散歩中、雑木林からセミの声が聞こえてくる。が、その声はまだまだ弱々しく、まったくもって勢いがない。セミはセミらしく、もっと下っ腹に力を入れて鳴いてもらいたい。
朝、布団の上で聞くセミの声も、ささやきにしか聞こえない。やはり、九州のセミとは違うのかな。夏と言えば、朝起きた瞬間から、シャワシャワシャワシャワと耳の穴がいっぱいになるくらいクマゼミの大合唱と相場が決まっている。その声を耳にした途端、たちまち暑さにへなへなとしなびてしまうのである。シャワシャワシャワシャワ、ミーンミーンミーンミーン、ジージージージー。
そんな九州のセミに比べると、東北のセミはおとなしい。大体クマゼミがいない。ミンミンゼミもまだ鳴かない。ジージーと申し訳なさそうにアブラゼミが鳴き、木立から早くも夏が終わろうとしているのか、カナカナカナカナとヒグラシの声が聞こえてくる。
僕はこのヒグラシの声を聞くと、いよいよ夏休みも終わるんだなという子供の頃の記憶が蘇り、なんだか淋しくなってしまう。小さい頃、親父の里に墓参りに行くと、当時は納骨堂などなく、山深い場所にひっそりと苔むした墓石が並んでいた。ウチワでぱたぱたとヤブ蚊を追い払い、線香の匂いが立ちこめる中、大人たちは手を合わせる。そんなとき、聞こえて来るのはヒグラシの声だった。
映画「八日目の蝉」の中でも、クライマックスの虫送りの祭りのシーンでも、印象深いのはヒグラシの声だった。
夏は始まったばかりというのに、東北の蝉の声はどことなく淋しい。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます