(ジャガイモとタマネギがきれいにディスプレイされたインド・マイソールの市場 【8月2日 ナショナル ジオグラフィック】)
【年々増加している世界の飢餓人口 特に、紛争地域で飢餓深刻化】
日本は飽食の時代で、いかに食べ過ぎを防ぐかが多くの人の問題ですが、世界的に見ると未だ「飢餓」が現実の脅威となっています。
****世界の飢餓人口が年々増加、2018年は8億2000万人以上―国連****
国連が15日に米ニューヨークの国連本部で発表した報告書「世界の食料安全保障と栄養の現状」によると、ここ数年にわたり世界の飢餓人口は年々増加しており、2018年の時点で、世界で食料不足の困窮に直面している人の数は8億2160万人に達した。新華社が伝えた。
この日発表された2019年の年次報告によると、全世界の飢餓人口が総人口に占める割合は過去数十年間で減少し続け、2015年以来11%を若干下回る水準をほぼ維持している。
しかし、絶対人数から見ると、2018年における全世界の飢餓人口は8億2160万人に達し、この数字は2017年の8億1170万人、2016年の7億9650万人、2015年の7億8540万人というように年々増加している。
報告書はまた世界で日増しに深刻になっている肥満の問題にも注目している。毎年の肥満関連死亡数は世界で400万人に達しており、しかもすべての年齢層が肥満問題に直面している。
なかでも学齢期の子どもや若者の肥満の割合が高くなっており、その主な原因として野菜や果物の摂取不足、ファーストフードや炭酸飲料の摂取と運動不足が挙げられている。【7月18日 レコードチャイナ】
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飢餓と肥満が同時並行で問題となっていることは、現実社会のアンバランスを示しています。
ただでさえ需給のバランスが難しい地域で紛争が生じれば、深刻な飢餓をまねきます。
*****近東と北アフリカで飢餓拡大、5200万人以上が栄養不足 FAO*****
国連の食糧農業機関は8日、近東と北アフリカで飢餓が拡大しており、5200万人以上が栄養不足になっていると発表した。
FAOは、「2011年以降、紛争と長期化する危機が拡散・悪化しており、同地域での飢餓撲滅キャンペーンが脅かされている」と述べた。「同地域では5200万人が慢性的な栄養不足に陥っており」、その3分の2は紛争地域で暮らす人々だという。
こうした地域にはイラクやリビア、スーダン、シリア、イエメンが含まれている。
人道支援団体によると、イエメンでは4年にわたる内戦で多くの民間人を含む数万人が死亡。国連はイエメンの状況を、330万人が家を追われ、2410万人が支援を必要とする状況に陥った「世界最悪の人道危機」と呼んでいる。
FAOは、紛争だけでなく、人口の急増や天然資源の不足や供給の不安定さ、気候変動の脅威の高まりも同地域の飢餓の悪化に拍車をかけているとして、農民の市場へのアクセスの改善、農業分野への投資やイノベーション、水資源の管理を奨励するよう各国に呼び掛けている。 【5月9日 AFP】
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【2050年 100億人の食糧をどのように供給するのか?】
食糧需給の需要面でみると、世界人口は爆発的に増加しており、この人口増加に対応した食糧供給をいかに実現するかが問題となります。
しかも、環境破壊を進めず、温暖化を悪化させない方策で・・・という条件が付きます。
*****2050年の人口は100億人へ、食料どうまかなう?*****
2050年、世界の人口はほぼ100億人になるという最新予測を国連が発表した。現在の77億人から約30%増える計算だ。それだけの人口が健康に暮らせる食料を供給することは可能なのか。
世界資源研究所(WRI)はこのほど、最新の報告書『Creating A Sustainable Food Future(持続可能な食の未来をつくる)』をまとめた。「達成するための道筋はあります。ですが、それは私たちの想像を超える大きな課題です」と、今回の報告書の共著者であるWRIのリチャード・ウェイト氏は話す。
現在、世界の植生がある土地のほぼ半分が、すでに農業に使われている。農業は、人間が使う水全体のうち90%を消費しており、地球温暖化をもたらす全排出物のおよそ4分の1を発生させている。
それでも世界の8億2000万人が、今も栄養不足に陥っている。十分な食事が手に入らない、あるいは十分な食事を買う余裕がない人々だ。
「面積当たりの食料生産量を30%増やし、森林破壊を止め、食料生産による炭素排出量を3分の1にしなければならないのです」とウェイト氏は言う。
これらすべてを、貧困を減らしつつ、生態系や淡水を損なわず、農業による環境汚染を防ぎながら行わなければならない。
「特効薬はないのです。土地をこれ以上農地に転換するのを防ぐには、飼料や放牧管理を改善したり、多毛作や育種技術を向上させる必要があります。例えば、ゲノム編集技術を使えば、収量が最大になるような作物を開発できる可能性があります。私たちは、あらゆることをやる必要があるのです」
ウェイト氏が言う「あらゆること」は、22個の解決策として565ページにもわたる報告書で詳述されている。今回提案された解決策の一部は以下の通り。
食品ロスを劇的に減らす
現在、食料全体の3分の1が失われたり、廃棄されたりしていると推定されているが、こうした食品ロスを劇的に減らす。
太陽光発電を使った冷蔵設備を農場に普及させたり、果物の日持ちを良くする天然化合物を小売店で使うなど、食品のサプライチェーン全体で改善の余地がある。(参考記事:「食糧の1/3が失われている」)
「肉食」から「植物食」に
肉を大量に消費する食事から植物由来の食事に移行する。特にウシ、ヒツジ、ヤギの肉を作るには、大量の資源が必要だ。
報告書によれば、現在、キノコが20〜35%入ったハンバーガーや植物だけでできたハンバーガーがあり、牛肉100%のハンバーガーと同じくらいおいしいという。
また、各国政府は年間6000億ドル(約65兆円)近くもの助成金を農業に拠出しているが、肉や乳製品の生産を助長するものは段階的に廃止するべきだとも述べられている。(参考記事:「肉を半分に減らさないと地球に「破滅的被害」」)
収量の効率化
これ以上の土地が農業に使われるのを防ぐためには、飼料の品質や放牧の管理を大幅に改善する必要がある。また、多期作や多毛作の方法を確立する必要もある。
これにより、作物育種技術の向上も求められる。例えば、ゲノム編集技術CRISPRを使って遺伝子を調整することで、収量が最大になるよう品種改良できる。
漁獲量の管理と水産養殖を改善する
漁業への助成金として世界中で年間350億ドル(約3兆8000万円)も出しているが、この大部分をなくせば、乱獲を抑制できる。違法な漁業や未報告の漁業の取り締まりを強化し、認証を行えば、推計1100万〜2600万トンの魚を保護できる。
水産養殖では、サケなどの大きな魚を育てるのに飼料として小魚を使うのではなく、藻や海草、種子から採った油を使った魚の餌を使用するという選択肢もある。(参考記事:「衛星で漁船を追跡、なんと海面の55%超で漁業が」)
果たしてそれで十分なのか?
「この報告書が、世界の食料システムに必要な変革を正しく提示しているとは、私には思えません」と米ワシントンD.C.に拠点を置くミレニアム・インスティテュートの会長ハンス・ヘレン氏は話す。氏は、昆虫学者としての研究で世界食糧賞を受賞している。
特に、国連食糧農業機関(FAO)と国連の世界食糧安全保障委員会(CFS)は、「アグロエコロジー(農業生態学)」の手法を支持しているが、WRIの報告書ではこれが言及されていない、と同氏は言う。アグロエコロジーは、化学肥料などを使わず、自然の生態系を生かすことで土地の生産性を高める方法だ。
CFSは、世界の人口を養う持続可能な方法についての問題を取り上げた独自の報告書を6月24日に発表したばかりだ。
その報告書によると、アグロエコロジーは、生産から消費まで、持続可能な食料システムを構築する方法として段々広まってきたという。
しかし、農業は極めて多様であり、ある場所でうまくいったものが別の場所では機能しない可能性があることは、報告書でも認めている。
WRIの報告書ではアグロエコロジーという言葉は使われていないが、解決策の一部はそう呼ぶこともできるとウェイト氏は言う。「アグロエコロジーが声高に叫ばれ、これを唯一の解決策とするせいで、現実的なニーズが置き去りにされてしまっていると思います」と同氏は話す。
花粉媒介者(食用作物の受粉を助けるミツバチなどの昆虫)に関しても、WRIの報告書ではほとんどふれられていない。だが、気温が高いと、花粉媒介者が現れる前に花が咲いてしまう可能性があり、そのため収穫量が落ちることは述べられている。
だがさらに問題なのは、トウモロコシや大豆などばかりを育てるようになり、農業における作物の多様性が失われつつあることだ。
7月10日付けで学術誌「Global Change Biology」に発表された新たな論文は、このことで花粉媒介者は危機にさらされていると警告している。
栄養を得る機会が厳しく制限されるからだ。この論文では、異なる時期に咲くさまざまな作物を栽培し、花粉媒介者に安定した食料源と生息地を提供することを推奨している。(参考記事:「世界の昆虫種の40%が減少、数十年で絶滅の可能性」)
食料生産に有益なアイデア
WRIの報告書には新しいことはそれほど書かれてない、と米国のNPO「フードタンク」の代表兼創設者のダニエル・ニーレンバーグ氏は言う。フードタンクは、飢餓、肥満、貧困を軽減する、環境的に持続可能な解決策を模索している。
「前へ進む方法について、多くの有益なアイデアを伴う具体的なメッセージがある点は評価しています」
その多くは、持続可能な食料生産に移行するために私たちが今できることであり、より多くの雇用を創出し経済成長を促すものであると同氏は言う。
細かいことはともかく、世界は断固として行動しなければならない、とWRIの会長アンドリュー・ステアー氏は今回の報告書の前書きに書いている。
「食料生産と生態系の保護は、政策や財政、農場の慣習など、あらゆるレベルで結び付くべきであり、貴重な土地と水への破壊的な競合を避けなければならないのです」 【8月2日 ナショナル ジオグラフィック】
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「果たしてそれで十分なのか?」と問えば、問題は多々あるでしょうが、まずはできるところからとりかかる必要があります。
日本のスーパー・コンビニなどでの賞味期限などによる食品ロスは犯罪的レベルですが、アジア各地を旅行していると、大量に山積みされた果物など、「売れ残ったものはどうなるのだろうか?」と感じることもしばしばあります。
【懸念される温暖化の影響 干ばつなどの増加で2050年に穀物価格が最大23%上がる恐れも】
一方、供給サイドでみると、今後進行が予想される温暖化の食糧生産への悪影響が懸念されています。
国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は8日、干ばつなどの増加で2050年に穀物価格が最大23%上がる恐れがあり、食料不足や飢餓のリスクが高まると警告した特別報告書を公表しています。
****地球温暖化で食料供給不安定に IPCCが初の報告書****
世界各国の科学者で作る国連のIPCC=気候変動に関する政府間パネルは、地球温暖化によって食料供給が不安定になり、2050年には穀物価格が最大で23%上昇する可能性もあるなどとする報告書をまとめました。温室効果ガスの削減が遅れれば重大な影響を招くと警鐘を鳴らしています。
IPCCは今月2日から7日にかけてスイスのジュネーブで総会を行い、日本を含む世界52か国の100人以上の科学者が参加して、地球温暖化が土地に与える影響などをまとめた初めての報告書を承認しました。
この中で、陸上の平均気温は海面水温などを含む世界全体の平均気温よりも産業革命前に比べて2倍近く上昇していると指摘し、ほとんどの地域で熱波といった異常気象の頻度や強さ、期間が増したのは、温暖化の影響による可能性が非常に高いとしています。
また、地中海や西アジア南米の多くの地域などで、干ばつの頻度や強さが増え、世界的な規模で豪雨の頻度が増えたことについても、温暖化の影響の可能性が高いと指摘しています。
そして、異常気象によって食料供給が不安定になり人口が今世紀末に90億人に達するような場合、2050年には穀物価格が最大で23%上昇する可能性もあるとしています。
温暖化による被害を抑えるためには、異常気象に対する早期の警戒システムを整備するなどの対策や暑さや乾燥に強い品種の活用などが欠かせないと指摘しています。
そのうえで、報告書は温室効果ガスの削減が遅れれば、多くの国で経済的に重大な影響を招くと警鐘を鳴らしていて、各国で削減対策が十分に進まないなか改めて対策の強化を迫る内容となりました。(後略)【8月8日 NHK】
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報告書によると、水不足や干ばつにさらされる人口は、産業革命前と比べ今世紀末に気温が1.5度上がる場合は50年までに1億7800万人に上るとも予想されています。
2050年・・・私にとっては,もう生きているかどうか定かでない将来ですが、若い人たちにとっては現実的な将来です。
そのときになって、「どうして30年前に手をうたなかったのか?」と嘆いても遅すぎます。
しかし、現実には世界でもっとも影響力を有する国の指導者が・・・・。
地球温暖化対策を訴え、注目されているスウェーデンの16歳の少女、グレタ・トゥーンベリさんの心配・苛立ちも、もっともな話です。
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