されば悲しきアホの家系(続々々々々々々々)

 
 なぜ夜に仕事をするんだろう。昼間にすれば楽なのに。……子供の私は無邪気にそう思っていた。

 夜、従姉はいつも祖母と過ごす。来客のない普段は、宿題をしたり、風呂に入ったりと、誰に言われなくても自分でするのだろう。
 従姉は、決して賢くはないけれど、美人の上に明るかった。自分を不幸な身の上と思っている様子は全然なかった。それでも、やはり幸せな家庭に憧れていたのだろう。祖母が死んでから、先の彼氏と、早くに結婚した。

 出戻りの伯母にはなんの教養もない。つまり話題を持たない。祇園のホステスと言っても、男客に酒を注ぎ、例の大声で、一緒になってげらげら笑うくらいしかできやしない。
 毎晩そんなふうに働いて、けれども伯母は、従姉を高校に行かせ、まともな男に嫁がせただけで、自分の苦労を満足だと言う。

 が、母が私に評したとおり、従姉を育てた上で、さらに自分のためにひと財産残し、自分の店を構えるくらいのものが、伯母にはあってしかるべきだったのだ。
 自尊心を持たないこの伯母は、あれだけの苦労をして、結局、自分のためには何も残さず、その分は店のママにかすめ取られたか、男客たちにちょろまかされたかしたに違いないのに、そんなことには一向気づかずに、いずれ従姉の家庭の世話にならざるを得なくなることに、なんの疑問も抱かないでいるのだ。

 To be continued...

 画像は、トゥールーズ=ロートレック「着物を着たリリ・グルニエ」。
  アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレック
   (Henri de Toulouse-Lautrec, 1864-1901, French)


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