気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

薔薇の名前は

2005-10-15 19:25:47 | つれづれ
見をさめと厚きガウンに身をつつみ流星の群れに遭ひに出でたり

骰子(さい)振つて遊べるわれや禁斷の天を轉がる遊星の人

みどり濃きこの遊星に生れきてなどひたすらに遊ばざらめや

儈院は高き圍ひをめぐらして「薔薇の名前は薔薇に問ふべし」

生涯を編年體に編むべしや掌に靜脈の行方透かしつ

(多田智満子 遊星の人)

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「心覚えに」と題された高橋睦郎の文章によると、多田智満子は癌宣告を受けて覚悟ののち、遺句集、遺詩集、遺歌集を高橋氏に託された。
旧字で書かれた重みのある歌集だ。そのこころは骰子を振って遊ぶことにある。真剣なあそび。
若林のぶの「杖を立てて倒れし方角に行くことがそれほどをかしいことであるのか」という歌を思った。

遊星の人 多田智満子

2005-10-15 00:14:04 | つれづれ
拾ひきて罪のごとくに隠しもつ貝の内裏(うちら)に虹照りわたる

春の夜の灯を消したまへ桃の花ふけゆくほどに姥ざかりなる

鍵穴を失ひし鍵にぎりしめ家をめぐりてさまよふは誰(たれ)

(多田智満子 遊星の人)

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縁あって、多田智満子の歌集『遊星の人』を読みはじめる。以前、図書館で借りて読めないまま返してしまった。また手元に来たのは縁があったのだろう。
貝の内側にある虹。隠しもって帰った貝だからこそなお美しい。
以下は、題詠マラソン2003のお題「てかてか」で何とか作ったもの。

てかてかの虹はガソリンスタンドの溝に捨てられ渦をまきをり
(近藤かすみ)