ジョン・クラカワーの「荒野へ」を読んでいる。この前、レンタルビデオ屋で借りてきた映画「イントゥ・ザ・ワイルド」が、思ったよりも面白かったからだが、原作は以前読んだことがあったのに、その時には少しも印象に残らなかったのだ。というのも、当時は冒険もののドキュメンタリーばかり読んでいたので、放浪の末に死んでしまった若者の話に興味が湧かなかったのだろう。
話の概略は簡単だ。大学を卒業した若者が、すべてを捨てて身ひとつで放浪した末、準備不足のままアラスカの荒野に踏み入り餓死してしまうのである。事件当時も、アメリカでは単なる馬鹿者と捉える人もいたし、高邁な理想に燃えた情熱的な青年として捉える人もいた。原作を読むと、どちらかに分類できるほど単純ではなく、高邁な理想に燃えた殉教者であるとともに、野心あふれる自信家の側面があったようだ。
「あなたは家にまっすぐ帰ることばかり考えていました、くる日もくる日も、目にしている同じ場所へ一散に。そのために、神がぼくたちに発見させようとして周囲に配置してくれたすばらしいものを、あなたはなにひとつ発見できないのではないかと思います」
原作のクラカワーに他の作品はないかと調べると、「空へ」というノンフィクションがあった。登山家としても活躍していた作者は、エベレストの登山隊にジャーナリストとして同行する。その登山隊がエベレスト史上最悪の遭難事故を起こし、多数の犠牲者を出した。作者は当事者のひとりとして取材を重ね、「空へ」を書いたという。
というような解説を読んで、あれっと思った。同じような映画を最近観たなと思ったら、「エベレスト」という最近公開された映画の原作だったのだ。
ちなみに映画「イントゥ・ザ・ワイルド」を監督したのは、ショーン・ペンだが、彼は僕のお気に入りの映画「LIFE!」でカメラマン役として出演していた。なんだか、いろんなところでいろんな人たちが繋がっている。