カナリアな日々

百姓になって15年目。補習塾カナリア舎はフェードアウト中。小麦、蕎麦、大豆などを作っています。

「内気な自分の活かし方」(本多信一著)より②

2007-08-05 19:03:01 | ひきこもり・不登校


かつて70代ぐらいのご婦人が当方の事務所を訪れてきて、「実は私、4人の子を産みました。上の3人は秀才で東大を出て、いずれも米国で大学教官になっています。4番目が内気のせいか、集団嫌いなのか、ずっと家にいて引きこもり人生を過ごしております・・・」と悲しそうな表情で述懐するのです。


(はは~ん、その引きこもりのお子さんのことが心配で相談に来られたのだな・・・)と思いましたが、黙って傾聴していると、


「上の3人ってひどい子です。米国人のお嫁さんってマザコンを嫌うせいか、夫が帰国することを許さないのです。ですから、私の夫の葬儀にも3人は帰国しませんでした。
それにひきかえ、4番目の子は心根が実に優しいし、いつもニコニコと家に居てくれてます。夫の介護もしてくれましたし、私のことも心から大切にしてくれるのです。


本多さんに知って頂きたいのは・・・世間常識としては東大を出てエリート人生に進むことは、本人にせよ親にせよ、大成功とみられていますよね。ですけれど、私の今の実感としては引きこもりの4男の子を持ったことはものすごく幸せ、というものです。世間では家にブラブラしていて働かず、結婚もしない人を"ダメな人"と見るでしょう?ですけれど、それは全くおかしな見方だと思います・・・」


と、そのように述べられたので、私としては心から同意したものでした。


それはもちろん、自分の本質があまり「世間交わり」というものをせず、近年は収入目当ての仕事をほとんどやらず、相談の営み以外は貧しくてもブラブラと生きている在り方が、その4男坊氏に似ているからです。



そう、私も親の家に同居して父の晩年を看取り、2007年の今は90歳の母の晩年を世話しつつ生きています。東京に生まれ、父母の家に同居しつつ生涯を過ごすなんて世間一般からすれば申し訳ない限り、とは思います。
地方出身の方々はマイホームづくりに必死の人生を持つことでしょうから。
でも、子として父母の晩年を看取ることは大切なことだと考えています。


そんな自分の在り方と照らし合わせて、そのご婦人の述懐には納得していたのです。


ですから私は、「家にずっと居て、ブラブラと生きる在り方の"引きこもり派"の男女は、ご本人に納得が出来さえすれば・・・それも成功の一つ」と考えているわけです。


そんなゼイタク者を許してはならん、という考え方もあるでしょう。でも、人間って犯罪をしない限り、どんな生き方も許されるのです。会社勤めをせず、ず~っと家にいても、結婚せず生涯の独身でもいい、ということです。


むろん、世間からの"非難の風"は感じられるでしょうが、「自分は自分の道を行く!」と言い聞かせ、ご本人が納得を持てば・・・それも一つの成功と考えましょう。

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「内気な自分の活かし方」(本多信一著)より①

2007-08-05 07:39:22 | ひきこもり・不登校

(先日の休○う通信に載っていたのを、無断転載です。)


自分はよく奥多摩の深山幽谷あたりを歩いていると、(人間も自然の一部なのに、一体どうして鳥や樹木や虫のように生きられないのだろうか?なんで人間は、不自然な「お勤め」をするようになったのか・・・)と考えてしまいます。


この感慨は中学時代あたりから学校へ行けずに森の中をさまよいつつ、(一体どうして世の中に学校なんてあるのか?鳥や虫や犬猫にはそんなものはないのに・・・)と考えていたことと同じ内容なんですね。


つまり、15歳の頃と65歳の今とで、集団嫌いの個性が変わらないのです。そんな私にとって、山あいの農家の人々がゆったりと自給自足している姿が理想に映ります。会社や官庁のお勤め人となるより、どんなに貧しくとも自給自足の人生の方がいい、という考えは変わりません。


ですから、「ずっと家にいて、引きこもり生活を続けています・・・」という人たちと出会うと、ご本人方の(自分は一人前の人とは言えない。なんとかしないと・・・)との焦燥感をわかった上でも、それでいいんじゃないですか、とついつい口にしてしまいます。



むろん、ご本人が(この状態では困る・・・)と考えて相談に来られるケースが十中八、九ですから、「あなた方の在り方こそ理想的人生なのです!」と本音を口にしても、必ず反発されてしまいます。
相談とは相手の要求を実現するためのお手伝い、ですから、「引きこもり脱出→勤め人への就業」が願望なら、その目的に沿って助言を致します。


でも、自分の本音としては、(あのですね、実は今のあなたが最良の在り方なのかも知れませんよ・・・)との思いが去らないのです。私はよく、ある落語を思い出すのです。


叔父さんがブラブラと働かずに生きている甥に、
「おまえ、いつまでブラブラしてるんだ、ちゃんと働きなさい!」
というと、ブラブラ男は、

はあ。でも働くとどうなるんで?」と尋ねます。

「そりゃあ、おまえ。働くとお金になる」

お金が入ると、どうなるんで?

「そりゃあ、お金が入るとブラブラ生きられるよ!」

それじゃあ、今と同じだ・・・


と、そんな問答となります。
私にはこの甥こそ「真の哲学者」と思えるんです。


お金を沢山持ってブラブラしているのと全くの金欠でブラブラしているのとでは、大差があるように思うでしょうが、実はほとんど差はないのです。そんなことを考えてます。

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