こんなにも大きな権力(ちから)の前で 音楽はまったくの無力だ
こんなにも大きな悲しみの前で 音楽はなすすべもない
飢えを満たすことも
傷口をふさぐことも できない
それなのに なぜ
血を吐くような思いで 奏でる音の一つ一つを
磨こうとするのか
もし あなたの目に汚辱や悲惨や理不尽ばかりが映って
この世界を見捨てたくなった時
自分でもとめられない感情(こころ)の奔流に押し流されそうになった時
歪んだ世界がつくり出す狂気の淵にのみこまれそうになった時
あなたをつなぎとめるひとすじのかぼそい糸に
この音がなりうるのなら
ほんのわずかでも善いもの美しいものが確かに存在すると
信じるよすがになるのなら
音楽なんて何のたしにもならない
音楽なんてどうしようもなく無力だ
だけど 音楽が世界を救うこともあるから