AMASHINと戦慄

~STARLESS & AMASHIN BLOG~
日々ブログレッシヴに生きる

二泊三日幻夢郷の旅

2011年12月23日 | ルルイエ異本
先月末に刊行されたばかりのブライアン・ラムレイ著『幻夢の時計』を近鉄電車の中で読み終えた。
本作は『地を穿つ魔』、『タイタス・クロウの帰還』から連綿と続いている、タイタス・クロウ・サーガ・シリーズ第三弾。いわゆるヒロイック・ファンタジーもんである。

今回は、人間が見ている夢の、更に深いところに存在する異世界である<夢の国>が舞台。
巨匠ラヴクラフトが『未知なるカダスを夢に求めて』(『ラヴクラフト全集6』参照)で描いた壮大なる幻夢郷の大舞台をそのまんま拝借して、そこでタイタス・クロウ達とクトゥルー眷属邪神群(CCD)どもがチャンチャンバラバラを繰り広げちゃうという、今回も勧善懲悪色の濃い冒険活劇でとにかくアホくさい。

事の発端は、タイタス・クロウが前作であてがわれた旧き神々の国出身の恋人ティアニアと<夢の国>へハネムーンよろしく幻夢旅行をしてる最中に、這い寄る混沌ナイアルラトホテップの手先<角族>に捕われの身になってしまうという、はなっからチャラチャラした状況設定。そこで盟友アンリ・ド・マリニーが危険を顧みず単独で救出に向かい、CCDに真っ向勝負を挑むという勇ましき友情の物語って、ほんまアホくさ!
で、この物語の勇者達は、先の<夢見人>ランドルフ・カーターのように、ナシュトとカマン・ターらに忠告を受け、昔かわいがっていたウルタールの猫の助けを借りたりとか、かつて覚醒世界でリチャード・アプトン・ピックマンだった食屍鬼や、夜鬼どもと協定を結ぶなんて面倒くさい手順などは一切踏まえない。
空飛ぶマントや(アホくさ!)スペシウム光線みたいな武器を備えた時空往還機などの超便利な小道具の力をかりて<夢の国>の領空などひとっ飛び。偃月刀をふりまわしザコの角族どもなどいとも簡単にバッタバッタとなぎ倒す。

うん、もうハッキリいってドラえもん映画まつりの長編アニメとたいして変わらんと思う。
この小説をもし映像化するなら、是非藤子不二雄先生に描いてもらってドラえもん長編シリーズとしてアニメ化し、タイトルは『のび太の幻夢体験記』、もしくは『のび太とクトゥルー眷属邪神群』とでも改題したほうがいいだろう。

あと、許せなかったのがクリーチャーどもの相関関係がメチャクチャ!
だって、あの無貌の黒き魔物“夜鬼”(ナイト・ゴーント)が、関節的ではあるにせよ、なぜかナイアルラトホテップの手先となってタイタス・クロウの前に立ちはだかるのだ。
夜鬼は大いなる深淵の大帝ノーデンスにのみ仕えるクリーチャーであり、ノーデンスとナイアルラトホテップとは常に敵対関係にあると、ラヴクラフトは明記している。
それにタイタスが夜鬼の発するゴム質の翼のくぐもった響きを頼りに夜鬼を追跡するくだりがあるのだが、夜鬼は飛行する際羽ばたき音はいっさい発せへんのやっちゅーの!

幼い頃のラヴクラフトの夢にも度々出現したという漆黒の魔物“夜鬼”。特技はこそばし。


まぁウルタールの賢人アタルやセレファイスの王クラネスやイレク=ヴァドを統べる王となったランドルフ・カーターなどの、<夢の国>お馴染みのスター達がぞくぞく登場するので、その辺は幻夢郷好きにはたまらないかと。
あと、ングラネク山地下の暗黒の洞窟内を守護する三位一体のクリーチャー<騎るもの>の笑い声が「ルヒィィ・ルヒィィ・ィィィ・ィィィ!」というのがコズミック・ホラー的でよかったかな。

今日の1曲:『Dreamer』/ Tommy Bolin
コメント
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