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備前焼 やきもん屋 

備前焼・陶芸家の渡邊琢磨(わたなべたくま)です。陶芸、料理、音楽、路上観察……やきもん屋的発想のつれづれです。

もの想う秋の夕暮れ

2016-11-30 19:28:43 | 料理・食材


晩秋の景色。
番犬福助との散歩コースから見上げる紅葉も日ごとに散り行く。カエデが和のイメージだからか「諸行無常」という言葉がよしなく浮かぶ。
足元を歩く福助の背中のモフモフ感さえも「久しくとどまりたるためしなし」であるなぁ。すっかり冬毛。

地植えされた多肉植物も紅葉なのかな? 

イマイチよく判らないけれど、こちらには感慨よりも、むしろグラデーションの妙に見入る。綺麗。

剪定したカイヅカイブキを積んでいた中に生えていたキノコ。高温多湿で菌床が育ったか。

非常に脆く、縦に裂ける。
小学生の時に友達が「縦に裂けるキノコは食べられる」と言っていたが、むろん当時の小学生の知識なので信用しない。眺めてポイッ。
「虫やナメクジが食べた跡のあるキノコは……」とも言っていたが、こちらも不採用である。ポイッ。
友よ、信じてやれなくてスマヌ。

秋は、見て想う事が多い。


さて、本日の夕刻。

晩御飯準備の前に、ご在宅の食材メンバーの点呼から。
冷蔵庫に牛窓産のマッシュルーム。このキノコは大丈夫。収穫者の顔は知らねども信用できる購入品。
冷凍庫に寄島産のタコ。多分、何かのタイミングで余ったものだろうな。冷凍ゆえ旬も何もないけれど、まぁ良し。
この組み合わせは、アヒージョに決定。父上謹製のニンニクとトウガラシも居るしな。
まずはオツマミからである。いや『酒器の勉強』の教材だ。(これって経費で落ちんのかな?)

粘土を触っていた作業テンションを緩めるように敢えてユルユルと作ろうか。
ジンワリと火を通す。オリーブオイルの透明感ある対流に揺らめくタコを眺めていると、ピシピシ張っていた集中力が解けていくよう。

片手にビール。この時間、いいねぇ~~~。

最後にウチのバジル粉をパラッっと。
うん、いいぞ。日常のリズムで出来た一品だ。どこにも無理も破綻もない。(可もなく不可もなくとも言えるか……)

「さて、夕飯ねぇ……」と思いつつも、豆皿を手にしたまま一旦キッチンを離れる。

本棚の目に留まった一冊を抜き出して取り留めなくページをめくる。

見ているようで見ていない、考えているようで考えていない……漠然とニュートラルな精神状態。
ページをめくりつつアペリティフ。遥か異国の写真の上に意識が泳いでいく。
製作シーズンには色々思う事が多いので……こういう自意識をフワッっとさせる時間は貴重。窯詰め前になるとそんな気分さえ無くなるしねぇ。

本の最終ページに行き着く。
俄かに現実感が降ってきたように自意識が戻ってくる。「さてさて、本格的にメニューを考えよう」 
先程よりはしっかりと食欲も感じる。

再び手元の本を見やった瞬間に「そういえば、このあたりの人って『タコ食べながらアルコール』って有り得ないんだっけ」と思って、可笑しさを発見する。
「あぁ、罰当たりなんだな、これは」

ひとりニヤッとして、グラスの底のビールを喉に流し込む。


さぁ、料理を始めよう。


……ってな、秋の夕暮れ。もの想いには良い季節。  



( ← で、結局、メニューは何だ?)



































コメント
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