日本プロ野球の本年度開幕前に「ビッグボス」というのが、鳴り物入りで大喧伝された。最近の日本プロ野球界に思うところ重なってきた僕、「とうとうここまで来てしまった!」と嘆かわしい気持になったのである。疑問はこういうことだ。
相撲と同じで「やる人気」が数10年かかって長期低落し、やがて「観る人気」も落ちてきたその道を辿るのか、と。つまり、するスポーツ人気が弱くなり始めた野球において、プロ野球が次第に興業・見世物の色彩を強めてきたのだが、その興業もとうとうバラエティーにまで落ちてしまったのか!
中日ドラゴンズの最強時代は落合博満監督によって築かれた。という事実は、野球好きなら誰でも知っていること。ところが、この監督の退任時をみていて、日本プロ野球はスポーツではなくなったと僕は悟ったのである。選手にスポーツを教えて勝つということにこれほど有能な監督を、どうして辞めさせたのか。おまけに、これほどの野球スポーツ名監督に次のお呼びが懸からなかったのは、「勝ちすぎると興業にならない」とされたのかそれとも「こんな『スポーツ界』は俺がごめんだ」と落合が蹴ったのか。いずれにしても、プロ野球界はスポーツを捨てて、興業に傾いたのだな! この二つを対立する物として捉えてしまい、その上で後者を取ってしまった! スポーツの世界を貫こうとするならば、落合に比肩しうる監督を何が何でも育てるべきだったのである。
さて今年、新庄監督である。選手らを差し置いて出ること、出てくること! 人気芸能人の新たな再出発でプロ野球人気を盛り上げようという趣向ありありなのである。ちょうど落合退任劇の正反対、そう僕は感じたものだ。選手はどう思うだろう。「監督ばかりを売り出して!」とか、快く思わない人もいるのではないかなどと考えていたら、5連敗である。そりゃ選手もプロとして人気は欲しいだろう。が、スポーツ選手なのだという誇りこそあるはずなのであって、それが芸人を盛り上げる添え物のように扱われているのではないのか。
これでは日本ハムがやがてどんどん勝ち始めてさえ、鳴り物入り監督に込めた「野球再生戦略へのご祝儀。ひょっとして、やがて奇跡の日本ハム優勝?」などと受け取る向きも出てくるのではないか。
プロ野球もあくまでもスポーツとしての野球であって欲しいと願うものである。興業重視のあまりにりバラエティー化すると、必ずその人気は長期的に見て落ちていくはずだ。アメリカ大リーグ野球もバラエティーショウ化した末に随分弱くなったけど、ここから何も学ばないのか? ホームランだけに特化したような大谷翔平のバッティングを観たら、野村克也ならびっくり仰天、お得意のブツブツつぶやきも飛び出すはずだ。このままではスポーツ選手としてのプロ野球名手らに憧れてきた小中学生野球選手が可哀想でならない。