分類・文
児童小説 まットコ さットコ やットコ
いわきの総合文藝誌風舎6号掲載 箱 崎 昭
(4)
正哉の飼い猫試験に合格した人は、自分が欲しい子猫の品定めをしています。
「どれにしようかなー」
しばらく考えていた正哉と同級生の美代ちゃんが「この猫ちゃんにしよーっ」と言って選んだのは、まだ真っすぐな性格かどうかは分からないけれど3匹の中では大人っぽい1番上の、まットコでした。
「どうもありがとう、いただくね」
美代ちゃんはまットコを両手で抱き上げて、ほおずりをしてあげていました。 これなら大丈夫だ“ まットコ幸せになるんだよ ”と正哉は心の中で叫びました。
次に子猫を欲しがっている人は、ここから1キロほど離れている駄菓子屋のおばちゃんです。1人暮らしで猫を子供のように育てると言ってくれたので合格です。
お店をちょっと閉めてきたのだと言って、うれしそうに2番目のさットコをバスタオルの上に乗せると、そっと抱っこしてさットコに話しながら帰っていきました。
「やっぱり残ったのはやットコか」
正哉は最初からそういう予感がしていたのです。
茶色の毛色をしたトラ猫で、鼻筋に白い線が入っているので見た目はカッコいいのですが、人なつっこいところがなく誰が声を掛けてもマイペースで、いつも知らん顔をしているのが特徴です。
可愛らしさがなく、人には好かれないタイプのようです。
「それでもいいんだ」
やットコは話すことができたら、おそらくそう言うだろうと思う顔をしながら、いつも好きなように行動しているのです。
正哉は、やットコのことを本当はとても頼もしい猫だと思っています。
まットコも、さットコも貰われていってお母さん猫のそばに残ったのは、やットコだけになったのだからたくさん甘えることができるのに、それもしないということがとても偉いなとも思っています。
お父さんとお母さんに、そのことを話したら「やットコは猫本来の野生的習性を持って生まれてきたので、ほかに頼らなくても自分だけで生きていけるんだぞという力も兼ね備えているんだろうな、きっと」
お父さんは、ボクにはちょっと分かりづらい話し方をしていたけど感心しているようでした。
「やんちゃな、やットコも中々頼もしいところがあるのね」
お母さんは今、やットコのことを頼もしいと言ってくれました。
ボクと同じ考えなんだと思ったらスッゴクうれしい気分になりました。 (続)
児童小説 まットコ さットコ やットコ
いわきの総合文藝誌風舎6号掲載 箱 崎 昭
(4)
正哉の飼い猫試験に合格した人は、自分が欲しい子猫の品定めをしています。
「どれにしようかなー」
しばらく考えていた正哉と同級生の美代ちゃんが「この猫ちゃんにしよーっ」と言って選んだのは、まだ真っすぐな性格かどうかは分からないけれど3匹の中では大人っぽい1番上の、まットコでした。
「どうもありがとう、いただくね」
美代ちゃんはまットコを両手で抱き上げて、ほおずりをしてあげていました。 これなら大丈夫だ“ まットコ幸せになるんだよ ”と正哉は心の中で叫びました。
次に子猫を欲しがっている人は、ここから1キロほど離れている駄菓子屋のおばちゃんです。1人暮らしで猫を子供のように育てると言ってくれたので合格です。
お店をちょっと閉めてきたのだと言って、うれしそうに2番目のさットコをバスタオルの上に乗せると、そっと抱っこしてさットコに話しながら帰っていきました。
「やっぱり残ったのはやットコか」
正哉は最初からそういう予感がしていたのです。
茶色の毛色をしたトラ猫で、鼻筋に白い線が入っているので見た目はカッコいいのですが、人なつっこいところがなく誰が声を掛けてもマイペースで、いつも知らん顔をしているのが特徴です。
可愛らしさがなく、人には好かれないタイプのようです。
「それでもいいんだ」
やットコは話すことができたら、おそらくそう言うだろうと思う顔をしながら、いつも好きなように行動しているのです。
正哉は、やットコのことを本当はとても頼もしい猫だと思っています。
まットコも、さットコも貰われていってお母さん猫のそばに残ったのは、やットコだけになったのだからたくさん甘えることができるのに、それもしないということがとても偉いなとも思っています。
お父さんとお母さんに、そのことを話したら「やットコは猫本来の野生的習性を持って生まれてきたので、ほかに頼らなくても自分だけで生きていけるんだぞという力も兼ね備えているんだろうな、きっと」
お父さんは、ボクにはちょっと分かりづらい話し方をしていたけど感心しているようでした。
「やんちゃな、やットコも中々頼もしいところがあるのね」
お母さんは今、やットコのことを頼もしいと言ってくれました。
ボクと同じ考えなんだと思ったらスッゴクうれしい気分になりました。 (続)