1993年から3年間ネパールで暮らした。首相の選挙があった。立候補していたコイララ氏は、演説で「ネパールをシンガポールのような国にする」と言った。コイララ氏が首相になった。いまだにネパールがシンガポールのようになった話は、聞いていない。
シンガポールへネパールから妻の出張について行ったことがある。驚いた。地球上にこんなに綺麗で清潔な国があったのだと。ネパールは、貧しくて清潔な国ではなかった。下水などのインフラも整備されていなかった。住んだ家のトイレは、地下浸透式の水洗だったが、大雨の時は、溢れ出て庭が下水で池のようになった。町に出れば、手鼻や痰吐きする人が多かった。長野市の専門学校で教えていた時、長野駅から学校へ行く途中に『痰つば小路』と呼ばれていた道が近道だった。日本も今のように清潔や衛生面で改善される前、ネパールと大して変わらない状況も多かった。痰つば吐き、立小便、手鼻もつい30年から40年前までどこでも見られた光景だった。
シンガポールは、早くから国民の民度向上に力を注いだ。1990年代私がシンガポールに行った時、街中に『No spitting(唾吐き禁止)』の看板があった。見つかると初犯で1000シンガポールドル(約8万円)の罰金で再犯だと公的清掃作業や刑務所に入れられることもある。シンガポール政府は、自国民外国人問わず厳しく取り締まっている。
大谷翔平選手がアメリカの大リーグで活躍している。昨日までヒューストンのアストロズとの3試合で3連敗した。野球の試合そのものよりただ大谷選手の活躍が観たい。なかなか結果が出せない大谷選手に私も落ち込んでしまう。
野球よりも選手の動向やあらさがしに目が行ってしまう。一番気になるのは、選手たちがフィールド内であろうが、バッターボックスの中であろうが、塁に出ていても、ベンチ内でも「ペッペ」と唾を吐く。あとガム。私は選手のガム噛みが嫌でたまらない。ヒマワリの種をなぜ皆が口にするのかも理解できない。ヒマワリの種は、ホームランを打った選手への祝福に留めておいて欲しい。
大谷選手は、行儀が良く礼儀正しい。最初の頃は、ガムを噛むことさえなかった。最近大谷選手がガムを口にしているようになった。ベンチ内で何か食べることもある。“郷に入っては郷に従え”なのか。少し残念な気持ちである。
アメリカにはシンガポールのような“No spitting”の規則はない。行儀などと問題視すること自体が、儒教の影響大の私のような狭義な団塊世代の特徴なのかもしれない。でもシンガポールのように“No spitting”の規則があったら、一試合でいったい幾らの罰金になるだろう。アメリカ大リーグの選手の多くが、刺青を入れているも私には受け入れがたい。選手で刺青が入っていない選手を見ると嬉しくなってしまう。
3連敗のドジャースのベンチ。選手が全員引き上げた。ベンチの床にヒマワリの種の皮が足の踏み場もないくらい散乱している。この後、清掃作業員が清掃するのだろうが、種の他に唾も酷いに違いない。散らかすのも人、片付けるのも人。分業と言っても割り切れない。試合の熱狂中もベンチの床の散らかりが、私の心を乱す。