団塊的“It's me”

喜寿老(きじゅろう77歳)の道草随筆 月・水・金の週と火・木の週交互に投稿。土日祭日休み

大谷翔平

2022年06月06日 | Weblog

  大谷翔平が属するエンジェルスが、6月3日敵地ニューヨークでヤンキースと対戦した。私はカテーテル治療を受け、退院したばかりだった。妻が出勤した後、YouTubeで大谷の試合を観ていた。時差の関係などで、実況放送を観られなくても、自分の都合の良い時に観ることができる。便利な時代である。

 You Tubeでは、大谷翔平が出場する試合を数多く流している。私は、現場の様子をそのまま伝える番組が好きだ。アナウンサーや解説者も出てこない。観客のざわめき、打者がボールをバットに当てた音。何度も同じものを見ていると、最初の画面に更新された番組が表示される。コキシロウには、優しいシステムである。

 このところエンジェルスは、絶不調。大谷も去年ほどの活躍がない。試合は、敵地ヤンキーススタジアム。ヤンキースのファンは、えげつないヤジで有名である。NHKテレビの実況だと、ヤジなどまず聴くことができない。私は、どんなヤジが飛ぶのかと耳をそばだてていた。

 7回大谷がバッターボックスに入った。カウントは1ストライクノーボール。突如、甲子園球場の阪神タイガースのファンが歌う“六甲おろし”のような大音響が巻き起こった。「Overrated!」 その日ヤンキーススタジアムには、3万3476人の観客。Overratedって「過大評価され過ぎ」のような意味。日本でだったら、「お前なんて大したことねよ!」「騒がれてるかって、調子に乗るなよ!」となるか。なるほどえげつない。日本の宝の大谷になんという失礼なヤジ。しかしここは冷静に。ここで腹を立てたら、相手の思う壺。

  これを聴いていて、一気に私は、50数年前のカナダ留学中の出来事の中へ引き戻された。学校の学年別野球大会で私は、セカンド打順7番で出場していた。ヤンキースタジアムほどではなかったが各学年の応援ヤジは凄かった。私が打席に立つと、どこからともなく「Jap!」「Jap Go Home!」「Remember Pearl Harbor!」のヤジ。応援席は、静まり返った。クスクスと笑う人々、そして批判的な表情で笑った人たちをにらむ人たち。私は、意外と冷静だった。渦巻く怒りが視線に集中していた。投手の手を離れたボールの球筋が見えた。バットに日本国民としての思いを込めて降った。打球は、セカンドベースをライナーで超えてセンターへ転がった。私のヒットに私の学年の応援席は、大騒ぎになった。

 大谷翔平、松井秀喜、イチロー、野茂、田中将大。野球選手に限らず、海外で活躍すれば、多かれ少なかれ、心ない差別や偏見にさらされる。その経験が、その人を更に発奮させてたかみに向かう人もいる。大谷翔平もそういう一人になって欲しい。

 ヤジといえば、日本の国会でも相変わらず盛んである。えげつないヤジも多い。ヤジは悪いことばかりではない。相手への正当な批評批判を投げつけるには、それなりの観察や調査が必要だ。日本のテレビの衰退の大きな原因は、テレビは一方通行で、視聴者から画面に投げつけられるヤジや罵声が、テレビ局や出演者に届かないことだ。

 大谷翔平に投げられた「Overrated!」は、それだけ彼がヤンキースファンに恐れられている証拠とも言える。ヤジは、誹謗中傷でもあるが、反面それは相手への恐怖でもあり畏敬でもあるのではないか。私は、大谷をこれからもfair rating(正当な評価)していく。


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