団塊的“It's me”

喜寿老(きじゅろう77歳)の道草随筆 月・水・金の週と火・木の週交互に投稿。土日祭日休み

2軒の家を

2009年02月13日 | Weblog
 100年に一度の経済危機だという。ニュースでは繰り返し非正規雇用者の首切りが伝えられている。職を失った非正規雇用者は8万5千人に達するという。職を失い、住むところを失った人々がいる一方、日本の地方都市には、限界集落と呼ばれる存亡の危機に瀕する過疎地がある。富士通が正社員に副業を認めた。他にも東芝やソニーが副業を認めているが、申請した社員はいないという。

 gooブログ『山の幸、里の幸』の筆者は、1月14日の『6千万人の田舎』と2月10日の『不耕者』で私の日ごろ感じていることを見事に書いてくれた。参照してもらいたい。

 私は大企業が過疎地の農地を一括して借り上げるか、購入して社員に農業を奨励してほしい。社員に自宅待機させ、一時帰休させるのであれば、田舎の農地で普段とはまったく違う農作業をすることで、精神的な再構築を計ったらどうだろう。外国人から働き蜂と揶揄される日本人の評価を変える、良い機会である。私が提案する“2軒の家”とは、一軒は普段働いている所に持つ生活基盤の家である。もう一軒は旧社会主義国に普及した“ダーチャ”と呼ばれる農業用寝泊り小屋である。トイレとシャワー設備にベッドと小さな簡易キッチンだけの宿泊設備兼農作業小屋であり倉庫である。

 例えば、トヨタ自動車は、3月まで工場の稼動を極力止めて、生産調整するという。社員をただ家に留めて置くのではなく、希望の地方の過疎地に移動させることを奨励したらよい。トヨタには住宅部門もある。住宅部門で組み立て式の簡易ダーチャを生産販売する。まずトヨタの社員に販売する。その他にも農機具、家具、備品などの需要も期待できる。トヨタの部課長クラスの社員がトヨタ車を率先購入するとニュースが伝えた。無理して必要のないものを買わせるより(トヨタの部課長クラスがトヨタの車を所有していないわけがない)新規の分野の商品を開拓拡販するべきである。今必要なのは、需要の創設と供給の継続ならば、手をこまねいている時間はない。麻生首相はスイスのダボスで「不況の解決はまず日本から」と演説した。何を策としてあれだけの見えを切ったのかが見えてこない。

 ワークシェアリングという考えでなら、ここで大きく発想の転換を計ってみたらどうだろう。例えば、工場で製品を作るグループと、農地で食料を確保するグループと分ける。一定の期間を定めて、立場を交換すれば、まさにワークシェアリングのひな型になる。食料調達グループは、工場で働くグループの家族全員の米や野菜を生産する。減額されるであろう給料は、できるだけ住宅ローンや子どもの教育費にまわし、食費はできるだけ自社社員による農業グループに頼る。傷みわけの感もあるが、知恵は皆で絞ればでてくるものである。もちろん工場の食堂も無料で食べられるようにする。政府の減反政策などにより滅茶苦茶になってしまった日本農業の回生にもつながる。自宅待機や一時帰休や副業を認めるより、農業で作物を栽培して、作る喜び、収穫する喜び、家族で土に親しむ喜びがもたらすであろう、金には換算できない大きな効果が、従業員にも家族にも、肉体精神的に起こると信ずる。たとえ一企業でもこのような案を緊急に実施してくれることを願う。それこそ日本の底力である。2月11日の朝刊にワークシェアリングに政府が補助金を出す方針と伝えたという記事がのった。これを利用しない手はない。

 かつてトヨタの創業者の豊田佐吉は、事業で限界を感じた時、部屋の障子を開けて「窓を開けて見よ。世界は広いぞ」と言ったという。トヨタは世界にその名を広め、ついに生産台数世界一に登りつめた。景気が悪くなったからと、世界に広げた生産工場や販売体制から首切りで社員を減らすような、どの企業でもできることをするのでなく、ここで知恵を絞り世界を驚かす、社員を切り捨てるだけで生き残りをかけるのではない、さすが日本の企業と言われるような策を打ち出して欲しい。トヨタがここで踏ん張って、世界のトヨタ社員を半分ダーチャに移しても保護し、名実ともに世界一の企業になって欲しい。土を耕しながら、きっといろいろな発想が湧き、結局は会社を救うことになるかもしれない。トヨタに限らず、個人であれ、企業であれ、不景気だからこそ、土から学ぶことは多い。土からは、食料も与えられる。

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