孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

加速する温暖化現象 追いつかない各国の対応

2022-07-29 23:19:26 | 環境
(グリーンランドの氷が過去に例のない速さで溶け始めている【7月29日 JBpress】)

【欧米を襲う熱波】
日本も暑い日が続いていますが、欧州・アメリカも熱波・干ばつに襲われています。

アメリカ・テキサスでは46.1℃。

****テキサス州で46.1度を記録…アメリカでも記録的な熱波****
記録的な熱波はアメリカでも広がっていて、各州でこの時期としての最高気温を更新した。

南部テキサス州では19日、この時期としては過去最高の46.1度を記録した。地元メディアは熱波で山火事が発生し、急速に燃え広がって大規模な被害が出ていると報じている。また、20日には28州の1億500万人以上を対象に高温の警報や注意報が出されている。

東部のニューヨークでも熱波で高温の日が続くことを受けて、市内の公共プール36カ所で21日までの2日間、夜の営業時間を1時間延長している。【7月21日 ABEMA TIMES】
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ラスベガス近郊の貯水池ミード湖は水位が低下し、出てきたものは・・・

****水位低下の貯水池から3人目の遺体発見 米ラスベガス近郊****
干ばつで水位が急低下している米ラスベガス近郊の貯水池ミード湖で、遺体が相次いで見つかっており、今週に入り3人目の遺体が収容された。当局が明らかにした。

ミード湖は、同国最大の貯水池。国立公園当局によると、25日午後、スイムビーチに遺体があるとの通報を受け、職員が出動。遺体の収容活動を開始した。

遺体の年齢など身元に関する情報は現時点では公表されておらず、検視が予定されている。

ミード湖では5月に、男性の白骨遺体が見つかった。被害者は頭を撃たれ、たるに詰められた状態で遺棄されていた。警察はこの男性について、ラスベガスで犯罪組織が暗躍していた1970年代末〜80年代初頭に殺害されたとみている。

この男性の遺体発見から数日後にも別の遺体が見つかっており、当局は貯水池の水位が下がればさらなる遺体が見つかる可能性があると指摘していた。

記録的な干ばつに見舞われ、水不足が懸念されている米西部では、貯水池や湖の水位が前例のない水準まで低下しており、ミード湖の水位も現在、1930年代の建設以来最低となっている。 【7月27日 AFP】
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干上がった湖から死体が・・・なんだか小説の出だしにうってつけの話のようにも。
それはともかく、アメリカ中西部の干ばつ、カリフォルニアなどでの山火事・・・といった話は、近年毎年のように耳にするようにも思えます。

****米西部の干ばつ、過去1200年で最悪に 米研究****
英科学誌「ネイチャー・クライメート・チェンジ」は14日、2000~21年にかけて米西部で起きた干ばつが過去1200年で最悪だったとする論文を掲載した。21年の大干ばつは特に深刻だったと指摘し、22年もこの状況が続くと予想した。

米カリフォルニア大学ロサンゼルス校とコロンビア大学の科学者らが手掛けた論文によると、人間活動を原因とする気候変動の影響で大干ばつが深刻化した。21世紀は1950~1999年の期間に比べて雨量が8.3%減ったのに加え、気温も1度近く高くなり、著しい乾燥を経験している。

今年に入ってからも、カリフォルニア州デスバレーでは記録を取り始めてから最も早い2月11日にカ氏94度(セ氏34.4度)まで上がった。1月の同州の雨量は観測史上2番目に低く、降水量が少ない状態が続いており、山火事などの被害増加が懸念されている。【2月16日 日経】
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欧州の熱波も聞くだけで汗が噴き出しそう。

****記録的熱波 イギリスで初の40度超え 暑さが原因? 火災も相次ぐ****
ヨーロッパで続く熱波の影響で、イギリスでは、観測史上初めて気温が40度を超えた。

ロンドン郊外のヒースロー空港では19日、気温が40.2度まで上昇し、イギリスの最高気温を更新したほか、市内でも観測史上初めて40度を記録した。

ロンドン市内を走る2階建てバスの車内では、温度計が40度以上を示していた。

ロンドンは夏の最高気温が24度前後で、公共機関の冷房設備があまり整備されていないため、地下鉄やバスの運行にも影響が出ている。

また、郊外では火災が相次いで発生し、市長が不用意な行動を慎むよう注意を呼びかけたほか、現地メディアは、火災が10数件にのぼっていると報じた。

気象庁は、人々が暑さに慣れていないことから、死者が出るおそれもあるとして、警戒を呼びかけている。【7月20日 FNNプライムオンライン】
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“ロンドンの7月の最高気温は平均24度。30度を上回る日は珍しく、エアコン付きの家は少ない”【7月19日 読売】  エアコンなしで40℃・・・どうするんだ?!って思ってしまいますが、欧州は日本みたいに湿気がないので多少気温が上がっても体感的にはさほど問題ないという話もあるようです。【7月28日 “ドイツ在住日本人が明かす「記録的熱波」の真実と最新コロナ事情” MAG2NEWS より】

別に「熱波=温暖化」という訳でもないですが、熱波にしろ、寒波にしろ、極端な気象現象が起きやすくなるというのは温暖化の影響と考えられるでしょう。

【アルプス・ヒマラヤの氷河融解】
気温の上昇でアルプスの氷河の融解も進んでいます。

****気候変動が影響か・・・イタリアで氷河が崩落、ブラジル・アマゾンの熱帯雨林が“最悪ペース”で消失****
氷河が崩落して起きたイタリアの雪崩事故。気候変動の影響が指摘されています。一方、ブラジル・アマゾンではこの上半期に埼玉県とほぼ同じ面積の熱帯雨林が消失、環境破壊に歯止めがかかりません。

山の斜面を勢いよく滑り落ちる白い影。これはイタリア北部の世界自然遺産、ドロミテの最高峰マルモラーダ山で3日に発生した、大規模な雪崩の映像です。雪崩は氷河の一部が崩落したことで引き起こされたということです。AP通信によりますと、登山客など7人が死亡。13人の行方が分かっていません。

現地の捜索状況を視察したイタリアのドラギ首相は。
イタリア ドラギ首相 「この悲劇を予測することはできなかったが、間違いなく自然環境と気候状況の悪化によるものだ」

事故の背景として環境的要因を指摘。特に、「気温の高さ」との関連が指摘されています。
雪崩が起きる前日、山頂付近の気温は観測史上最高となる10度にまで上昇。この地方にとっては異例の暑さで、氷河が溶けたことで雪崩に繋がったとの見方が伝えられています。

また、ロイター通信は科学者の話として、以前は安定していた氷河の動きが、気候変動の影響で予測が困難になったと指摘しています。国連の気候変動に関する政府間パネルによると、すでに、世界の平均気温は産業革命前と比べて、およそ1.1度上昇。今世紀半ばには「1.5度以上上昇する」とされています。

こうした中、さらに環境にダメージを与える動きが。「地球の肺」とも呼ばれる、ブラジル・アマゾンの熱帯雨林が減り続けていることが明らかになったのです。

ブラジル ボルソナロ大統領 「アマゾンの違法な森林伐採をゼロにする」
去年、気候変動サミットでこう宣言していたブラジルのボルソナロ大統領。しかし、ブラジル国立宇宙研究所の調査によると、アマゾンの今年上半期の消失面積は埼玉県とほぼ同じ、3750平方キロメートルに及び、2016年以降最悪となりました。

気候変動を抑えるため、森林が吸収する二酸化炭素を含む、温室効果ガスの削減が急がれる中、現実が逆行する実態があらわになっています。【7月5日 TBS NEWS DIG】
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氷河が融けるのはヒマラヤ・チベットも同じ。
ヒマラヤ・チベットは中国・東南アジアの水源でもありますので、将来的には重大な国際問題を惹起することが想像されます。

中国がインドとの関係で国境紛争を抱えている背景のひとつに、チベットの水源を確保したい思惑があるとも。

****中国にとって重要度を増す印中国境****
なぜ中国は、印中国境で緊張を高めたままにしているのだろうか。標高は5000メートル以上もあり、冬は気温マイナス30度にもなるから、人もほとんど住んでいない。そんな場所が最新鋭の兵器を集めて、軍人たちが命を懸けて戦うほど、重要なのだろうか。中国の行動を見る限り、重要だということなのだろう。では何が重要なのか。

印中国境に面しているのは、中国が支配するチベットと新疆ウイグル自治区である。実は、今、中国にとってこれらの地域の重要性は高まりつつある。

一つの原因は、チベットに資源があるからだ。まず、チベットは水資源豊富な地域である。南アジアに流れるインダス川、ガンジス川、ブラマプトラ川だけでなく、東南アジアのメコン川や、中国の黄河や長江に至るまで、すべての河川の源流はチベットにある。

今、中国は、この水資源をこれまで以上に重視している。中国沿岸諸都市の経済発展が進み、より多くの水資源が必要になっているためだ。水資源を都市部により多く引くことが重要だ。

しかも、水資源の使い方は都市に持ってくるだけではない。新疆ウイグル自治区にもっていって、そこに大農業地帯をつくるなどの方法で、都市部で消費する食糧生産につなげることもできる。

さらに問題なのは、地球の温暖化がもし本当であれば、チベットの水資源はいずれ干上がる可能性が出ていることだ。他の国が使う前に、中国は水資源を少しでも多く使いたいのである。(後略)【6月25日 “ますます緊迫する印中国境 中国は何を狙っているのか” WEDGE】
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【想像以上のスピードで溶け始めているグリーンランドの氷床】
温暖化でグリーンランドの氷が解けて、海面上昇が進行・・・というのは温暖化の定番ネタですが、特に最近は加速しているようです。

****グリーンランドの氷が異例の速さで溶け始めた!****
グリーンランドの氷床が「驚くほど広範囲に、しかも想像以上のスピードで溶け始めている」とのニュースが先週から話題になっている。わずか3日間で180億トンの氷が融解して北大西洋に流れ出たというのだ。(中略)

米国立雪氷データセンターのテッド・スキャンボス上級研究員によると、ほとんどの融解はグリーンランド北部で起きており、「180億トンという数字はウェストバージニア州を厚さ30センチで覆うことができる水量」だという。

氷床が溶け出すと直接的には海面の上昇や洪水の発生を誘発することになるばかりか、高潮や海岸浸食など、市民生活に深刻な被害を及ぼす可能性がある。

仮にグリーンランドの氷がすべて溶けると、海面がいまより約7.5メートル上昇すると言われている。

氷床が溶け出している原因はいくつかあるが、最近の融解理由はグリーンランド上空に高気圧が張り出したことで、広範囲にわたって融解現象が起きたとされる。特に先週の3日間は、平年よりも気温が6度ほど高く、摂氏15度を超えたところもあった。 

1980年代から90年代にかけて、グリーンランドではこうした融解が起きることはほとんどなかったが、2010年以降、融解が進むことが多くなった。

例えば2012年と19年の両年は史上最大といわれるほどの融解が発生した。特に2019年は春から気温が上がり、夏が酷暑となったため、5320億トンの水が海に流れ出た。そのため、世界海洋の水位が2ミリ上昇したといわれる。
2ミリというのは微細な数値だが、全世界の海洋である点を考慮すると甚大である。

今年はまだ7月中ということもあり、両年ほどの融解は起きていないが、8月、9月も温暖な日が続けば、途方もない水量が海に流れ出る可能性があると専門家はみている。

別の理由は人類が化石燃料を燃やし続けてきたというものだ。これは考えようによっては、自然が人類に警告を発しているとも受け取れる。

2020年9月の学術誌「ネイチャー」には、「地球の温暖化を過去1万2000年という単位で眺めた場合、最近の変動は過去に例がないほど特異である」という論文が掲載された。

執筆者はニューヨーク州立大学バッファロー校の雪氷学者、ジェイソン・ブライナー氏で、「過去40年間、北極の温暖化の影響により、グリーンランドの氷床が加速度的に融解している」という内容だ。

今のように人類が石油、石炭、天然ガスなどの化石燃料を燃やし続けた場合、今世紀中に約21兆トンの氷が溶ける可能性があると指摘している。これは過去1万2000年で最も融解が速かった時の、約4倍の速度であるという。(後略)【7月29日 堀田佳男氏 JBpress】
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【追いつかない対応】
加速する温暖化現象の一方で、対応が追いつかないのは周知のとおり。

****化石燃料、EU最大の発電源に 再エネを抜く=欧州統計局****
欧州連合(EU)統計局は30日、2021年に化石燃料がEUで最大の発電源となったと発表した。天然ガスの使用が過去10年で最高となったため、化石燃料が前年に首位だった再生可能エネルギーを抜いた。

新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)が起きた20年に再エネが一時的に首位となった。しかし、経済回復に伴って21年には石炭や石油、天然ガスによる化石燃料の電力供給が前年より4%増えた。(中略)

原子力発電の発電量は7%増。再生可能エネルギー源では太陽光発電が13%増え、バイオ燃料が10%増で続いた。水力と風力は悪天候のためそれぞれ減った。【7月1日 ロイター】
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昨日ブログで取り上げた、天然ガス供給不安に対するEUのガス使用量15%削減案も、この温暖化対策の変更の契機としてとらえることもできますが、現実にはガスが減る分、石炭・原子力が増えるということにも。

中国は、そのあたりを指摘して、環境問題における中国のイニシアティブをアピールしています。

****中国、クリーンエネ移行は継続と表明 「欧州は石炭に回帰」****
中国政府は27日、ウクライナ戦争で世界のエネルギー安全保障に課題が生じており、欧州諸国は石炭に回帰しているが、中国のクリーンエネルギーへの移行は今後も続くと表明、二酸化炭素の排出削減目標は達成可能との認識を示した。

北京で会見した国家エネルギー局の章建華局長は、エネルギー消費に占める非化石燃料の比率を現在から2030年まで年間平均1%ポイント増やすと発言。

「昨年はエネルギー供給がタイトで、多くの欧州諸国では石炭が再び使用され始めているが、中国の非化石燃料エネルギーの開発は依然衰えていない」と述べた。

昨年は中国の総エネルギー需要の16.6%が風力・太陽光・原子力・水力などの非化石燃料で賄われ、前年の15.9%から上昇したという。

ウクライナ戦争で天然ガスや一般炭の価格が高騰する中、中国はエネルギー安全保障の重要性を繰り返し強調しており、気候変動対策が後退するのではないかとの懸念が浮上している。【7月27日 ロイター】
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トランプ前政権に比べると温暖化対策を重視するアメリカ・バイデン大統領は、地球温暖化を「明確かつ現在の危機」と呼び、「緊急性と決意を持って行動する責任がある」「はっきりと言う。気候変動は緊急事態だ」と述べています。ただ、もう一歩の踏み込みは難しい状況。

****バイデン氏、気候対策で大統領令発表へ 緊急事態宣言は見送り****
バイデン米大統領が20日のマサチューセッツ州訪問中に気候危機対策を目的とした新たな大統領令を発表する。ホワイトハウスのジャンピエール報道官が19日明らかにした。気候変動に関する緊急事態宣言は見送る見通し。

民主党のジョー・マンチン上院議員が先週、議会で主要な気候変動条項を支持する用意がないと発言したことを受け、民主党議員や環境保護団体はホワイトハウスに積極的な気候変動対策を求めている。

緊急事態宣言が出されれば、国防生産法(DPA)を利用して再生可能エネルギーの製品やシステムの生産を幅広く拡大することが可能になるが、大統領が現段階で宣言を出す可能性は低い。

ジャンピエール報道官は、バイデン氏がマサチューセッツ州訪問でこれまでに行ってきたクリーンエネルギー分野への投資を強調するとともに「気候危機に対処しクリーンエネルギーの将来を確保するための追加措置を発表する」と述べた。

ホワイトハウス当局者は先に、バイデン氏は上院が行動を起こさなければ自身が行動すると明言したと指摘。「あらゆる選択肢を検討しているものの、何も決まっていない」とした。【7月20日 ロイター】
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各国ともに目先の問題への対応が最優先というのはやむを得ないところ。ただ、そうしているうちにも状況は更に進行して・・・ということで、人類が温暖化を止められるかについては悲観的に思えます。

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