いわき鹿島の極楽蜻蛉庵

いわき市鹿島町の歴史と情報。
それに周辺の話題。
時折、プライベートも少々。

まットコさットコやlットコ(6)

2013-01-04 08:12:16 | Weblog
                                           分類・文
      児童小説 まットコ さットコ やットコ
           いわきの総合文藝誌風舎6号掲載            箱 崎  昭
          
     (6)
 やットコの母親は1日たっても2日たっても帰ってくることはありませんでした。 
 いつまでも一緒にいたのでは、やットコのために良くないと考えたのでしょうか、どこか別の土地へ行ってしまったようです。
 この子ならもう離れていっても安心だと母親猫は思ったに違いありません。いままでにずっと、やツトコのことばかりを見てきたから心配がなくなったのでしょう。
 動物世界の掟(おきて)で、やットコ思いの母猫は少しでも早く身を引いて、やットコに自分の力で生きていけるようにとこの場所から出て行ったはずです。
 もともと猫は犬と違って、外の小屋に住むようなことはしません。
 人が住んでいる家の中で自由に暮らすことが大好きなのです。
 正哉は一晩だけではなく何回か添え寝をしてあげたものだから、このごろは夜になると正哉の蒲団に黙ってもぐり込んでくるようになりました。
 でも、やットコは昼間はどこへ遊びに行っているのかサッパリわかりません。
 1日中、遊んでくるのだから相当疲れて帰ってくるのでしょう、蒲団の中に入ると大の字になって寝てしまいます。
「やットコって大物なんだなー」
 正哉は、そばでひとりごとを言って、つくづく感心するばかりです。
 一時は母猫がいなくなって、しょげていた時もあったけど、もうこの姿を見る限りその心配はなくなったと思いました。
 そして、子猫の時に、もらいに来た人たちが選んで連れて行った、まッットコ、さットコは今ごろどういう寝かたをしているのかなーと想像もしました。
 正哉は、あの時に選ばれなかったやットコに同情したのですが、本当はやットコが一番幸せだったんだなーと思い直すようになりました。
 だって、母親猫と最後までいられたのは、やットコだけだもの。 (続)
コメント
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