(ジブラルタルでは、スペイン側の国境検問強化によって長い車列ができることも “flickr”より By David Gilson http://www.flickr.com/photos/59702659@N04/9427914932/in/photolist-fn7wDs-fsHtdQ-fqQMCF-fqQGwT-frY97L-foYJfH-frVxX3-foQgPw-frkbgU-frkGxJ-fmqeus-foUGv4-foUH9H-fp9Zjm-foUKbP-foUBWn-foUFAr-fr3Pj6-fszPgJ-foGTLz-fr45fc-frZxHE-frktuY-frkkiQ-frZzV7-fr677V-fr5WAV-fr5Yya-frD9cL-fsuCG5-fswXyq-fshyCp-fr5XJn-fmwmuB-fr3iU2-frhM6m-fr3mk2-fr3zAn-foHJQw-foHEj9-frZq9W-frZ8oL-frZnxW-frHZgP-frZbWd-frK9WD-frK1NF-fqBEnM-foHuxU-fqBDfP-fqBBNz)
【「EU加盟国のやることか。北朝鮮の話かと思った。フランコも昔、似たことを言っていた」】
ここ1週間ほど、ジブラルタルをめぐるイギリスとスペインの確執が話題となっています。
地中海の出入り口に位置するジブラルタルの概要については以下のとおりです。
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ジブラルタルは、面積わずか6.8平方キロメートル、人口約3万人の英自治領。大西洋と地中海を結ぶ唯一の出入り口を見下ろす場所にあるため、戦略的要衝となっている。スペインは1713年、ジブラルタルを英国に永久割譲したものの、やはりスペインの統治下に戻すべきだと長く主張してきた。しかし地元住民は一貫して英領にとどまることを希望、英国も地元の意思に反して主権をスペインに再移譲するつもりはないとしている。【8月13日 AFP】**********
ジブラルタルをめぐるイギリス・スペインの対立は今に始まったものではなく、300年前のユトレヒト条約以来のもので、そのあたりの話については、2009年7月22日ブログ「スペイン ジブラルタルは“返せ” セウタ・メリリャは“わが領土”」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20090722)で取り上げました。
4年前のブログで書いた以上のことは特にないので、今回の騒動はパスしていたのですが、EU加盟国同士、成熟した民主主義を誇る先進国同士の大人げない争いがなかなか収まらないようなので、騒ぎの紹介だけ。
今回騒動は、イギリスに属するジブラルタル自治政府が最近、魚礁をつくるためにコンクリート製ブロックを周辺海域の海底に沈めたことへ、スペイン政府が“スペイン漁船が海域に入り込むのを阻止するためだ”として、これに猛反発したことから始まっています。
スペイン側は対抗措置として通行税徴収などの検討を表明しています。
****ジブラルタルめぐり緊張再燃=英・スペイン、「関係最悪」に****
イベリア半島南端にある英領ジブラルタルをめぐり、領有を主張するスペイン政府が国境通過者に通行税を課す考えを表明、英側を激怒させている。
両国はともに欧州連合(EU)と北大西洋条約機構(NATO)の加盟国だが、この問題で2国間関係は「近年で最悪」(BBC放送)と言われるまで悪化しており、外交上、深刻な影響が生じかねない。
発端は7月、ジブラルタル政府が周辺海域にコンクリートのブロックを沈めて魚礁の建設を開始したこと。スペイン側は「スペイン漁船に対する妨害」と反発、報復として国境検問を強化したため、往来する住民らが猛暑の中を長時間待たされる事態となった。
さらにスペインのガルシアマルガリョ外相は8月初め、(1)国境を通過する際に50ユーロ(約6400円)の通行税を徴収(2)ジブラルタル発着の航空機のスペイン領空飛行禁止―などの措置を検討していると表明。
これに対し、ジブラルタルのピカード首席閣僚(首相)は「(スペイン政府は)まるで北朝鮮」と強く非難。キャメロン英首相もスペインのラホイ首相との電話会談で、外交関係悪化への「深い懸念」を伝えた。
英国では、スペイン側の強硬姿勢に批判的な報道が相次いでいる。保守系デーリー・テレグラフ紙は「英国の果敢な抵抗は岩のように強固だ」との見出しで愛国心をあおった。一部では、スペイン政府が経済危機や与党内の汚職疑惑から国民の関心をそらすため、ジブラルタル問題を利用しているとの見方も出ている。【8月10日 時事】
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スペインは深刻な失業問題などを抱え、ジブラルタルで騒いでいる暇はないように思えるのですが、そうした国内問題が存在するだけに外交問題をクローズアップさせるというのは、古今東西の政権の常套手段でもあります。
イギリスにしても、いつまでも大英帝国時代の海外領土に固執することもなかろうに・・・という感があります。
事態は双方の非難の応酬、対抗措置のエスカレートという、おきまりの道を転げ落ちています。
“ジブラルタル政府のピカード首相は5日、スカイ・テレビに「欧州連合(EU)加盟国のやることか。北朝鮮の話かと思った。(スペインの独裁者)フランコも昔、似たことを言っていた」と強い調子で(スペイン政府を)批判。1950年代にフランコ政権が領土奪還に向けて動いた際と似ていると指摘した。”【8月7日 産経】
イギリス側は、300年前にジブラルタルをイギリス領と認めたユトレヒト条約を盾に一歩も引かぬ姿勢です。
キャメロン首相の報道官もスペイン側の対応を「政治的な動機に基づいたもので、完全に度を越している」と非難、“法的措置”の検討を表明しています。
****ジブラルタル問題で英が法的措置検討、スペインとの対立激化****
英政府は12日、イベリア半島南端の英領ジブラルタルでのスペインによる国境検問の強化に対し、法的措置を検討していることを明らかにした。
一方のスペイン側は国連などへの訴えも辞さない構えで、両国の対立が激化している。
デービッド・キャメロン英首相の報道官は、スペインの検問強化によって国境を越えようとする人々が数時間にわたって足止めされていると指摘。「政治的な動機に基づいたもので、完全に度を越している」と非難した上で、「どのような法的措置が可能か検討中だ」と述べ、スペインに対し前例のない措置に踏み切るべきかどうか吟味していることを明らかにした。
これに対しスペインは、検問は「合法かつ適切」として中止するつもりはないと反発。同国外務省の報道官は、スペインが国連安全保障理事会や、オランダ・ハーグの国際司法裁判所といった国際機関へ訴える可能性も視野に入れていると話した。(後略)【8月13日 AFP】
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【ジブラルタル、フォークランド領有は「植民地主義であり国連決議に反する」】
一方のスペイン側は、フォークランド諸島を巡ってイギリスと戦火を交え、今も同問題で対立するアルゼンチンと共闘する姿勢を見せています。
****ジブラルタル問題:スペイン、アルゼンチンと共闘****
イベリア半島南東の英領ジブラルタルを巡り領有権を主張する英国とスペインの緊張が高まっている問題でスペイン政府は、同じく英国と領土問題を抱えるアルゼンチンと共闘する姿勢を示した。
一方、英国は12日、法的措置の検討に入るなど対立はいっそう先鋭化している。
◇英、法的措置も
スペイン・メディアは11日、政府当局の話として、ガルシアマルガリョ外相が9月にアルゼンチンを訪問する際、領土問題についてアルゼンチン政府と意見交換すると伝えた。アルゼンチンは長年、英領フォークランド諸島の領有権を巡り英国と対立している。
スペインはアルゼンチンと共闘し英国によるジブラルタル、フォークランド領有を「植民地主義であり国連決議に反する」として国連安保理か国連総会で議題にしたい考えだ。
一方、こうしたスペインの姿勢に、キャメロン英首相の報道官は12日、「ジブラルタルとフォークランドは別問題だ」と不快感を示し、スペイン政府がジブラルタルとの国境検問を強化している問題について、英政府として法的措置を検討している考えを明らかにした。措置の内容は不明だが、英メディアは欧州連合(EU)司法裁判所への提訴の可能性があると報じている。
アルゼンチンは現在、国連安保理非常任理事国になっている。英国とアルゼンチンが軍事衝突したフォークランド紛争(1982年)では、スペインはこれまで一貫して、中立の立場をとってきた。【8月13日 毎日】
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フォークランドまで引き合いに出されたのでは、イギリスとしては更に引き下がる訳にはいかなくなります。
双方が1歩ずつ引けば、互いにメリットのある妥協策もあるだろうに・・・。
第三者的には“大人げない泥仕合”のようにも思えますが、領土問題となるとこんなものなのでしょう。