されば悲しきアホの家系(続々……々々々)

 
 この二条の家に宿泊することになったりすると、また大変。

 この家の住人である出戻りの伯母と従姉は、病的なくらいキレイ好きで、家に上がるたびにこちらは神経を使わせられる。古くこそあるが、畳から板の間から、階段から土間から、家中が常に磨き上げられている。
 この家には塵一つ落ちてはいない。パン屑を落とそうものなら、「ゴモクは落とさんといてや、蟻が来よるからな」と、こうだ。マイ・カップもマイ・タオルも決まっていて、手をつけることは許されない。

 ま、それは生活習慣の問題だから、別にいいとして、私が閉口したのは風呂だった。

 キレイ好きの例に違わず、この母娘は毎日入浴する。下痢だろうが生理だろうが、湯船に入る。ところで、二条の家には風呂がないから、銭湯に行くことになる。銭湯は、歩いてすぐのところにある。
 私は子供の頃から、銭湯は好きではない。温泉にも、てんで興味がない。だからと言って、銭湯だから入らない、と駄々をこねるほど頑固でもない。

 さて、二条の家に泊まらなければならないとき、必ず伯母が、風呂に行け、と急き立てる。そして、父と一緒に男湯に行け、と強いる。
 
 夕食後、男どもは例によって酔いがまわる。眠り込んでしまう前に風呂に行って来い、と出戻りの伯母がまくし立てる。男どもはだらしなく、言いなりになる。
 ところで、女どもは食後の後片付づけがあるので、すぐには風呂に向かわない。で、子供の私は畢竟、「お母さん待ってたら遅なるさかいに、お父さんと一緒に行ってきてしまいよし」ということになる。

 To be continued...

 画像は、ヴァロットン「水浴」。
  フェリックス・ヴァロットン(Felix Vallotton, 1865-1925, Swiss)

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