団塊的“It's me”

喜寿老(きじゅろう77歳)の道草随筆 月・水・金の週と火・木の週交互に投稿。土日祭日休み

カーリース会社の怪文書

2015年05月28日 | Weblog

  車をリースにした。夫婦でよく話し合って決めた。名義は妻にした。近所のコスモ石油のガソリンスタンドの経営者に相談した。コスモスマートビエクルというリースを紹介された。67歳になって私も老化が進んだが乗っていた自家用車もあちこち修理が必要になった。車は東京の会社から買ったのでいちいち東京へやれ定期点検だ修理だで行くのが億劫でもあった。私は病気持ちで妻より11歳年上である。いつ何が起こって先立つやらも知らぬ。妻の父親が急逝した時、買ったばかりの父親の車の処分に母親が苦労した。私はリースなら私が急逝しても車の処分で妻に面倒かけることはないと判断した。私たち夫婦はすっかりコスモ石油がカーリースをやっていると思い込んでいた。コスモ石油はただ窓口で実際はオリックス自動車株式会社のリースだった。すべての手続きが終わって4月末納車された。すでにリースの車を1か月使用した。1週間前にオリックスからハガキが来て今月末からリース料の引き落としが始まるので幾日にどこどこ銀行の口座から引き落すという内容だった。

 5月26日外出から家に戻ると郵便受けに郵便局の『配達不在者通知』が入っていた。電話で再配達を依頼した。夜8時郵便物が届いた。妻あてなので妻がまず開封して読んだ。「何、これ。わけがわからない」 私は手渡された文書を読む。

 「2015年5月22日 (我が家の住所) ○○ ○○様(妻の名前)  拝啓 時下ますますご清祥の段、お喜び申し上げます。平素は格別のご高配を賜り、厚くお礼申し上げます。この度は○○ ○○様と弊社とのお取引に際しまして、「犯罪による収益の移転防止に関する法律」に基づく本人確認の手続きにご協力頂きまし(原文のまま)誠に有り難うございました。 今後とも何卒ご協力の程よろしくお願いいたします。 敬具 オリックス自動車株式会社 リテール営業課」

 私は理解できなかった。何故、この文書が書留で送られてきたのか。「犯罪による収益の移転防止に関する法律」とこの書留がいかなる関連があるのか。妻はこの件に関して確認の手続きをした覚えはなかった。

 封筒の消印を調べた。「芝三 25.05.15」 芝 三 とは差し出し先の郵便局である。11日経っている。文書の日付は2015年5月22日とある。まるでミステリーである。5月22日に書かれた文書に5月15日の消印が押されている。届いたのが26日。いったい何なんだ。私は妻に明日電話をかけて確かめた方がいいと伝えた。

 27日は妻にとって大変な日となった。オリックス自動車の本社に病院から電話した。回された担当部署の女性事務員は「担当者が席をはずしている」と言ったので用件を彼女に詳細に伝え、回答を家の留守番電話にして説明を吹き込んでおくよう病院へは診療中なのでかけないように伝えた。診療中に電話が来ても妻は出られない。重症な患者の診療で病院内を移動中に担当者から電話がきた。妻は病院まで電話をかけてきたのは何か重大なことなのだと思い電話を受けた。「マネーロンダリング」と相手が言ったぐらいしか聞き取れなかった。急患の治療が終わってから電話することにした。担当者に電話した。担当者は専門用語を使って説明するも妻は理解できなかった。「文書で私がわかるように説明してください」「文書でですか、電話ではだめですか」とやり取りの後、文書を送るとの約束を得た。怪文書の謎は明かされないままである。

 顧客の疑問や要請に満足な対応も説明もできず、接客態度もよろしくない。会社内の連係も伝達も悪い。何より気配り目配り手配りがない。会社内で何がどうなっているのかを管理チェックする機能が抜け落ちてしまった大企業病は、従業員まで劣化させていると思えてならない。カーリースは団塊世代にシステムそのものは役に立ち良いものだ。友人知人にカーリースを勧めようと意気込んでいたが、こんなではとても信頼できたものではない。かつてアメリカ留学した娘に4年間ホンダのシビックを月100ドルでリースしてやっていたが、もっと手軽で信頼できた。何が日本を機能不全に陥らせているか。それは相手の目を見て話すことを避け、コンピューターとマニュアルに頼る何でも面倒くさがる風潮と意味のない驕りの社会構造にあると私は考える。人間は決して愚かではない。知らなかったことわからない事を学ぶ術を持つ。しかし人ひとりではできない。自分ではわかっている知っていると思うことでも、他の人に説明納得させることは難しい。このようなことは学校だけでは学べない。どんなに学校で優秀で難関有名校を卒業してもそれで終わりではない。一生勉強である。世界が日本に期待を寄せる。それに応えるために必要なことは、誰からでも学ぶ謙虚さと誰にでも理解してもらえるまで伝える忍耐と知恵である。決して学歴、出身校、所属する組織、役職だけではない。残念ながらオリックス自動車にはその気概が感じられなかった。

 


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