AcousticTao

趣味であるオーディオ・ロードバイク・車・ゴルフなどに関して経験したことや感じたことを思いつくままに書いたものです。

1911:駐車場

2011年06月08日 | ノンジャンル
 貴重な休憩時間はSさんの「速射砲」のごとき「口撃」にあい、あっという間に終了してしまった。Sさんはいつもそうなのであるが、会話を独占してしまう。どうみても「独占禁止法」に抵触するとしか思えないようなテンポとスピードで口から言葉が飛び出してくる。

 Sさん以外の3名は、相槌を打つことに終始してしまった。よほど腹に溜まっていたものでもあったのか、投げつけるよう話すのである。

 Sさんは「寧々ちゃん」グループの3名のなかでもゴルフのレベルは一番低い。その体型はすっかり崩壊してしまっていて、直線貴重のラインを描いてしまっている。ゴルフのセンスがあるとも思えないが、スクールの出席率は比較的高い。

 「では、また来週・・・お疲れさま・・・」

 飲み終わった紙コップをゴミ箱に入れて、各自駐車場へ向かった。

 私の車は、「寧々ちゃん」のMitoの隣に停めておいた。来たときに黒のMitoを見つけてすばやくその横に車を滑り込ませておいたのである。

 昭和の森ゴルフ練習場の駐車場はとても広い。SさんとNさんと分かれて、私は「寧々ちゃん」と並びながら車の置いてある方向へ歩いた。

 「この前食事したとき、わたし変なこと言っていませんでしたか。ところどころ記憶が無いんです。結構酔っ払ってたみたい・・・」

 「寧々ちゃん」は、そう訊いてきた。私はふといたづら心が芽生えるのを抑えることができなかった。

 「えっ・・・憶えていないんですか・・・」少々大げさに驚いたふうに答えた。

 「なんですか・・・変なこと言ってました・・・」

 「ええ、結構卑猥なことを・・・」

 「あっ・・・からかってますね・・・うそばっかり・・・」

 「憶えていないんなら、いいんです・・・いや、憶えていないほうがいいかもしれません・・・」

 「本当になんか言ったんですか・・・」

 「ええ、はっきりと・・・」
 
 「なんて言ったんです・・・」

 「私、本当はしたいんです・・・って言いました。」

 「絶対、うそ!からかわないでください・・・」

 「寧々ちゃん」のゴルフバッグをMitoのトランクに入れてあげて、バタンと閉めた。そしていたずらっぽい笑顔を向けながら「冗談ですよ・・・でも、そう顔に書いてあったような気がしただけです・・・」とつぶやいた。

 「まったく・・・」と言いながら「寧々ちゃん」は自分の車に乗り込んだ。私もE350のシートに身を任せた。パワーウィンドウを開けて左手を小さく振った。

 「寧々ちゃん」もMitoの窓を下げてちょっと怒ったような視線をよこした。二人の視線は少しの間絡み合った。その感触は少し湿った夜の空気のようにねっとりとしていた。
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