団塊的“It's me”

喜寿老(きじゅろう77歳)の道草随筆 月・水・金の週と火・木の週交互に投稿。土日祭日休み

電気温水器

2010年01月22日 | Weblog
 今私が住む集合住宅は、オール電化を謳って売り出された。私たちは、老後、火事を出す心配が少しでも減らせると考え、購入を決めた。しかしこのオール電化、不便なことが多い。ガス調理器と違って、火力の微妙な調節も、揚げ物や炒め物には火力が弱すぎる。風呂の追い炊きができない。それでも入居して5年間、さして問題も無く暮らした。

 昨日風呂に入ろうとしてスイッチを入れようとした。制御パネルのデジタル表示が消えていた。ON-OFFの押すだけのスイッチと違い、デジタル表示の総合制御パネルは、電気がついていなければ無用の長物である。

 つい数日前、冷蔵庫などの台所の電気が切れていた。他の電気製品が使えていることから、もしかしたらブレーカーが落ちたのかもしれないと点検した。20いくつかあるブレーカーの『キッチン1』の表示ラベルのついたブレーカーが下がっていた。今回もブレーカーだろうと高を括って調べた。ところがブレーカーは一つも落ちていなかった。『温水器200V』のブレーカーに異常はなかった。

 マンション購入後、販売会社から渡されたマニュアルファイルの温水器に関する項目を即、調べた。TOTOのフリーダイヤルの番号を見つけ、電話してみた。午後8時だった。「点検に明日の午後お伺いします」と言われ、少し安心した。しかしお風呂には入れなかった。 次の日の朝、修理担当の会社から電話があった。どんな状況かの問い合わせだった。午後3時半に買い物から歩いて帰り、集合住宅の玄関前にたどり着いた。一台の見慣れない軽自動車のバンが止まっていた。「もしかしたら修理の人?」とカンが働き、尋ねた。やはりそうだった。「だいぶ待ちました?」の問かけに「いいえ、ほんの少し前に着いたばかりです」と明るく答えてくれた。ちょっと太めの30台後半の作業着に身をつつんだ男性だった。

 さっそく総合玄関の鍵を開け、脚立と工具箱を持った男性を我が家へ案内した。温水器は、玄関脇の納戸の中に設置されている。風呂場と温水器を何度か行き来して、男性は、温水器を格納してあるキャビネットのカバーを外し始めた。私は、好奇心旺盛なので、このような作業を見るのが大好きである。野次馬根性全開。男性が「やっぱりな」と独り言のように言った。私に向かって「焼け切れています。ここです。基盤を新しいのと取り替えなければなりませんね」と言う。すかさず「時間はどのくらいかかりますか?」と私は聞いた。「2,3日かかりますね」 私は、【2,3日。その間、風呂なしかよ。勘弁してくれよ。ここは日本だろう。何を造っているんだよTOTOさんよう】と内心思った。

 男性「電話で状況を伺っていたので、お宅へうかがう前に行った修理で取り替えた基盤を捨てないで持ってきたんです。お宅のより程度が良いので2,3日なら使えるでしょう。新品と取り替えるまで、お宅が了承していただければ、臨時に取り付けていきますが、どうしましょう?」と言った。こういうのを“機転”と言う。私は諸手を上げてこの申し出を受け入れた。おかげで新品に取り替えるまでの3日間、風呂に入ることができた。

 過去に暮らしたよその国なら、今回のような場合、中古の部品であっても、相当な高値を吹っかけられたであろう。私が値段を尋ねると修理会社の社員は、当然のように「無料です」と明るく答えた。帰宅した妻に一部始終を報告した。妻は、「最近見かけない機転のある人ね。おかげで今夜はお風呂に入れるわね」とご機嫌だった。ちょっと太めの社員の姿を思い出しながら、彼の親切と気配り、見事な機転に熱い風呂の中で感謝した。

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