分類・文
児童小説 まットコ さットコ やットコ
いわきの総合文藝誌風舎6号掲載 箱 崎 昭
(10)
正哉の家から1キロぐらい離れた所に、さットコをあげた駄菓子屋さんはあるので、月に1,2度は店に買いに行きます。
それは、さットコがどうしているのか様子を見たいというのが本当の気持ちです。 おばちゃんは、子ども大好き人間だから駄菓子屋さんを始めたというだけあって、子供を見ている時は笑顔を絶やすことがありません。
店の中には、行くたびに子供たちが何人かいることでも人気があることが分かります。
さットコは、店の奥にある座敷の座布団の上で背中を丸めて気持ち良さそうに寝ています。そんな時、正哉にはちょっとだけ淋しく思うことがあります。
もう、すっかりこの家の猫になってしまったらしく、正哉がおばちゃんと話をしていても、時々耳をピクッと動かすだけです。
でも、美代ちゃんとおばちゃんにあげた2匹の猫は、正哉とお母さんの2人で決めた名前を変えないで「まットコ」と「さットコ」と、そのまま呼んでくれていることが正哉には1番うれしいと考えています。
だって、お母さんが言ったようにボクの名前のまさやから1文字ずつとって付けたので、3匹はボクの分身だと思っているからです。
「おばちゃん、さットコはいつもああやっておとなしくしているの?」
正哉はアメ玉を指差して、おばちゃんに取ってもらいながら聞いてみました。
おばちゃんは振り返って、さットコを見ると「おとなしい子だけど、いつもジッとはしていないよ。今日も早いうちにその辺を散歩に行って帰ってきたところで、疲れて休んでいるんだよ」
おばちゃんは自分が散歩にでも行ってきたかのように、楽しかったような顔をして正哉に答えました。
〈それって本当は違うんだよ。さットコは自分の勢力地帯に他の猫が入り込んでこないように見回りに行ってきたんだ。時には相手の猫とけんかをしているかもしているかも知れないよ〉
正哉は、おばちゃんにそう言ってあげたい気持ちにかられました。
ずっと前に、お父さんから猫の縄張り本能について聞いたことがあるので、ちょっと自信があったから言ってみたかったのです。
でも、おばちゃんは、さットコのことを本当に自分の子供のようにして育てているので、心配させてしまうのではないかと思ったら、やっぱり言えなくなってしまいました。
さットコも、ボクの家にいるやットコと同じで、おばさんの見えない場所で敵と戦っているんだなと思いました。 (続)
児童小説 まットコ さットコ やットコ
いわきの総合文藝誌風舎6号掲載 箱 崎 昭
(10)
正哉の家から1キロぐらい離れた所に、さットコをあげた駄菓子屋さんはあるので、月に1,2度は店に買いに行きます。
それは、さットコがどうしているのか様子を見たいというのが本当の気持ちです。 おばちゃんは、子ども大好き人間だから駄菓子屋さんを始めたというだけあって、子供を見ている時は笑顔を絶やすことがありません。
店の中には、行くたびに子供たちが何人かいることでも人気があることが分かります。
さットコは、店の奥にある座敷の座布団の上で背中を丸めて気持ち良さそうに寝ています。そんな時、正哉にはちょっとだけ淋しく思うことがあります。
もう、すっかりこの家の猫になってしまったらしく、正哉がおばちゃんと話をしていても、時々耳をピクッと動かすだけです。
でも、美代ちゃんとおばちゃんにあげた2匹の猫は、正哉とお母さんの2人で決めた名前を変えないで「まットコ」と「さットコ」と、そのまま呼んでくれていることが正哉には1番うれしいと考えています。
だって、お母さんが言ったようにボクの名前のまさやから1文字ずつとって付けたので、3匹はボクの分身だと思っているからです。
「おばちゃん、さットコはいつもああやっておとなしくしているの?」
正哉はアメ玉を指差して、おばちゃんに取ってもらいながら聞いてみました。
おばちゃんは振り返って、さットコを見ると「おとなしい子だけど、いつもジッとはしていないよ。今日も早いうちにその辺を散歩に行って帰ってきたところで、疲れて休んでいるんだよ」
おばちゃんは自分が散歩にでも行ってきたかのように、楽しかったような顔をして正哉に答えました。
〈それって本当は違うんだよ。さットコは自分の勢力地帯に他の猫が入り込んでこないように見回りに行ってきたんだ。時には相手の猫とけんかをしているかもしているかも知れないよ〉
正哉は、おばちゃんにそう言ってあげたい気持ちにかられました。
ずっと前に、お父さんから猫の縄張り本能について聞いたことがあるので、ちょっと自信があったから言ってみたかったのです。
でも、おばちゃんは、さットコのことを本当に自分の子供のようにして育てているので、心配させてしまうのではないかと思ったら、やっぱり言えなくなってしまいました。
さットコも、ボクの家にいるやットコと同じで、おばさんの見えない場所で敵と戦っているんだなと思いました。 (続)