この河井克行とは今はもう言うまでも無く、安倍晋三の最側近。彼の逮捕を妨げるためにこそ、コロナで忙しいはずの国会に「黒川弘務検事長定年延長」・検察庁法改定も強行されたのだとずっと噂されてきたが、これがもはや真実だとはほとんどの国民の認めるところとなった。加えて、この検察庁法改定には、以下のような異常事態が数多く付随していた。
・「検察官には国家公務員法の定年制は適応されない」という過去の政府答弁を内閣が知らなかったか、無いものと無視して黒川氏の定年を延ばしたことが分かっている。
・ここまでして実現目指した「黒川検事総長」が、こともあろうに常習賭け麻雀で辞任。そんな彼への懲戒が、訓告に終わったことも大変な「信賞必罰」異常事態と解されてきた。
・これら全てが、コロナ渦中と遅れた行政対応とによって国民があえいでいる真っ最中に起こった事だから、「黒川検事長定年延長はそんなに急を要することか」と非難されたのも当然のこと。というのも、急いだ理由が分かってみれば、大変な無法・異常内閣である。
さて、この河井克行とは、前法相である。しかも法相に座った途端に、こう述べたと新聞にあった。
「これでもう検察は押さえた」
こんなのが法相と訝るが、安倍内閣最近の歴代法相を振り返ってみるが良いのだ。
14年10月に辞任した松島みどりは、うちわ配布事件から。まー盆踊りが大好きなお方とのことだが、120万円という金を使った賄賂に違いないのだ。これが法相!
そして、この河井克行前法相を検察の追及から守るために、黒川弘務検事総長実現に奔走したのが、今の森雅子法相。「東日本大震災の時、検察官は最初に逃げた」と国会で叫んだのは、「検察庁憎し」でどこか固まっていたお人なだろう。なんで?
そして、僕がここでもう一人上げたい法相が上川陽子。18年7月のオウム大量死刑にサインした法相である。どんな極悪人といえど国家の主権者。その厳粛な命へのこの対処!「国民の命と国法」という極めて厳粛な問題についていかに不見識だったかということを、今一度示してみたい。
『 掌編小説 オウム死刑に見えた国家暴走 文科系 2018年07月23日 17時47分33秒 | 文芸作品
二〇一八年七月一六日夕方、小さな居酒屋の半分ほどが座敷になったその一角の座卓で、連れ合いと飲み始めた俺。すぐ隣の机で、三〇前後らしい三人の男性にちょっとした討論が持ち上がるところだった。教祖初めオウム真理教関係者七人の処刑が十日ほど前に執行されたばかりとあって、そのことについてである。
「あれだけの殺人事件じゃ当然だよな。弁護士一家三人皆殺し場面を読んだことがあったけど、まー酷いもん。子どもだけでも助けてという奥さんの悲鳴なども全く無視されたようだし」
最初にそう切り出したのは、仮に目がね君と呼んでおこう。これを引き継いだのが、小さな顎髭を付けた細身の男性だ。
「でも、あれだけの人数の一斉死刑って、先進国世界はもちろん日本でももう希有なことらしいよ。EU、ヨーロッパ連合では死刑廃止が加盟条件の一つともあったし、日本でもA級戦犯処刑などの例外を除いて、明治末期の大逆事件以来の人数だそうだ」
この顎髭君のニュースソースで、今度は太めのおじさん風が解説を加える。
「そうそう、俺もそんなネット記事読んだけど、大逆事件って政府がでっちあげた明治天皇暗殺計画で、一一人死刑という大事件だそうだ。先日は七人だから、A級戦犯処刑数と同じだよね。俺も何となく嫌な気分になったよ」。
この二人に目がね君が改めて反論する。
「テロや難民問題などこれだけ世界が荒れてるんだから、EUの方がむしろ時代遅れなんだと思う。大量処刑実施って確かに良い気分になれんけど、『最大多数の最大幸福』とか『公序良俗』維持のためやむを得ず……とか、大学で習ったような……」
「確かに俺らはそう習ったね。そういう大目的のために、個々人が自制すべく契約しあって作ったのが国家だという社会契約説」と、顎髭君が付け加える。この三人、どうも大学の同窓生らしいが、法学部の学生でもあったのだろうか。さてここでこの話は一段落したようで、暫く無言時間。やがて、おじさん風がぼそっと語り出した。
「でも、明治末期以来では日本史上ほぼ初めてのことを今やったっていうのは、やっぱり引っかかるなー。もうかなり前から『死刑大国日本』とも言われているらしいし。明治末期って、国民主権国家とも言えなかった時代だろ? その時以来のことを民主主義国家になって半世紀をとっくに過ぎた今やるって……どういう理屈を付けるのか?……麻原らだって立派な主権者なんだろ? 主権者らがその幸せの手段として作った国家がその主権者を殺すって、改めて考えてみればやっぱりおかしくないのかな?」
目がね君がまた答える。
「そこがそれ『最大多数の最大幸福』を目指し続けるためにやむを得ず『こういう方には死んでいただかねばなりません』という理屈。さっきも言ったけど、この数十年、世界もどんどん荒れてきたしね」
これに同調するように顎髭君がウーンッという感じで一つ頷いたその時、おじさん風がウンウンと小さく相づちを打ちながら、またもぼそっと呟きだした。
「上手くまとめてくれたけど、そう解釈すればこそ全く理解できない政府の態度が、あるネット記事に書いてあったんだよ。こんな内容だった。『死刑執行の前日五日夜のことだが、自民党若手議員四十人ばかりが集まった二七回目という恒例の宴会に上川陽子法相も出席。会合の締め間際らしい全員写真も別記事に載っていて、その最前列真ん中に座った安倍首相の左手隣に上川氏が正座して、にこやかに右手親指をたてている光景があった』と。これって、明日の死刑執行決済書類に判を押したばかりの法相の態度かと問われているわけだ。この政府から見ると、めったになかったようなこれだけの大量処刑に異例という感じがまるでなかったことになる。」
さて、急いで家に帰った俺、酔いも残っていたが、ネット記事を猛然と漁り始めた。まず、自民党議員・片山さつきさんのこれ。
『今日は27回目の #赤坂自民亭 @議員宿舎会議室、若手議員との交流の場ですが、#安倍総理 初のご参加で大変な盛り上がり!内閣からは#上川法務大臣 #小野寺防衛大臣 #吉野復興大臣 党側は #岸田政調会長 #竹下総務会長 #塩谷選対委員長、我々中間管理職は、若手と総理とのお写真撮ったり忙しく楽しい! 22:58 - 2018年7月5日』
次いで、ジャーナリスト斉藤貴男氏のこんな文章。
『死刑をリアルタイムで見せ物にすることで、国家権力の強大さと毅然とした態度を国民に見せつけた。意図的な公開処刑であり、死刑が政治に利用された』
ここに言う『リアルタイムで見せ物に』とは、こういう異例なやり方の数々を指している。先ず死刑の予告がマスコミを通して国民に流れた。しかも、これが既に前日に流されていた。加えて、再審請求中だとか、国会会期中だとかには執行無しという諸慣行にも全て反していた。つまり、従来慣行を文字通り無視する形をさらに開き直らせるようにして、国家の力を国民に見せつけるという挙に出たわけである。というように、近代国家理論の諸原則を全て無視する形で改めて主権者の遙か上にそびえ立って見せた今の安倍流日本国家って、一体全体何物なのか? 』
というこの時、多人数死刑前日夜に宴会で大騒ぎしていた法相が、上川陽子。】