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いわき市立草野心平記念文学館
いわき市小川町高萩字下夕道1-39
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草野心平記念文学館には何度か足を運んでいるが、館内ではいつも目線の高さで見える資料や展示品を見学の対象物としていた。
前に1度だけ大きな透明ガラスの上の部分(=写真上)に何か文字が書いてあるなと思ったことはあるが、目を凝らしてよく見ないと読めないのでやめてしまった事実がある。
今回は時間的にも余裕があったので、傍に寄ってガラス張りの下から顎を天に向けて読んでみた。それは紺碧の空に書かれた(透明ガラスの存在を忘れてしまい実際にそう見える)草野心平の詩「猛烈な天」そのものだった。
アトリウムロビーに張られた大きなガラス窓から、阿武隈山系の稜線を境にして下は小川町の風景が望め、上には無限の青空が広がっている。
まるで青空に浮かんでいるかのような詩を読んでいる内に、その素晴らしさと雄大さに草野心平の世界へ、いつの間にか誘引されていくような自分がいた。
猛烈な天
血染めの天の。
はげしい放射にやられながら。
飛び上がるやうに自分はここまで歩いてきました。
帰るまへにもう一度この猛烈な天を見ておきます。
仮令無頼であるにしても眼玉につながる三千年。
その突端にこそ自分はたちます。
半分なきながら立ってゐます。
ぎらつき注ぐ。
血染めの天。
三千年の突端の。
なんたるはげしいしづけさでせう。
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《館内アトリウムロビー》 《草野心平》
この時期に「放射」という文字を見るとナーバスに、あるいはヒステリックな感情を抱く人もいるだろうが、猛烈な天の放射はタクラマカン(中国)の灼熱の地獄にも似た土地を離れる時の心境を詠んでいる。
詩集「絶景」のうちで有名になったのが「猛烈な天」で、天はカエルや富士というモチーフを超越して繰り返し歌っているし、草野心平の最も早い時期の傑作だ。
草野心平は「蛙の詩人」と呼ばれることを必ずしも喜んではいなかったようで、詩集「天」の後書き「天に就いて」の中で、「私がいままで書いた作品の約70パーセントに天が出てくる。或いは空とか星雲とか天体の様々な現象が……」などと記している。
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