分類・文
児童小説 まットコ さットコ やットコ
いわきの総合文藝誌風舎6号掲載 箱 崎 昭
(2)
手のひらに乗るような小さくて元気な猫の子が3匹生まれました。
まだ目が見えないというのに、母親のお乳を探って夢中になって飲んでいます。
「なんてかわいいんだろう」
正哉は、そばにしゃがみ込んでいつまでも見ていました。
目が見えるようになって、子猫どうしがじゃれ合うようになってきた頃には、近所の猫好きな人たちも来るようにななりました。
「お母さん、子猫に名前を付けてあげないといけないね」
「正哉は何か付けたい名前でもあるの?」
「ぜんぜん思い浮かばない」
「それじゃー3匹だから、まさやの名前を3つに分けて、まットコ・さットコ・やットコということにしたらいいんじゃない」
お母さんは、いきなり突拍子もないことを言い出してきました。
「それって意味がわかんない」
「意味なんかどうでもいいのよ。語呂合わせだけど“ やっとこ、さっとこ ”という言葉はあるのよ。それに“ まっとこ ”が1つ加わるだけ」
「ふーん、おかしくて吹き出しそうな名前だけど意外と面白いかもね」
「どう、気に入ってくれた? 猫ってさネコ、ヘコ、トコといってね、生まれた季節によって生き物を捕る種類が違うんだってよ、春に生まれた猫はネコといってネズミを捕り、夏に生まれた猫はヘコといってヘビを捕り、秋に生まれた猫はトコといって鳥を捕るんだって。お婆ちゃんから昔、聞いたことがあるの」
「じゃあ、家の猫は冬に生まれたんだから、いったい何を捕るのかなー?」
正哉に質問されたお母さんは、一瞬答えに詰まりましたが「いまのネコはキャットフードを食べているから、もしかすると何も捕らないかも知れないね」と笑顔を見せました。
こうして子猫3匹の名前は、お母さんと正哉の2人によって簡単に命名(名前を付けること)されたのです。
そして、お母さんは正哉に言いました。
「3匹の猫は、まさやの頭文字から取ったけど、まットコは真っ直ぐな性格、さットコはさっぱりした性格、やットコはやんちゃな性格というように、それぞれが個性のある猫に育ってくれると楽しいわね」
正哉は「うん」と言って、本当にそうなってくれるといいなと思いました。 (続)
児童小説 まットコ さットコ やットコ
いわきの総合文藝誌風舎6号掲載 箱 崎 昭
(2)
手のひらに乗るような小さくて元気な猫の子が3匹生まれました。
まだ目が見えないというのに、母親のお乳を探って夢中になって飲んでいます。
「なんてかわいいんだろう」
正哉は、そばにしゃがみ込んでいつまでも見ていました。
目が見えるようになって、子猫どうしがじゃれ合うようになってきた頃には、近所の猫好きな人たちも来るようにななりました。
「お母さん、子猫に名前を付けてあげないといけないね」
「正哉は何か付けたい名前でもあるの?」
「ぜんぜん思い浮かばない」
「それじゃー3匹だから、まさやの名前を3つに分けて、まットコ・さットコ・やットコということにしたらいいんじゃない」
お母さんは、いきなり突拍子もないことを言い出してきました。
「それって意味がわかんない」
「意味なんかどうでもいいのよ。語呂合わせだけど“ やっとこ、さっとこ ”という言葉はあるのよ。それに“ まっとこ ”が1つ加わるだけ」
「ふーん、おかしくて吹き出しそうな名前だけど意外と面白いかもね」
「どう、気に入ってくれた? 猫ってさネコ、ヘコ、トコといってね、生まれた季節によって生き物を捕る種類が違うんだってよ、春に生まれた猫はネコといってネズミを捕り、夏に生まれた猫はヘコといってヘビを捕り、秋に生まれた猫はトコといって鳥を捕るんだって。お婆ちゃんから昔、聞いたことがあるの」
「じゃあ、家の猫は冬に生まれたんだから、いったい何を捕るのかなー?」
正哉に質問されたお母さんは、一瞬答えに詰まりましたが「いまのネコはキャットフードを食べているから、もしかすると何も捕らないかも知れないね」と笑顔を見せました。
こうして子猫3匹の名前は、お母さんと正哉の2人によって簡単に命名(名前を付けること)されたのです。
そして、お母さんは正哉に言いました。
「3匹の猫は、まさやの頭文字から取ったけど、まットコは真っ直ぐな性格、さットコはさっぱりした性格、やットコはやんちゃな性格というように、それぞれが個性のある猫に育ってくれると楽しいわね」
正哉は「うん」と言って、本当にそうなってくれるといいなと思いました。 (続)