団塊的“It's me”

喜寿老(きじゅろう77歳)の道草随筆 月・水・金の週と火・木の週交互に投稿。土日祭日休み

汗と涙

2024年08月09日 | Weblog

  人間の体に起こるいろいろな現象の中で、汗と涙はとりわけ不思議であり、時に美しいものである。今開催中のパリオリンピックでは、各競技で熱戦がくりひろげられている。勝って泣き、負けて泣く。競技によっては、選手が汗ぐっしょりになって闘う場面も多々ある。

 先日板金塗装の店に行った。そこではこの猛暑の中、車の塗装を乾かすために、電熱球をつけて車体に当てていた。働く店の人は、分厚い作業着を着ている。顔からは炭酸水をグラスに注いだ時出る泡のような雫が流れ落ちていた。大変な仕事だ。でも汗びっしょりで働く男性の姿は、美しい光景だと思った。炎天下でも外で働く人は、たくさんいる。熱中症で亡くなる老人の多くは、農作業中だったという。テレビであれほどやれ水を飲め、エアコンを使え、外出は避けろと言っている。でも働かなければ生活が成り立たない人もいる。

 私は、この連日の猛暑の中、エアコンが効いた部屋の中で、まるで冬眠中の動物になってしまっている。頭に濡らした布を巻いているが、ものを考える力が低下している。集中力もない。記憶力もゼロに近い。汗もかかない。涙も出ない。人間の体の水分量は、新生児が75%4~5歳児で70%、成人男性60%で老人50%だそうだ。私は喜寿老(77歳)なのでおそらく50%を大きく割っているであろう。どうりで汗もかかないし、涙も出ない。

 突然の日銀総裁の利上げ宣言で株式市場が反応してブラックマンディ―以来の大きな下げを記録した。そんな折、証券アナリストの森永康平さんがラジオで「株式市場では株価の上下は普通の事。今パリオリンピックが毎日実況されているので、株式市場から目をそらしてオリンピックを観戦していれば、その内に株式市場も落ち着いてきます」と言っていた。私に言わせれば、パリオリンピックだけではない、大谷翔平選手が出場するアメリカ大リーグのドジャースの実況中継も観られるし、全国高校野球選手権の甲子園での試合も始まった。エアコンが効いた部屋でスポーツ観戦をする私も、エアコンが効いたディーリングルームで相場をはっている人達も汗をかかない人種である。相場で冷や汗をかくことがあっても、作業や体を使って汗をかくことは仕事場でないだろう。だから私やディーリングルームを見ても、感動はない。

 フワちゃんという芸人が同じ芸人のやす子に8月2日にX(旧ツイッター)に『やす子オリンピック 生きてるだけで偉いので皆 優勝でーす』と投稿した。それにたいしてフワが『おまえは偉くないので、 死んでくださーい 予選敗退でーす』と送った。芸能界のつまらぬ内輪もめであろう。しかし私は、やす子さんが言う『やす子オリンピック 生きてるだけで偉いので皆 優勝でーす』には同感である。

 オリンピックに出場するには、幾多の予選を勝ち抜かなければならない。そのための努力は時々テレビでも紹介されるが、筆舌に尽くしがたいものである。あの汗があるから栄光の涙がある。

 喜寿老の私は、汗が出ることはしていない。出来ない。でも枯れ気味の涙は時々出る。今朝、レスリングの藤波朱理選手が金メダルを取った。コーチの父親と娘が抱き合った。私の枯れた涙腺に微かに水分が戻った。


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