されば悲しきアホの家系(続々……々々々々)

 
 子供と言っても、母親に連れられて女湯に入る男の子とは、おそらく勝手が違うと思う。男湯では幼女のハダカは、注目の的となる。
 が、そんなふうに言おうものなら、またぞろ同じような大爆笑が起こるのだ。
「なんや、色気のない子供が色気見せて。誰もそんなこと、気にせえへんで!」

 アホというものは一概に、自分の情念だけを基準とし、他人の言葉になど耳を貸さないものだ。
 で、私は夕食を終えるとすぐに、ダダダッと2階に駆け上がる。1階では、伯母のでっかい声が聞こえる。
「チマはどこに行ったんえ? お父さんと一緒に、風呂に行ってしまいよし!」
「そうや、早よせえや、チマ」と、父の声。が、父の相槌は伯母への迎合であることを、私は知っている。

 私は無視して2階で漫画を読んでいる。そのうちに、父も伯母も、私のいないことなど忘れてしまう。彼らという人種は結局、眼前にあるものにしか関心を持つことができないのだ。
 女どもが片付けを終えて茶を飲み、さて、わてらも風呂に行こか、という段になってから、私はダダダッと1階へ駆け下りる。なんや、さっき風呂に行かんかったんか、と言われはするけど、無事、母と一緒に女湯に行くことができる。

 まだ6~7歳の知恵で、これだけの対処ができるのだから、この二条の家の人間どもって、ホントにめだかアホ(=救いようのないアホ)で、地平線アホ(=果てしないアホ)だったんだと、今更ながら呆れてしまう。

 To be continued...

 画像は、ブーグロー「水浴する少女」。
  ウィリアム・アドルフ・ブーグロー
   (William Adolphe Bouguereau, 1825-1905, French)


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