この人は警察小説の人と思っていたが、随分いろんなものを書く人だった。本書は警察小説で竜崎伸也シリーズの一作。吉川英治文学新人賞受賞作。警察小説の主人公がこれかと思わせるような東大出キャリアで警察庁長官官房の総務課長。何とも鼻持ちならないタイプに思えるが、それが実に筋が一本通っていて不思議である。小学校が同じという同期の伊丹は警視庁刑事部長。これが対照的でキャリアではあるが私大卒で、陽のタイプ。あまり仲の良くなさそうな妻に長女、長男。その何ともイヤったらしい男であるのが、本人の意図しないところでの味が伝わってくる。これがシリーズの主人公となるところが面白い。殺人事件がひとつ。ふたつ。その中で警察機構の動きというものが明かされる。三つとなった時に大事件に、竜崎家でも大事件が。吉川英治賞というのは伊達ではない。このシリーズ読んでみようって気になった。☆☆☆☆。