気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

ひかりを掬ふ 春畑茜

2005-10-02 01:20:51 | つれづれ
蜜豆のひそひそ話ひそひそと陶(たう)のうつはに生(あ)るるさざなみ

寒天のうすくれなゐにあはき白午後のひかりを匙は掬へる

浅漬けにされし胡瓜の無念さへ旅のまひるま歯はもてあそぶ

西瓜食み終へては西瓜欲るこころ生くるかぎりを渇くかわれは

矢田川のむかうに街の灯はあふれあふれてさびし旅の終りに

(春畑茜 ひかりを掬ふ 短歌人10月号)

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短歌人10月号、秋のプロムナードから。
春畑さんのこの一連は、どれもいい歌だった。短歌人の夏の大会でご一緒したが、この旅で作った歌やその前後に作った歌を纏められたのだろう。
食べものの歌は、まずおいしそうなことが一番という彼女の主張どおり、蜜豆、寒天、胡瓜、西瓜が生き生きと歌われている。食べ物を通して作者のすがたが垣間見られる。
また、一首の中での漢字とひらがなの配分、かっこの適切な使い方に相当神経を配っているのが、わかる。ひらがなの「ひ」「ふ」「ゑ」などその字面の美しさをうまく利用している。先輩の春畑さんは、この線で進まれるのだから、後輩(年上だが)の私は、それを学びつつ別の方向も模索しなくちゃいけない。
本日の短歌人会関西歌会、残念ながら欠席です(泣)