団塊的“It's me”

喜寿老(きじゅろう77歳)の道草随筆 月・水・金の週と火・木の週交互に投稿。土日祭日休み

Black lives matter

2020年06月08日 | Weblog

  テレビの画面に黄色のペンキで道路にBLACK LIVES MATTERと書かれているのが映し出された。妻が「matterってどういう意味?」と私に尋ねた。いつも唐突に英単語の意味を聞かれ私は迷惑している。なぜなら年齢と共に私の英語の語彙は萎縮し続けている。何か私の英語力を試されているようにも感じる。でもまだmatterの説明はできた。「What is the matter with you?ってわかる?たとえば、あなたがずっと機嫌よくしていたのに、急に黙り込んだりしたら私は『どうしたの?』と聞くでしょう。何故ならそれはあなたのことを気にしているからです。私の好きな言葉に“気配り、手配り、目配り”あるけれど、英語のmatterもそれと同じように相手への気遣いを表す言葉だと思う。名詞では“心配、重要、大事”で動詞では“大事である、重要である”などを意味するの。だからWhat is the matter with you?は、あなたをそんなに困らせていること悩ませている重大なことは何ですか?という意味になるのかな。Black lives matterBlackは黒人。Liveslifeの複数形で命。つまり黒人の命を粗末にするな、白人が白人を重要に思うのと同じように大事にしてほしい、という叫びなのだと思う」

 私は留学のためにカナダへ渡って、初めて自分が黄色人種だと自覚できた。人種差別にあったおかげである。ずっと日本にいたら、そのことに気が付かなったかもしれない。カナダで最初に入学した全寮制の高校でこんなことがあった。その高校はキリスト教の厳しい学校だった。聖書に書いてあることを100%信じるが教理だった。私が大学受験のために履修していた“生物”の授業で州選定の教科書を使った。しかし教師は「この中の進化論は聖書の教えに背く」と断言した。私は不安になった。

 日本の国語に当たる英語の授業でこんなことがあった。教科書にある黒人の大学教授の話が載っていた。それを学んでいた時、教師が「黒人は嫌い。黒人なんていなければいい」というようなことを言った。おそらく黒人が一人もいない高校だったので、その教師は油断していたのであろう。授業が終わって他の生徒が皆出て行ってしまってから、私は教師に質問するために教壇の脇の教師の机まで行った。「聖書では人間の祖先はアダムとイブだと言っています。先生、黒人も日本人も祖先が同じなんですか?」 教師の顏に「しまった、このクラスには日本人がいたのか」の表情が読み取れた。「今日は忙しいのでまたゆっくり話そう」と教師は教室から出て行った。その後、その話を彼としたことがなかった。以後、教室での教師の態度はよそよそしかった。

 妻の海外勤務に同行して、アフリカのセネガルで2年間暮らした。セネガルは黒人の国である。首都ダカールの沖合には、奴隷の集積地として使われたゴレ島がある。私は黒人の国に暮らして思った。どこで暮らしても同じことを感じた。肌の色が違っても、どの色の人間も本質は変わらないと感じた。きちんと気配り、目配り、手配りできる人もいれば、悪い奴もいれば、良い人もいる。優秀な人もいれば、そうでない人もいる。美人もいるし、それほどでもない人もたくさんいる。

 以前スティビー・ワンダーが言った。「私は目が見えない事を神に感謝している。なぜなら私の目の前にいる人が、黒人なのか白人なのか見えない。私に見えるのはその人の心だけだから」 

 健常者で目が見えていても、その見える目にわざわざ偏屈な色眼鏡をかけてしまう。私もその一人だ。困ったものである。

 

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