団塊的“It's me”

喜寿老(きじゅろう77歳)の道草随筆 月・水・金の週と火・木の週交互に投稿。土日祭日休み

あの男は病気だよ

2015年10月15日 | Weblog

「あの男は病気だよ」これはサッカーのポルトガル代表でプレーした元同僚のデコがレアル・マドリードのクリスティアーノ・ロナウドを評した言葉である。

 この部分だけを聞くとロナウドが何か精神的に問題を抱えているかのように受け止められる。デコはロナウドほど熱心に練習に打ち込み、最高のパフォーマンスを出さないと気が済まない完璧主義者はいないと言う。最高の褒め言葉としての“病気”である。

 一方以前精神科医でノンフィクション作家の野田正彰氏が「大阪府知事(あの男:私の勝手な挿入)は『病気』である」と「新潮45」2011年11月号に寄稿した。野田氏は当時の橋下大阪府知事を「挑発的発言、扇情的な振る舞い、不安定な感情―それらから導き出せるのはある精神疾患である」とした。野田氏は橋下氏の高校時代の先生に取材をして「嘘を平気で言う。バレても恥じない。信用できない。約束をはたせない。自分の利害にかかわることには理屈を考え出す。人望はまったくなく、委員などに選ばれることはなかった」と書いている。私のことを誰かが高校の担任教師に尋ねれば、良いことを言ってもらえる可能性は非常に低い。また「これ以上私たちは、自己顕示欲型精神病質者に振り回されてはならない。演技性人格性障害と言ってもいい」と分析している。

  演技性人格性障害には(1)自己の劇化、演劇的傾向、感情の誇張された表出(2)他人に容易に影響を受ける被暗示性(3)浅薄で不安定な感情性(4)興奮、他人の評価、および自分が注目の的になるような行動を持続的に追い求めること(5)不適当に扇情的な外見や行動をとること(6)身体的魅力に必要以上に熱中すること、の6つの特徴がある。

  これを読んで私は映画『おつむてんてんクリニック』を思い出した。この映画はあらゆる恐怖症のビル・マーレイ(ゴーストバスターズ出演)演じる患者がリチャード・ドレイファス(未知との遭遇出演)演じる精神科医との関わりあいの物語である。患者があまりにも執拗に医師を追い回すうちに、あろうことか医師が精神症になって入院してしまう。患者も医師も紙一重。精神を病む可能性は誰にでもあると教えてくれた。私の名画リストの上位にある映画だ。

  私自身、自己顕示型精神病質者の6つの項目を自分に当てはめてみると大部分を完全否定はできない。正直私は精神病質者ではないだろうかという恐怖に捕われる。精神科医の野田氏が橋本氏を診察もしないで病気で『新潮45』の「『最も危険な政治家』橋本徹研究」特集にこれだけの記事を載せたくらいだ。精神科の分野はいくらでも難しくすることができるらしい。私は若い頃ノイローゼだと思って精神科に行った経験がある。その時の医師は「ノイローゼなんて自分がそうだと思えばそうだし、違うと思えば違う。だから自分は違うと思って他のことに気を向かせてみたら」と言ってくれた。素晴らしい診断だったと思う。それ以後、私はお蔭で現在まで自分の精神の答のない暗闇に自分を追い込まずに済んでいる。

  最近また精神科医の香山リカ氏が橋下氏を診察もせずに「病気」だと診断したそうだ。橋下氏には敵が多いらしい。個人的な恨みつらみがあるのかもしれない。「病気だと思えば病気だし、違うと思えば違う」 どうして橋下氏を病気にしたいのか私にはわからない。巷には先日の熊谷市での6人連続殺人のような危険な人物が野放しになっている。橋下氏を病気で危険な人物と決めつける前に精神科医にはもっとやらねばならないことがある気がする。病気は病気でもロナウドのような病気なら私も「あの男病気だよ」と言われてみたい。


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