団塊的“It's me”

喜寿老(きじゅろう77歳)の道草随筆 月・水・金の週と火・木の週交互に投稿。土日祭日休み

マンション大規模修繕

2016年05月24日 | Weblog

「カーン カーン ガーンガン」響き渡る金属音。私が住む集合住宅の真向いにある10階建ての集合住宅が大規模修繕工事を始めた。

 建物全体に足場を組み、更にそれをネットで覆う。4月初めに開始してすでに1箇月過ぎ、やっと足場とネットの工事が終わった。土日祭日は休み、雨の日も休む。働いている人は4,5人である。この足場を組む仕事は、人の手だけで進められているようだ。

 数週間前、散歩で工事現場の前を通った。3メートル以上ある鉄製の敷板を人力だけで揚げていた。手渡しである。地上からすでに組み終わっている2階の段に待ち受ける人に垂直に板を立て渡す。2階の人はそれを持ちあげ更に3階で待つ人に渡していく。まるで重量挙げのようだ。これだけ大きな建物である。すべての足場を組むのにどれだけの人力がいることか。すでに老化による筋肉の衰えを日々感じている私はただ若者の力強い労働に圧倒された。

 良く見ると地上から鉄板を持ち上げていた人はアフリカ系の若者だった。「行くよ」と日本語で2階の人に声をかけていた。重労働である。アフリカのどこから来ているかはわからない。私がかつて住んだセネガルは年間平均収入が800ドルと言われていた。現在の為替相場では約8万8千円、月収にすると7千円ぐらいである。日本で工事現場では日当が1万円以上と聞いている。真面目にきつい肉体労働で稼いでいる彼のような外国人をみると応援したくなる。

 数日前南アフリカの銀行口座のデータを使って日本全国のコンビニエンスストアのATMで14億円の金が不正に引き出された。100人以上の人間が関わっているらしい。強盗、スリ、麻薬密売、詐欺など外国人による犯罪は増える一方である。反面、真面目に地道に働いて国の家族に送金する労働者もたくさんいる。

 散歩でアフリカ系の若者が働いているのを見るまでは、工事の騒音が気になっていた。しかし若者を見て以来、騒音も気にならなくなった。むしろ今日はどこまで足場の設置が進んだのかと観察するようになった。雨が降って工事が中断されると、彼らには良い休息になるなとさえ思うようになった。風が強い日は、足場が倒れるのではないかと危惧した。

 大規模修繕をこれほどまでの規模でやらなければならないのかと疑問に思う。足場をもっと簡単に設置できないものかとも思う。私のような非力でモノグサな人間は、大規模修繕のような一見無駄に思える作業に対して否定的だ。作業に携わる人々は当たり前のように動き回っている。朝8時頃から夕方5時頃まで規則的に働いている。私も若かりし時、肉体労働をたくさんした。現在は靴下を履くときさえ、じっとしていられないほど筋肉が衰えてしまった。肉体労働とは無縁の毎日である。

 現代人は肉体労働を避ける傾向にある。楽をしよう、楽して稼ごうと考える。大規模修繕で若者が力強く働く姿に昔の自分を思い出した。決して戻ることのできない過去だが、自分にも体がくたくたになって働いても寝て起きれば次の日仕事に戻れた若さ強さがあったことを懐かしく思い出せた。


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