団塊的“It's me”

喜寿老(きじゅろう77歳)の道草随筆 月・水・金の週と火・木の週交互に投稿。土日祭日休み

禿げ脱毛仕組み解明と自動運転

2016年02月10日 | Weblog

 風呂に入って洗髪する。上がって脱衣場に出る。そこには洗面台があり壁一面に大きな鏡になっている。ふと目が私の頭部にゆく。髪の毛が寄り集まって筋となっている。地肌は髪の毛の筋より3倍は広く帯状に平行する。「うそ。いよいよここまで来たか」 私はタオルで髪の毛をグシャグシャにかき混ぜ、地肌を見えなくなるよう毛羽立てる。そしてリアップ(大正製薬の第一類医薬品育毛および脱毛の進行予防剤)のビンの口を地肌に押し当てる。グッと力を入れて口の先を地肌に押し当てると液体がにじみ出る。口を肌に押し当てつつ、移動させながら液体を塗りつける。

 妻は無駄な抵抗しないで自然に任せたら、と言う。私もそう思う。性欲も物欲もほとんどの欲や願望が減退している。いろいろ薬が出ているが私は使わない。リアップだけは別である。秘かに期待している。高い薬である。たった60ccで5千円以上する。効果は分からない。

  私はカナダの学校時代、多くの生徒に私の髪の毛を触らせてくれとお願いされた。彼、彼女たちは一様に「針金みたい」と声を上げた。その髪の毛が今は当時のカナダ人生徒の髪の毛のように細くなった。泳ぎに行ってカナダ人が潜って水から頭を上げると彼らの髪の毛は地肌にピタッと貼りつき地肌と一体化していた。私の髪の毛はビーバーやヤマアラシのようにピンとしていた。あの勢いが今はない。リアップ(再び勢いづかせる)という言葉の魔術に捕まっているのかもしれない。

  『高齢化で脱毛、仕組み解明――必須物質も発見・東京医科歯科大学』の記事をみた。医学の進歩は目覚ましい。脱毛は毛を生み出す幹細胞が老化して、毛穴の小器官(毛包)が次第に縮小して消えてしまう、と東京医科歯科大学やニューヨーク大学などの研究チームが解明に成功した。「17型コラーゲン」の分解を防ぐ物質を発見すれば、脱毛は防げるらしい。東京医科歯科大学の西村栄美教授は「5年から10年の間に薬ができれば」と話しているそうだ。

  あと何年でこうなる、ああなるという話をたくさん聞く。素晴らしいことだ。地道な研究を日夜続ける研究者がいる。成功する確率は低い。私はTBSの日曜日午後6時半から放送の『夢の扉』という番組が好きだ。かつてのNHKの『プロジェクトX』に似た番組である。若い頃は進歩を自分の時間に合わせることを当たり前にできた。最近はそのような話を聞くと「自分が生きているうちに間に合うかな」と考える。間に合えば嬉しい。しかしたとえ間に合わなくても、進歩の鼓動を感じることは喜ばしい。嫌な事件事故災害が来る日も来る日も発生する。華々しく世間から注目される高額所得者のテレビタレントや歌手、スポーツ選手、政治屋。やれ不倫だ、お泊まりだ、賄賂だ、覚せい剤だ、解散だの別の世界に、今日も失敗を繰り返しながら研究を続ける人々の存在を知るだけでも何か救われた気分になる。

  駅に送る車の中で妻が私に尋ねた。「自動車の自動運転、どこが一番先に実現するかな。日産?」 私は「どの会社かわからない。でも今日も各社懸命に開発しているだろうね」 人間の凄さは、目に見えない所で着々と進む。その晩、私がいなくなった後、妻が自動運転の車に一人で乗っている夢をみた。


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