いわき鹿島の極楽蜻蛉庵

いわき市鹿島町の歴史と情報。
それに周辺の話題。
時折、プライベートも少々。

まットコさットコやットコ(3)

2013-01-01 07:10:14 | Weblog
                                              分類・文
     児童小説 まットコ さットコ やットコ          
            いわきの総合文藝誌風舎6号掲載            箱 崎  昭
    

     (3)
 母親猫は3匹が育ち盛りで日に日に成長していく姿を見つめては目を細めながら、幸せそうな顔で子猫たちからいつも離れないでいます。
 母親のお乳を飲まなくなってきた頃になると、お母さんの知り合いの人や正哉の友達とかが子猫が欲しいとお願いに来るようになったのです。
 そこでお父さんも交えて夕飯を済ませた時に3人で家族会議をすることにしました。 正哉はチロが死んだ時には、もう動物を飼うのはいやだと思っていたのに、今では1匹の猫も他の人にはあげたくないと思うようになっていました。
「でもさ、猫を可愛がってくれる人ならあげてもいいとお父さんは思うな。だって、動物は、いずれ親から離れていかなければならない運命にあるんだ」
「そういえば人間だって同じだよね。兄妹が何人いても大人になればはなれていくもの」
 お母さんも納得したようにうなずきました。
「どうしてなんだろう。ボクさ、猫の家族を見ていると離してしまうのがとても可哀想に思えるんだけど」
 正哉は、猫を全部この家に置いておきたいと考えているのです。
「それは正哉が猫を飼っているうちに愛情が湧いてきたからなんだよ。鳥でも犬でも、みんな飼っているうちに家族と同じように思えてくるものさ」
 お父さんは、しみじみと言いました。
「誰かにもらって頂くというのも猫に対する愛情の一つなんだよ」とも言いました。「ボク、猫が欲しいという人の採用試験をして、合格した人にあげるようにしようかな」
 正哉は真剣な顔をして言うのです。
「ハッハッハ、それはどういう方法でやるんだい」と聞き返したお父さんとお母さんは、すごく興味がありそうです。
「それは、猫が病気になった時にどうするのかを聞いて、明日病院に連れて行くとか会社や学校が休みの時に必ず連れて行くという人は不合格にするんだ」
「どうして? 病院へ連れて行ってくれるんだからいいでしょう」
 お母さんが、ちょっと首をひねって聞きました。
「いや、だめ!すぐに連れて行くという人でなければ絶対にあげられない。だってチロが身体の具合が悪いと思った時に、病院へ連れて行ってあげていれば助かったかも知れないんだよ。それが明日にしようなんて思ったばかりに大事なチロは死んじゃったからさ」
 お父さんも、お母さんも黙ってしまいました。 (続)
コメント
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