されば悲しきアホの家系(続々…………々)

 
 あるとき二条の家に着くと、名古屋の伯父の横に見知らぬ男の子がいるのを見つけた。まだ大人になりきっていない、学生服を着た少年だった。

「名古屋のおっちゃんやで。横にいるのは、テンゆうて、あんたの従兄や」と出戻りの伯母が紹介した。
「テンか! 大きなったなあ!」と父。しきりに、今いくつだとか、身長はどれくらいだとかと訊く。関心もないくせに無駄な質問をしたがるから、テンちゃんも気の毒だ。
 で、名古屋の伯父も、モトはと言えば二条の家の人間なわけで、この伯父がまた、父と同じ質問を私に向かってしてくる。同じ境遇に置かれた私と従兄テンちゃんは、苦笑いしながら眼を見交わす。へ~、こんな従兄がいたとはねえ。

 ようやく解放されると、「まんまんちゃん拝んで来よしや!」という、いつもの伯母の台詞。私は奥の部屋へ行くと、中腰のまま、チーン! とやって、さっさと仏壇の部屋から飛び出そうとした。
 と、そこにはテンちゃんがいた。テンちゃんは板の間から部屋を覗いて(多分、「まんまんちゃん」とは何かを知ろうとして)、私の所業を見ていたのだ。

 わっ、バレた。私はテンちゃんを見上げた。まだ背丈が伸びきっていないけれど、私には十分に大きく見えた。テンちゃんは、「あ」の字に口を開けていた。あー、見ーちゃったー、と言いたげに笑っていた。
 私はテンちゃんの横をかすめ去り、階段に飛び乗った。そして階段を上がりかけて、ふとテンちゃんのほうを見下ろした。「2階に避難したほうがいいよ」と言おうとして。が、そのままタタタッと駆け上がった。

 To be continued...

 画像は、セザンヌ「赤いチョッキを着た少年」。
  ポール・セザンヌ(Paul Cezanne, 1839-1906, French)

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