金沢の街を歩いて(続々)

 
 兼六園を横眼に、城壁に沿って歩く。やっぱり人は、兼六園のほうに流れていくみたい。
 兼六園にも行ってみたかったな。でも、時間ないから仕方ないもんね、と自分に言い聞かせる。

 道なりに城内に入れそうだったので、そちらを行くと、白鳥路という、並木だらけの散策路になっていた。随所に彫刻がたたずんでいる。
 三人並んだ人物の像があったので見てみると、どうやら金沢ゆかりの三文豪らしい。その名も室生犀星、泉鏡花、徳田秋声。
 悪いけどみんな、あんまり馴染みがないな。私はこのうち、泉鏡花の「高野聖」、「夜叉ヶ池」、「歌行燈」くらいしか読んだことがない。しかも、どれもあまり印象に残っていない。相性が合わないんだな、きっと。

 さて、城門を通ると、いかにも城に来たという感じ。さあ、本丸目指してレッツ・ゴー!
 快晴のこの日、パーマネントグリーンにレモンイエローを混ぜたような芝草が、陽の光を受けて一面に輝いている。そしてこのだだっ広い庭の向こうに、のほほん雲を浮かべた空を背に、城が悠長に構えている。
 ちょっと暑いけれど、のんびり気分。
「姫、とうとうこんなところまで来てしまったのう」
「ほんに殿、よう、こんなところまで」
 なんちゃって、こんなアホな会話したって、周囲にはほとんど人がいないから平気。多分、兼六園とは大違い。

 堀を越えたり、門をくぐったり、橋を渡ったり、階段を昇ったりして、城の上へ上へ、奥へ奥へと進み、ようやくたどり着いた本丸から、城と、金沢の街とを一望した。
 でも、本丸の姿はなかった。落城しちゃったのかな?

 これで金沢とはお別れ。また来たいな、金沢。今度は駆け足じゃなくて。
 此度はさらばじゃ。名残惜しゅうござるが、しばしの別れ。いずれまた馳せ参じ、ゆるりとスケッチしたいものよのう。……なんちゃって。

 画像は、金沢場内。

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