されば悲しきアホの家系(続々……々)

 
 私が二条の家にウンザリなのは、この家の人間が騒がしいから以上に、この家にプライバシーというものがまるでないからだった。

 まず、トイレに鍵がない。あるのは、トイレの扉が勝手に開かないよう、抜き差しできる取っ手棒だけ。そしてこの取っ手棒は、内側からだけでなく、外側からも開けることができる。
 トイレ(ちなみに水洗である)は土間を通った奥の、裏庭の隅にある。このトイレに行くには、一旦、土間に下りなければならない。土間ではツッカケを履く。
 トイレには同様のツッカケが置いてある。ここで、同じツッカケだからと言って、履き替えずにそのままトイレに入ると、えらいことになりかねない。つまり、トイレの前にツッカケを脱ぎ揃えておくことでしか、「現在使用中」と表示できないわけ。

 デリカシーのカケラも持たない二条の家の人間は、トイレの扉をノックするなんて気の利いたことは絶対にしない。特に私が二条の家にいるときには、大人は大抵酔っ払っているから、デリカシーは限りなくゼロに近い。
 トイレのなかで、歌いたくもない歌を歌ったりして、使用中の自分の存在を誇示しなければ、その扉は突然、バッ! と開く。
 
 To be continued...

 画像は、E.H.ランドシーア「スリッパをくわえた犬」。
  エドウィン・ヘンリー・ランドシーア(Edwin Henry Landseer, 1802-1873, British)

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