かつて70代ぐらいのご婦人が当方の事務所を訪れてきて、「実は私、4人の子を産みました。上の3人は秀才で東大を出て、いずれも米国で大学教官になっています。4番目が内気のせいか、集団嫌いなのか、ずっと家にいて引きこもり人生を過ごしております・・・」と悲しそうな表情で述懐するのです。
(はは~ん、その引きこもりのお子さんのことが心配で相談に来られたのだな・・・)と思いましたが、黙って傾聴していると、
「上の3人ってひどい子です。米国人のお嫁さんってマザコンを嫌うせいか、夫が帰国することを許さないのです。ですから、私の夫の葬儀にも3人は帰国しませんでした。
それにひきかえ、4番目の子は心根が実に優しいし、いつもニコニコと家に居てくれてます。夫の介護もしてくれましたし、私のことも心から大切にしてくれるのです。
本多さんに知って頂きたいのは・・・世間常識としては東大を出てエリート人生に進むことは、本人にせよ親にせよ、大成功とみられていますよね。ですけれど、私の今の実感としては引きこもりの4男の子を持ったことはものすごく幸せ、というものです。世間では家にブラブラしていて働かず、結婚もしない人を"ダメな人"と見るでしょう?ですけれど、それは全くおかしな見方だと思います・・・」
と、そのように述べられたので、私としては心から同意したものでした。
それはもちろん、自分の本質があまり「世間交わり」というものをせず、近年は収入目当ての仕事をほとんどやらず、相談の営み以外は貧しくてもブラブラと生きている在り方が、その4男坊氏に似ているからです。
そう、私も親の家に同居して父の晩年を看取り、2007年の今は90歳の母の晩年を世話しつつ生きています。東京に生まれ、父母の家に同居しつつ生涯を過ごすなんて世間一般からすれば申し訳ない限り、とは思います。
地方出身の方々はマイホームづくりに必死の人生を持つことでしょうから。
でも、子として父母の晩年を看取ることは大切なことだと考えています。
そんな自分の在り方と照らし合わせて、そのご婦人の述懐には納得していたのです。
ですから私は、「家にずっと居て、ブラブラと生きる在り方の"引きこもり派"の男女は、ご本人に納得が出来さえすれば・・・それも成功の一つ」と考えているわけです。
そんなゼイタク者を許してはならん、という考え方もあるでしょう。でも、人間って犯罪をしない限り、どんな生き方も許されるのです。会社勤めをせず、ず~っと家にいても、結婚せず生涯の独身でもいい、ということです。
むろん、世間からの"非難の風"は感じられるでしょうが、「自分は自分の道を行く!」と言い聞かせ、ご本人が納得を持てば・・・それも一つの成功と考えましょう。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます