ。
もっとも、犬猫より牛(Beef)・豚(Pork)・鶏(Chicken)の方が好きだけど。


8月21日「飼猫とサラリーマン」の続編。
私は猫の死骸を片付けるため、再び現場に行った。


依頼者は、「気持ち悪くて、とてもネコの死骸を見ることができなかった」と言う。
ただ、私が伝えたその場所に近づくと異臭がするので、死骸の存在を感じたらしかった。


家の裏、陽当たりの悪い狭いスペースにネコの死骸はあった。
私が初めに発見したままの状態で残っていた。
そして、その腐乱臭は人のそれと酷似していた。
ただ、それが屋外だったことと、ネコの身体は小さいことが幸いして、そんなにキツい臭いではなかった。


ネコは、骨だけ残して完全に溶けていた。
これも人と同じ。
違うのは、体毛の有無。
言うまでもなく、ネコの全身は毛で覆われている。
人間でも、体毛の濃い人はいるだろうが、ネコの比ではないだろう。


地面のコンクリートに、溶けかかった毛皮がへばり着いていた。
そして、細かい毛には小さなウジが絡みついていた。


「やっぱ、ここにもいたか」
「まったく、たくましいヤツらだ」
ウジに対しては、嫌悪することより感心することが多い。


精神的に重かったのは、頭部。
眼球がなくなり、歯も剥きだしになっている頭蓋骨が、溶けかかったクサ~イ毛皮に覆われているような状態。
特に、眼球がない様が不気味さを増長させていた。
逆に、眼球だけがシッカリ残っていたら、そっちの方がもっと怖いけど。


私は、その状態をしばし観察してから、死骸の片付けに取り掛かった。
人間に比べてはるかに小さいネコ腐乱の処理は楽なものだった。


一つ一つの骨を拾ったりもせず、スコップですくった。
「小さい」と言っても、一発ですくい取ることはできず、何度かに分けて少しずつすくった。


頭部をすくう作業は、やはり鳥肌モノ。
胴体から外れた頭は、スコップの上でゴロゴロと不安定に転がった。
刺激的なその様からは、おのずと視線を逸らさざるを得なかった。


死骸をきれいに除去した後の地面(コンクリート)には、濡れたような痕が残った。
ネコの腐敗液・腐敗脂が染みついていたのだ。


今後のことにも影響するので、これをどうするかを依頼者と相談した。
すると、依頼者から意外な相談を受けた。
「ネコの死骸を庭に埋葬して欲しい」
「この家は故人の持ち物だし、しばらくは誰も住む予定もないし」
「故人も可愛がっていただろうし、ネコも故人を慕っていただろうから」
との優しい配慮だった。


ただ、埋める場所は私に任せるので、依頼者には知らせなくてもいいとのことだった。
「埋めた場所を知りたくないとは・・・」
依頼者は、単なる優しさだけではなく、ネコや故人の祟り的なものを恐れているようにも感じた。


何はともあれ、埋葬できることは私にとっては嬉しいこと。
庭の一角に適当な場所を見つけて、できるだけ深く穴を掘った。
そして、ネコを丁寧に埋めた。


気持ちもスッキリと、この現場を終えることができた。


私は、猫より犬の方が好きだ。
ただ、これは飼主の立場で考えた場合。
飼われる立場だったら、何事も従わされる犬より自由気ままが許される猫の方がいい。


飼うなら犬がいい、飼われるなら猫がいい。
自分は猫でいたいけど、回りの人間には犬でいてほしい・・・こんな人間関係に心当たりがある人は多いんじゃない?


そんな事を言いながらも、「お手」と「お座り」はシッカリできるように仕込まれて大人になった私。
ただ、残念なことに、尻尾をふるのが下手クソなんだよねぇ。

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2006-09-21 12:11:06
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社会的動物

2024-11-09 05:57:02 | 特殊清掃
「赤信号、みんなで渡れば恐くない」
「青信号、誰も渡らず渡れない」


個性より協調性、単独行動より団体行動が重んじられる世の中。


「出る杭は打たれる」
「郷に入らば郷に従え」


言うまでもなく、日本は議会制民主主義の国。
何事も多数決で決まる。
多少のストレスがかかっても、大多数の意見や考え方に埋もれていた方が安全である。
学校教育も、通り一辺倒の人間を作ることを最優先しているようにしか思えない。
そして、よくも悪くも、大多数に合わせられない人間は、つまハジキにされる。


小さな老朽一戸建。
狭い間取りの奥の部屋に腐乱痕があった。
部屋の戸を開けると、もぁ~っといつもの腐乱臭が覆ってきた。
「まったく、この臭いはいつ嗅いでもかなわねぇなぁ」
マスクをしていなかった私は、服の袖口で鼻と口を押さえた。


通常は、最もヒドイ汚染物を先に撤去するのだが、ここではそれができなかった。
この部屋でヒドク汚染されていたものは、布団・カーペット。
しかし、半ゴミ屋敷状態のその部屋では、布団もカーペットも、生活雑貨(ゴミ)に埋もれてしまってどうにもならなかったのだ。


仕方なく、私は濃い腐乱臭の中、ひたすらゴミを撤去した。
いたる所にウジの死骸が潜んでおり、それはそれでかなり汚かった。


ほとんどのゴミを部屋から出すと、汚染の全体が見えてきた。
当初の予想以上に汚染範囲は広く、汚染度も深刻だった。
全体が見えないうちはノーマルだと思って踏んでいた床も、実は汚染済みだった。


「おーっ?こりゃヒドイなぁ」
推定された死後経過日数からは、想像し難い汚染の広がり方だった。


私は、最後に残ったヤバイ部分に手をつけた。
汚腐団の一枚一枚を慎重に掴み上げ、ゆっくり袋に入れた。
一枚一枚を持ち上げる度に、自然と「お゛ーっ!」という悲鳴?がでた。


それでも、掛布団・毛布まではまだよかった。
敷布団を見たときは、「お゛ーっ!でたなぁっ!」と驚愕の声。
それは、汚腐団の中の汚腐団だった。
腐敗液をタップリ吸った敷布団は黒光りしそうなくらいで、小さなウジが無数にくっついていた。


参考までに・・・
ウジの大きさを米粒くらいと想像する人が多いと思う。
なかなか見る機会はないと思うけど、初期のウジは極小!
至近距離でないと、肉眼では確認できないくらい。
逆に成長したウジはデカい!
米粒の何倍にもなる。
こんなのが群れを成している光景を見ると、なかなかの迫力を感じる。


私は、心の中で深呼吸して(実際に深呼吸する勇気はない)、気持ちを落ち着けてから敷布団の撤去にとりかかった。


敷布団をめくり上げてみて、更に「お゛ーっ!!」。
表面より裏面の方がヒドク、ネトネトの腐敗粘土がベットリと溜まり、床には無数のデカいウジがいた。


「うぁ゛ーっ!なんてこった!」
私は、動きを止めた。
そして、この後の作業手順を考えた。
慎重に、慎重に。


スーパー汚腐団を何とか袋に詰めた私は、一息入れながら床のウジを眺めた。
よく見ると、ウジ達はみんな同じ方向に逃げていた。
丸々と肥え太った身体を波うたせながら、きれいに一定方向を向いて動いていたのだ。


「ん?おもしろい光景だな」
「一匹くらいは別方向に逃げるヤツがいてもいいのに・・・」
「ウジの社会にも色んな柵や事情があるのかな?」


身の危険を感じた本人達(本ウジ達?)は急いで逃げているつもりなのだろうが、そのスピードがウジの限界だった。
私のスピードに敵う訳がなく、あえなく御用。
悲しい結末が待っているだけだった。
皆とは違う方向に逃げていれば、助かったかもしれないのに・・・。


私は、闇雲に個性を主張すればいいと思っている訳ではない。
個性と個人のエゴを混同してはいけない。
自分を自制できないことを、個人の自由だと勘違いしてはならない。


また、協調性を発揮することと回りに妥協・迎合することは違う。


自由に個性を発揮しながらも、社会の秩序をキチンと守る。
今の世の中、そんな生き方が大事だと思う。


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2006-09-20 09:40:48
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きのこ狩り(後編)

2024-11-07 07:01:39 | 特殊清掃
この表題と前編からの流れで、後編の話がだいたい想像できると思う。
わざわざ書くまでもないような展開だが、秋らしい話題?として書き残しておこうか。

数日後、現場を確認した依頼者から電話が入った。
契約に沿った仕事をしたので、依頼者からは「問題なし」「ありがとう」の声が聞けるものとばかり思っていた。

しかし、依頼者は私の思いとは逆に、「部屋に何かがいる!」と興奮状態。
ちょっとパニックっていた。
それを聞いた私は、「何言ってんだ?」と、依頼者の言っていることが理解できなかった。
「何かがいる!」と言われても、私は何も心当たりがない。

「作業を終えて退室したときは、間違いなく部屋は空っぽになっていたはず・・・なのに、何かがいる・・・?
「野良犬が野良猫が入り込んだか?」
「それとも、虫の類か?」

とりあえず、その正体を知りたくて、依頼者に細かく質問をした。
腐乱現場では、ウジ・ハエが後から湧いてくることはあるが、どうもその類ではなさそうだった。
依頼者は、驚きのあまり、その正体を確かめないまま玄関ドアを閉めていた。
私は、もう一度中に入って確認してもらいたかったが、「恐くて入れない」と言う依頼者に無理強いはできなかった。
仮に、モノの正体が野良犬や野良猫の類で、依頼者に危害を加えるようなことがあってはマズイし。

「んー、何だろう・・・」
私はモノの正体を全く想像できなかった。
ただ、怖がる依頼者を放っておく訳にもいかないし、「正体を知りたい」という好奇心もあったので、私は現場に行くことにした。

私が現場に到着したとき、既に依頼者は退散していた。
私は、まず中の音に耳を澄ました。
特に、音らしいが音は聞こえなかった。
次に、玄関ドアをノック。
これにも反応がなかった。
それから、片手に棒状の工具を持ち、ビクビクしながらも気持ちを戦闘モードに切り替えた。
そして、意を決して玄関ドアを開けた。

「ん!?」
何もないはずの床に、何かが見えた。
驚いた私は玄関ドアを勢いよく閉めた。
確かに依頼者の言う通り、畳の上に不気味な何かがいた。
私は、ドキドキする心臓を静めるためと、頭を整理するために、しばらく外で小休止した。

「犬猫ではなさそうだし・・・爬虫類系にも見えたが・・・亀?・・・まさかな・・・じゃ、あれは何だ?」
いつまで考えても、私は答がだせなかった。

考えてても仕方がない。もう一度、意を決して、私は玄関ドアを開けた。
畳の上に、こんもりとした何かがいる。
ウロコ系の爬虫類、亀みたいにも見える。
私は、爬虫類が大の苦手!寒気がしてきた。
それでも、勇気を振り絞って近づいた。
そして、謎の物体をよく見た。

「な~んだぁ」
近くでよく見てみると、それはキノコだった。
畳の腐った部分にキノコが群生していたのだ。
大小一つ一つの傘がウロコのように見え、全体として結構な大きさの爬虫類のような形を成していたのであった。

私は、一気に気が抜け、同時に安堵した。
そして、依頼者に電話して、正体がキノコであることを伝えた。
驚きの余韻が残っている依頼者は、理解し難いようだったが、丁寧に説明した。

それにしても、キノコの成長は凄い!
わずか数日で、ここまで群生するなんて。


私は、現場に来たついでにキノコを片付けて行くことにした。
キノコは根を張っている訳ではないので、取り除くのに大した労力はいらなかった。
「このキノコは食える種類かなぁ」と、くだらないことを考えながら作業。
「たくさん採れたら売れるかなぁ」とバカな冗談を思いついた時、大事なことに気がついた。

「今、このキノコを片付けても、また生えてくる可能性は充分あるな・・・ってゆーか、生えてくるに決まってる!」
「だったら、今片付けても意味ないじゃん!」
私は、キノコ狩りを中止して現場を後にした。

それからしばらくの間は、キノコのその後が気になった。
「あの勢いだと、とんでもない量になるに違いない」
仕事に関係ないので、見に行きい好奇心を抑えた私だった。

過ごしやすい季節になり、心身ともにだらけてきた。
どうしたらシャキッとするだろう。

私にとってキノコは、旨くもマズくもないような食べ物。
そんなキノコでも大きな生命力を持っている。
たまには、キノコを食べて元気だそうかな。


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2006-09-19 09:04:22
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きのこ狩り(前編)

2024-11-06 05:00:58 | 特殊清掃
秋がやってきた。
食欲の秋、行楽の秋、勉強の秋、人によって色んな秋があるだろう。
私にとっては、やっぱ「食欲の秋」かな。
・・・食欲については一年中だが。
意地汚い私は、年柄年中、食い物のことばかり考えている。

若い頃はいくら飲み食いしても体重に響かなかったのに、歳を重ねると少しの飲み食いでも体重が増える。
身体の基礎代謝が落ちているからしい。
んー、悩ましい。
でも、食欲と食物があることだけでも感謝した方がよさそうだな。

老朽アパートの特掃依頼が入った。
木造1R、かなり古いアパートだった。
長い間、掃除や片付けをしていなかったらしく、中はゴミだらけ。
そして、この部屋の主は病院で亡くなって間もなかった。

玄関から中に入り、目に飛び込んできた部屋の光景に溜息がでた。
例によって、「こりゃヒドイなぁ」

暗~い部屋には家財道具・生活用品、そして大量のゴミがあった。
「この部屋で死んでいた」と言われてもおかしくないくらいの汚れ具合いで、私は、「病院で亡くなった」という依頼者(遺族)の説明を疑った。
私は、警戒しながら部屋に踏み入った。
そして、注意深く部屋を観察した。

カビ臭いような異臭(ゴミの臭い)はあるものの、例の腐敗臭はなく、「とりあえずは遺族の説明を信じるしかなかないな」と思った。
それでも、慎重派の私は、「腐敗痕がゴミに隠れている可能性はあるな」という疑いを捨てることはできなかった。

依頼内容は、「中にある家財道具・生活用品・ゴミの撤去だけで、ハウスクリーニング・内装工事は不要」とのこと。
このアパートは、近々取り壊される予定らしかった。

作業の日、念のため私は腐乱汚物が出たとき用の装備も整えて行った。
依頼者は、都合が悪くて現場には来なかった。

まずは、ゴミを袋に詰めたり、梱包したりしながら大型の家財を搬出。
ゴミを動かすごとに種類の違う悪臭が漂った。
「そのうち腐乱臭がでてくるかも」と、私は気を緩めなかった。

ゴミをだいぶ撤去したところで、床の方に布団らしきものが見えてきた。
だんだんと全体が見えてくる布団にイヤな汚れを発見。

「ん!?これは汚腐団か?」
心臓がちょっとドキドキしてきた。
そのうち、布団は全体像を現した。
黒く腐ったそれは、完全に汚腐団だった。
しかし、腐乱臭がしない。居るはずのウジもハエもいない。

「!?おかしいなぁ」
見た目には腐乱死体が寝ていただろう汚腐団にソックリなのに、実際は、長い間ゴミに埋もれて腐った、ただのゴミ布団だった。
かなりの長い間、ここがゴミ屋敷だったことが想像された。

別に、腐乱死体痕を期待していた訳ではないが(職業病?)、拍子抜けした私はさっさとその布団を丸めて袋に入れた。
それから、布団の下の畳を見て少し驚いた。
布団だけじゃなく、畳まで黒茶色に腐ってフニャフニャになっていたのだ。

「これじゃ、床板も相当イッちゃってるな」
「でも、どうせ取り壊されるアパートだから関係ないか」

幸い、畳は撤収する契約ではなかったので、そのままにしておくことができた。
普通は、汚染された畳をそのまま残していくことは滅多にないのだが、近々に取り壊されるこの現場ではそれが許された。

とりあえず、依頼通りに作業は完了。
ゴミだらけの部屋だったのに、いざトラックに積んでみると大した量ではなかった。
「余裕で終わった」
「楽勝だったな」

依頼者に、作業が無事に終了したことを電話。
そして、都合のいい時に現場を確認をしてもらうよう頼んだ。

「腐乱痕があるかも」と警戒していた私だったが、結局ただのゴミ処分で済んだ現場だった。

気分も軽快にトラックを走らせた。

その時は、この後に起こるトラブルを、知る由もない私だった。


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2006-09-17 18:09:19
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遺骨と自分

2024-11-05 06:25:05 | 特殊清掃
自分が死んだ後、その骨をどうしてほしいか、考えたことがあるだろうか。
火葬された後に残される自分の骨の行く末をだ。

私なりの自論なのだが・・・
骨になった状態は既に自分であって自分でないようなもの。
したがって、骨がどこでどうなろうと、知ったことではない・・・と思う。
しかし現実には、そう思いながら、なかなかそう割り切れないものがある。
やはり、遺骨の状態でも、自分の肉体であることの感覚は捨てにくいものだ。
生きている今は、自分の身体を自分そのものとしている訳なので、なかなか自分と別物とは考えにくい。

アノ世というものがあるなら、そこはコノ世の理解を超越した異次元の世界なのだろう。
それを考えると、「自分の骨をどうするか」なんてたいして大事なこととは思えなくなる。

集合墓地の「永代供養」だって「永久に面倒みます」ということではなく、「しばらくの間は面倒みます」という意味だし、一般の墓だって子々孫々がいつまでも面倒みれるものでもないだろう。

でも、まぁ、墓(遺骨)は、亡くなった本人のためというより、残された人の癒しのために必要でもあろうから、私のように一義的な考えに偏らないは方がいいね。

既婚女性の話に限ってみると、嫁ぎ先の墓に入るのが旧来からの習慣としてあると思う。
核家族化がすすんでいる昨今でも、夫の家の墓に、または夫と一緒の墓に入るのが一般的だろう。
ただ、「夫と一緒の墓なんて、まっぴらゴメン!」こんな奥様方も増えてきているような気がする。
逆に、「妻と一緒の墓に入りたくない!」という男性がいても自然なことだ。
もちろん、これは少数意見に変わりはないのだろうが、その数自体は増えているのでは?
近年の離婚の増加が、何となくそんな気を起こさせる。

だいたいの場合、遺体は専用の火葬場で焼却される。
そして、遺骨は火夫によって選別され、遺族の前に出される。
直接見たわけではないので、軽はずみなことは言えないが、おそらく骨壷に入りきるくらいの大きさと量になるよう、作為的に調整されているものと思う。
少なくとも、細かい残骸は遺族には渡らないはず。
そうすると、燃え残った遺骨の100%が遺族に渡される訳ではないということになる。

では、残った骨(遺族に渡らない骨)はどうなるのだろうか。
きちんと検証した訳ではないが、東海地方の某県某市に全国の火葬場からでた遺骨の残骸が集められているという話を聞いたことがある。
もちろん、ゴミとして捨てるのではなく、きちんとした処分方法が執られていることだろう。

そんな現状を考えると、遺骨(墓)は故人本人のためではなく、残された人のためにあるように思える。

今までに何度が書いたように、たまに特掃現場から骨がでてくることがある。
もちろんレアな状態、腐敗液や腐敗肉片が着いている。
当然、臭い!ベタベタネチョネチョ!

見つけた骨は拾って保管する。
そして、遺族に返す訳だが、とてもそのままで返せるような代物ではない。
汚いうえに、とてつもなく臭いから。
私は、返す前に骨をきれいにする。
時には洗うし、時には磨く。

これまたバカの自慢話として聞いてもらいたいが、この作業は私くらいしかやらない。
結構、骨が折れる面倒な作業なのだが・・・。
他の者ができない理由は、「面倒」というより「気持ち悪い」らしい。

「故人だって、自分の骨が汚くて臭いままで残されるのは残念だろう」
「遺族だって、汚くて臭い骨を渡されたって困るだろう」
私は勝手にそう考える。
ま、もともと、私はレア骨を気持ち悪いなんて感じないから平気なのだ。

一見、心優しい人間に映るかもしれないが、私は、そんな骨を見る度にKFCを思い出してしまうような人間である。


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2006-09-16 10:30:54
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