孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

加速する日中関係改善の気運 国民レベルの交流に基づいた新たな関係を

2019-09-27 22:28:33 | 中国

(21日、東京都渋谷区の代々木公園で開幕した「チャイナフェスティバル2019」の会場【9月21日 産経】)

 

【中国TV 安倍首相の祝賀ビデオメッセージのほぼ全文を放映】

日韓関係の悪化、トランプ政権のもとでの日米関係の不透明感、より基本的には今後の東アジア世界における中国の影響力拡大が想定される情勢等々の事情を背景に、昨今の日中関係が急速に改善・緊密化していることは周知のところです。

 

そういう中にあっても、安倍首相の中国建国70周年記念を祝賀するメッセージの中国側の扱いは、中国ウォッチャーにとっても刮目すべきものだったようです。

 

****安倍首相の祝賀ビデオメッセージが中国のCCTVで大写し──中国建国70周年記念****

安倍首相等数名の日本政財界関係者等による中国建国70周年記念を祝賀するメッセージが27日、CCTVで大きくクローズアップされ延々と流された。米中関係悪化における中国の意図と日本の位置づけを考察する。

CCTVお昼のニュースでほぼ全文公開
9月27日、お昼の中央テレビ局CCTV4(国際)で長い時間を使って、安倍首相の中国建国70周年記念を祝賀するビデオメッセージが放映され、思わずCCTVの画面に釘付けになってしまった。

本当とは思えないような、「あっ!」と声が出てしまうようなニュースだったが、それが本当であることを示すサイトはいくらでもある。(中略)その一例として「大河報網」や、環球網の報道などがある。(中略)

(安倍首相のメッセージ)全文は以下のとおりである。(括弧で括ったのがCCTVでは報道されなかった部分)

──ダージャーハオ!皆さんこんばんは。安倍晋三です。中華人民共和国が建国70周年を迎えられたことに対し、日本国政府および日本国民を代表し、心から祝意を表します。

(本年は中国が建国70周年を迎え、日本が平成から令和へと新たな時代を迎える節目の年です。日中両国が良い雰囲気の中で、それぞれにとって記念すべき年を迎えられることを大変喜ばしく思います。)

6月のG20大阪サミットでは、日中両国が成功に向けて協力し、G20としての力強い意志を大阪首脳宣言を通じて世界に発信することができました。

 

サミットに先立ち行われた日中首脳会談と夕食会では、来春に習近平国家主席を国賓として日本にお迎えすることについて首脳間で一致し、日中新時代を切り拓いていくとの決意を共有することができました。

日中両国はアジアや世界の平和と繁栄に共に大きな責任を有しています。両国が地域や世界の課題に協力して取り組み、国際社会への貢献を共に進めることは、両国の新たな未来の姿を築くことにつながると確信しています。

(今、私たちはその新しい歩みを始めました。そして、来春の習主席の国賓としての訪日は、両国の新たな未来の姿を打ち出す上で、またとない重要な機会です。日中新時代にふさわしい、有意義な訪日にしていきたいと思います。)

最後に、日中関係のさらなる発展、ご列席の皆さまのますますのご健勝をお祈り申し上げまして、私の祝辞といたします。ありがとうございました。謝謝!

以上だ。(中略)

このような長いメッセージを、お昼のニュースとは言え、ほぼ全文公開するというのは、前代未聞と言ってもいいだろう。

それだけではない。続いて公明党の山口那津男代表、慰安婦問題に関する「河野談話」で知られる河野洋平氏、日中議連(日中友好議員連盟)会長の林芳正議員(自民党)、かつて映画「君よ 憤怒の河を渡れ」で中国で人気を博した女優の中野良子さんなどの大写しの顔とメッセージが放映され、経済界からもメッセージが寄せられた。(中断 後半は後出)【9月27日 遠藤 誉氏 Newsweek】

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これまでにない、中国側の“破格の扱い”だったようです。

 

もちろん、中国側の日本警戒論がなくなった訳でもありませんが。

 

****中国、防衛白書に不快感=安倍首相メッセージは「称賛」****

中国外務省の耿爽副報道局長は27日の記者会見で、中国を警戒する記述も盛り込まれた日本の防衛白書について、「中国の通常の国防建設と軍事活動に対する理由のない非難は受け入れられない」と不快感を示した。

 

一方、中国建国70周年に際し祝意を述べた安倍晋三首相のビデオメッセージを「称賛する」と表明。「今の中日関係改善の前向きな勢いを体現した」と評価した。【9月27日 時事】

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逆に言えば、日本の防衛白書に関する反発はありながら、それでも安倍晋三首相のビデオメッセージを「称賛する」というあたりに、中国側の前向きな対応がうかがえます。

 

【前向き、あるいは、前のめりに進む日中関係改善】

なお、中国政府系シンクタンクの中国社会科学院日本研究所は7月、日本の政治・経済状況を分析した2019年版「日本青書」を発表していますが、その中で、日中関係は回復を加速させていると分析報告しています。

 

****中国で「日本青書」発表、日中関係は回復を加速―中国メディア****

(中略)

■日中関係は回復基調
青書は「2018年に日中関係は回復加速と持続的改善という良い基調を全体的に示した。

 

日中平和友好条約締結40周年を契機に、上層部のリード、協力の深化、危機管理などプラス要因が、関係をさらに良くするプロセスを力強く促進した。

 

国際情勢の変動、経済・貿易面の相互利益、日本の戦略調整が日中関係改善の背景及び動因と考えられている。

 

2018年に日本政府は『一帯一路』イニシアティブの具体的な協力方法について中国側と話し合いを始め、日中の第三国市場協力は着実な推進の勢いを示した。反グローバリズムの風潮を前に、日中両国は保護貿易主義と経済的一国主義への反対、多角的自由貿易の堅持、地域経済協力の推進など関心を共有する重要な議題において共鳴した」と指摘した。

また、2019年の日中関係の行方について「日中関係の一層の発展はプラスの条件及びチャンス期間を前にしている。だが安定的に遠くまで前進するには、まだ並大抵でなく困難な取り組みを数多くする必要がある。日中双方が向き合って進み、積極的に益を図り害を避けさえすれば、両国関係は既存の改善の成果を基礎に持続可能な安定的発展という良い勢いを保ち、各分野の協力が一層の成果を得る後押しとなる見込みがある」とした。【7月27日 レコードチャイナ】

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また、中国政府の外務次官は以下のようにも。

 

****日中は張り合うべきではない、共に光を発して世界にエネルギーを―中国外務次官****

2019年8月12日、中国新聞網は、日中戦略対話出席のため日本を訪れた中国の楽玉成(ラー・ユーチョン)外務次官が「両国は張り合うべきではない」と指摘したことを伝えた。

記事によると、9日までの日程を終えた楽氏は記者に対し、現在の世界がまれに見る難局に置かれていることを指摘。「重要な発展チャンスに向かい合うと同時に、不確実性、不安定性は依然、突出している」とし、世界2位と3位の経済大国である中国と日本は協力をさらに強化し、共に課題に立ち向かう必要があるとの認識を示した。

楽氏は「対抗は双方の利益に合致しない。張り合うのではなく、互いに照らし合い、共に熱や光を発して波立つ世界により多くの安定性とプラスのエネルギーを注入すべき」と表明し、「中日指導者が大阪で会談を成功させ、新時代の要求に一致する中日関係構築について10の共通認識に達したことは今後の両国関係発展の方向を指し示した」とも指摘。

 

日中の経済協力や人々の交流の活発化などに触れた上で、「中国側は日本とともに両国指導者の共通認識を積極的に実行したいと考える。相互信頼を増進、協力を促進、意見の対立をコントロールしリスクを防ぎ止め、両国関係を新たな段階に推し進めたい」とした。【8月14日 レコードチャイナ】

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前向き、あるいは、前のめりの姿勢は日本側も同様ですが、米中対立の構図にも一定に配慮しながら・・・ということにもなります。

 

****インタビュー:安保念頭に中国と半導体で協力案=自民・甘利氏****

自民党内の「ルール形成戦略議員連盟」の甘利明会長(税制調査会会長)は、中国を念頭に、米国との共同研究に携わる日本企業は米技術の同盟国外への漏えい防止のため、社内のファイアーウォールの仕様と運用を強化する必要があるとの考えを示した。(中略)


<安全保障念頭に、ハイテク以外の分野で中国と協力>
甘利氏は「経済政策・外交政策・貿易政策は世界の中で絡み合って進んでいる。米国が国家経済会議(NEC)の強化を図っているように、経済・外交・貿易については密接な情報交換が必要だ」との考えを示した。

米国では、ハイテク分野での中国への情報漏えい回避に神経をとがらせている。甘利氏は、日本としても「米国に懸念を与えないという意味で、中国とはハイテクでない分野での事業協力が中心になる」との基本認識を示した。

中でも、半導体分野については「(次世代通信規格)5Gの分野については同盟国内でサプライチェーンが完結するように米国は要請しており、日本も足並みをそろえなければならない。チップ1つでもスパイチップになり得る。情報が漏えいすることになる」と指摘した。

<環境対応車と半導体で協力>
甘利氏の議連では、来春訪日する予定の習近平・中国国家主席と安倍晋三首相の会談に向け、中国との環境対応自動車での協力を提言する方向だ。すでにトヨタ自動車<7203.T>はハイブリッド技術を公開しており、民間協力を支援する狙いがありそうだ。

これに加え、5G関連といった最先端分野以外の半導体製造についても協力を模索中だ。

 

中国政府が計画している半導体増産には大量のきれいな水が必要だが、中国には人や技術、土地はあっても水が不足しているとの読みが日本側にある。水の豊富な日本が請け負って半導体を生産するという案が浮上している。(後略)【9月25日 ロイター】
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【「日本は何も見えないのか!」との批判も】

こうした日中関係改善への前向き姿勢を強く批判する指摘もあります。

 

冒頭で引用した遠藤 誉氏は、中国共産党政権への厳しい姿勢が持論であり、前出記事に続けて以下のように警鐘を鳴らしています。

 

****米中貿易戦争と日本への甘い誘い*****
米中の仲が悪くなったら、中国は必ず日本に微笑みかけてくるというのは常套手段ではあるものの、この日も日本の政財界からの一連の祝賀メッセージの報道が終わると、いきなりトーンを変えてトランプ大統領への弾劾手続きが始まったことを、強い口調で放映し始めた。その露骨なまでの対比に、これもまた唖然として思わず前のめりに画面に食い入ってしまった。

習近平国家主席が安倍首相のこの「友好的」な姿勢を、どれだけ歓迎していることか、考えただけでも空恐ろしい。

(中略)日本は1989年の天安門事件後の西側諸国による対中経済封鎖を解除させて、今日の中国の繁栄をもたらした。

その結果大国になってしまった中国に、又もや跪いて、今度は中国にアメリカを凌駕させるチャンスをプレゼントしようとしている。

日本経済を成長させるためには致し方ないという考え方もあろうが、その結果、言論弾圧をする一党支配の共産主義国家が全世界を制覇することになるのだ。全人類が、あの監視社会と言論弾圧の下にひれ伏すような世界を招くための手助けを、いま日本はしているのである。

かつて、「その先が読めない日本」は、大本営の報道を信じて戦争へと突き進んでいった。その日本の盲目性は、まるで日本の国民性のように今も厳然として存在する。

香港の若者たちが、あれだけ命を懸けて「言論の自由」と「民主」を守ろうとしているのに、日本は何をしているのか。何も見えないのか。

「未来」を見る目を捨てたのか。
1948年の国共内戦で、共産党軍の食糧封鎖により餓死体の上で野宿した経験さえ、大陸では公開することが許されない。そのような言論弾圧をしている中国が、日本政府の目には見えないのだろうか。

筆者がこの齢になってもなお、執筆活動を続けるのは、この言論弾圧と闘っているからだ。そのためには何があっても、警鐘を鳴らし続ける。これは餓死せずに生き残った者の使命だと、自分に言い聞かせている。【9月27日 遠藤 誉氏 Newsweek】
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遠藤氏の厳しい姿勢は、満州国で生まれ長春包囲戦を体験したことにも裏打ちされたものですが、そこまでの体験がない者としては、「共産党政権の問題に対する指摘はそのとおりだけど・・・まあ、それはそれとして・・・・日本と中国は2000年の歴史がある関係だし・・・・今後の東アジア情勢も考えると・・・」と、曖昧・軟弱になってしまいます。

 

中国が日中関係改善を利用しようとしているのは明らかですが、それはどこの国でも考えることです。

日本も、中国現政権への評価は堅持しつつも、戦略的に日中関係を考えていく姿勢があってもいいのでは・・・とも思います。

 

【日中の国民レベルの交流に基づいた新しい時代への期待】

東京・代々木公園イベント広場で21、22日開催された「チャイナフェスティバル2019」について、中国メディアの環球網は「これほどの熱気とは思わなかった」と報じています。

 

****中国建国70周年記念イベント、日本でも大賑わい=市民多数が楽しむ****

2019年10月1日の中国建国70周年を前に、これを記念する各種イベントが9月下旬に日本でも開催された。「チャイナフェスティバル2019」には20万人以上が来場、多くの参加者は「おもいっきり中国」を楽しんだほか、華僑・華人を中心とした記念祝賀会も大きな盛り上がりを見せた。

日本華僑華人連合会が主催する「中国建国70周年記念祝賀会」が9月22日、東京都内のホテルで開催された。日本在住の華僑・華人や日本の関係者1000人以上が出席。孔鉉佑・駐日中国大使、顔安全・日本華僑華人連合会名誉会長、福田康夫・元首相らが「日中の協力で両国と東アジア地域のさらなる発展を期したい」などと挨拶。鳩山由紀夫・元首相の乾杯の発声による鏡割りの後、演奏や合唱などパフォーマンスが盛り沢山。出席者は実演を楽しんだ。

中国文化の紹介を通じた日中交流イベント、「チャイナフェスティバル2019」が9月21〜22日に東京・代々木公園で開催された。建国70周年を記念し、中華料理の出店や文化展示や日中両国のアーティストによるステージ・パフォーマンスを行った。(中略)

若者や家族連れなど2日間で約20万人が来場「おもいっきり中国」を楽しんだ。今回のフェスティバルでは、中国の人気歌手Alan、Aminや日本のアーティスト、サンプラザ中野くんら日中両国の芸能人多数が出演した。

 

代々木公園会場内の100店のブースやメインステージ、サテライトステージでは多彩な中国を体感できる。「炎の激辛中華G1 グランプリ」「みんな大好きパンダハウス」「日中友好スリッパ卓球大会など」など人気のイベントが人気を博していた。

今年は「日中青少年交流推進年」に当たるため、日中の学生がインターネットのテレビ電話で意見交換。日中青少年交流推進年日中交流ブースで、チャイナフェスティバル会場の代々木公園と在上海日本国領事館とリアルタイムで繋ぎ、日中の学生交流が行われた。日中両国の若者3万人を5年間で相互交流させるプロジェクトを計画している。【9月27日 レコードチャイナ】

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中国側の日本旅行ブームも相変わらずです

 

****ビザ申請数からみた国慶節の人気海外旅行先、日本が断トツ・・・昨年よりも2割増=中国メディア****

中国メディア・南京晨報は24日、10月1日からの国慶節連休で海外旅行をする予定の中国人観光客の間で最も人気の高い訪問先が日本であるとする記事を掲載した。

記事は、中国の大手旅行予約サイト携程が発表した今年の国慶節出国ビザ申請人気ランキングを紹介。9月中旬現在で、同サイトを通じてビザ申請を行った中国人観光客の中で最も申請が多かった目的国が日本で、以下シンガポール、韓国、タイ、マレーシア、米国、ベトナム、フィリピン、オーストラリア、英国の順となったと伝えた。

そして、同サイトのビザ申請サービス責任者が「日本旅行熱はさらに高まり続けている。今年の国慶節期間の日本のビザ取得申請数は、昨年の国慶節期間よりも20%増えた」と語ったことを紹介したほか、国慶節期間の日本訪問ビザ申請数が同期間のビザ申請総数に占める割合が25%に達したとしている。(中略)

記事は、日本旅行を計画する中国人観光客がさらに増えている背景として、日本を訪れるうえで必要な手続きがさらに簡素化したほか、電子ビザ申請の導入に向けた動きが進んでいることを挙げている。

そのうえで、7月より北京の日本大使館で始まったインターネットによるビザ申請受付が、10月からは上海の日本領事館エリア(上海市、浙江省、江蘇省、安徽省、江西省)も対象になるほか、団体客だけではなく個人旅行客などにも対象が拡大する予定であると伝えた。【9月27日 searchina】

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こうした日中の国民レベルの交流が、新たな日中関係の基礎になれば・・・と期待します。

戦車で抗議行動を踏みつぶすような国に甘い期待をしても無意味との指摘もあろうかとは思いますが、国内事情も国際関係も時代とともに変わる部分もあるでしょう。

 

その変化が両国民にとって更に良い方向に向かうように働きかけていくことが必要とも思います。

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