されば悲しきアホの家系(続々………々々々々)

 
 口のなかは火を飲み込んだような熱さ、その上に耐え切れない痛みでございます。
 そのうちに口のなかが腫れてまいりました。口のなかが腫れますと、舌の行き場所がこざいませんで困ります。口のなかは痛く、また熱のためにカラカラに乾涸びてございます。

 お経を差し上げるお家でお水を一杯いただきましたが、読み始めましたら、もうお水を飲むこともできません。口のなかが腫れ上がり、熱のために喉がカラカラに渇き、それはもう大変な苦行でございます。
 このときほど、一滴のお水を欲しいと思ったことはございません。痛みと焦りのために、顔からダラダラと汗がしたたり落ちる始末でございます。

 けれども、仏さまはお見通しでございます。慈悲をかけてくださったのでございましょう。流れ落ちる汗の雫を、舌で受け取っては飲み、受け取っては飲みしまして、やっとお経を上げることができました。南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏。

 ……坊さん、あなた、コメディアンになったらいいよ。アホな家に似つかわしい、とぼけた「お寺さん」だった。

 が、二条の家の人間は、坊さんのこんな説法をありがたく傾聴している。彼らという人種は、いかなる権威をも信頼しきっているのだ。
 例えば、煙草に発癌性があると言おうものなら、「政府が売るの許してはるのに、悪いもんなんか入ってるわけないがな!」と、本気でこうなのだ。

 To be continued...

 画像は、ビアール「説教」。
  フランソワ=オーギュスト・ビアール(Francois-Auguste Biard, 1779-1882, French)

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