ウェスタン・スピリットのRCAケーブルが届いた。ウェスタンの1920年代の単線を素材として使い、被膜は絹糸を巻きつけてある。熟練の技が光る逸品である。
ピン端子はスイッチクラフト社の小さめのものがついている。まずは、この点が私には嬉しい。QUAD22の入力端子は規格が違うのかとても小さい。普通のピン端子ではするっと抜け落ちてしまうのである。しかし、このスイッチクラフト社のものだとしっかり食い付くのである。
単線であるので、取り回しは慎重に行う必要がある。一部分に圧力がかからないようになるべく自然な流れのままに接続する。
今まで使っていたのは、かって「ケーブルの迷宮」に迷いこんだ時に購入したノードスト製のものである。もう数年前に買ったものであった。
最近はケーブルにはとんと興味を示さなくなったので、変更することもなく使い続けていた。細くて柔らかく取り回しがとても楽なケーブルであった。
さて、ウェスタン・スピリットのRCAケーブルに変更して、普段聴き慣れた「耳たこソフト」をかけた。
まずはハイドン バイオリン協奏曲。ついでルター レクイエム。さらにブルックナー 交響曲第5番 第2楽章。
さてその印象は・・・背筋が伸びる音である。音の居ずまいがすっとしている。姿勢が良い。思わずこちらも姿勢を正したくなる。
たとえ足を組んで聴いていたとしても、ソファの背もたれに預けていた背中を少しばかり伸ばしたくなるのである。
「単線」「絹巻き」「ウェスタン」「1920年代」・・・それらの要素が有機的に絡み合い、清澄な響きを空間に放出する。
低域から高域まで一本線がしっかり通った感じである。特にどこかにアクセントをつけることなく流暢に話す標準語のように、流れが整っていてよどみがない。
試しに、最近重宝していたTANMOY ST-100を外してみた。以前はその必要性がしっかりと感じられたST-100であるが、その必要性が急激に低下していることが分かる。
「おろちょ~ん・・・」思わず意味のない独り言を言う。「魔のバミューダー海域・・・」まったく意味不明の独り言が続く。「ルクセンブルグ共和国・・・」ますます意味不明の言葉が続いた。そして「1階の分も頼もう・・・」そう決心するのにそれほどの時間は必要なかった。