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随筆 Jリーグに歴史的強豪誕生(2) 風間と鬼木  文科系

2021年06月22日 23時51分46秒 | スポーツ
 
 19年2月に書いた三連載の再掲、二回目だ。今をときめく川崎フロンターレの強さの分析である。
 
 
 
 川崎フロンターレがJリーグ二連覇を果たした。のみならず、この三年続きでリーグMVP選手を出している。その原動力の一つがゲーゲンプレス戦術の取り入れだと僕は観ていたが、それを解説してくれる中村憲剛のインタビューを読むことが出来た。「Jリーグ サッカーキング」2月号、J1、2、3各リーグ優勝チーム特集号である。

 なお、ゲーゲンプレスというのは、二〇一〇年頃から世界を席巻している「攻撃的守備即得点術」というある戦術であるが、初めに、その定義をしておく。この得点戦術の元祖ドイツはドルトムント時代のユルゲン・クロップ監督の解説を要約すればこういうものである。なお、このクロップはその後イングランド・プレミア古豪リバプールに行って、今年はついに、世界有数の名監督ジョゼップ・グァルディオラ率いるマンチェスターシティーと優勝争いを演じている真っ最中である。

①相手陣地に押し込んだ時、相手が自ボールを奪って攻めに出た瞬間こそ、そのボールを奪えればゲーム中最大の得点チャンスができる。守備体制から急に前掛かりになった相手こそ、守備体制としては最も乱れている時だからというのが、この得点戦術そのものの着眼点である。ゲーゲンプレスとは、英語ではカウンタープレスのこと。相手が守備から攻撃に出た瞬間に、こちらも、カウンターパンチを合わせるように前へと向かう組織的プレスを掛けてボールをうばい、ショートカウンター得点に結びつけようという得点戦術なのである。

②そこから、敵陣に攻め入った時にあらかじめ①を意識しつつ攻めることになる。例えば、DFラインを押し上げて縦に陣地を詰め、そこに身方を密集させる「コンパクト」布陣もこのための準備なのである。また、身方後方にフリーな相手を作らないようにしつつ攻める。奪われた時にボールの受け手になる人間を作らせないように、オフサイドトラップなどあらかじめ準備をしておくということだ。

③その上で、ボールを奪われた瞬間に敵ボールに近い数人が猛然とプレスに行き、他はパスの出先を塞ぐ。この「攻から守への切替」をいかに速く激しくしてボールを奪い切るかが、ゲーゲンプレスの要だ。言い換えれば、そうできる準備を、敵陣に攻め入った時いかに周到にしておくか、そういう組織的訓練がゲーゲンプレスの練習になる。

 さて、憲剛の優勝総括文章を読んでみよう。
『例えば、鬼木(監督)体制になってからの変化として、守備の楽しさを覚えたと話している。……ボールを失った瞬間に、素早く切り替えてボールを取りに行くこと。そして球際の局面で力強さを出すことである。……それこそが鬼木監督が掲げているサッカースタイルなのだ。……もちろん、守備に楽しさややりがいを見出したと言っても、それが目的というわけではない。守備が目的ではなく、目的はあくまでもゴールである。「攻撃のための守備」というのが鬼木体制における合言葉だ。……「相手がボールを取った瞬間に、取り返しに行く。息をつかせない。今は、それがチームの戦術にもなっているし、周りの身方も早く反応してくれる」……そんな守備のスイッチ役としてプレッシャーを掛ける仕事には、時に嬉しい見返りもある。相手のボールを狩りに行き、そのままゴールに繋がる形がそれだ。……』

 川崎は、ボール繋ぎ指導が得意な前の風間監督時代にはどうしても優勝できず、鬼木時代になったとたんに二連覇。この繋ぎ上手チームの優勝への画竜点睛こそ、ゲーゲンプレスの取り入れ、『「攻撃のための守備」というのが鬼木体制における合言葉』だと分かるのである。川崎の時代は今年も続くはずだ。今年三九歳になる憲剛の後にも今年のMVPで今や怪物と言って良い家長昭博がいるからだ。この怪物が近年燻っていたのは、繋ぎサッカー全盛の日本でボールが持てすぎて繋ぎが遅れると見られた時もあったのではないか。ゲーゲンプレス以降のゴール前では、身体も強靱な家長のこの力は、正真正銘の宝物だ。前掛かり守備で奪ったボールを彼に預けて、敵ゴール前に身方選手を増やす時間を少しでも多く作り出せるということだろう。
 
(第3回目に続く)
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随筆 Jリーグに歴史的強豪誕生(1) 家長昭博の幸せ  文科系 

2021年06月22日 11時01分21秒 | スポーツ
 
 これから3回にわたって連載するのは、19年2月末にここに書いた川崎フロンターレがJの歴史的強豪に育ち上がったその内実の分析。このチームに目を付けてゲームを追い、関連本読みを繰り返し往復してきたそのまとめです。日本人として唯一世界最先端のチームで闘ってきた岡崎慎司や、香川を通してみたドルトムントからリバプールにかけて世界を席巻してきた名将、ユルゲン・クロップやをずっと追って来た体験が、この随筆に役立ったと自負しています。ここに書いてあるのは、クロップ・ドルトムントに端を発した現代サッカー最先端の戦略のその内容、3回続けてお読み願えれば幸いです。
 
 
 テレビに、サッカーJリーグ本年度表彰式、今年のMVP受賞者が映っている。二連覇を遂げた川崎フロンターレ・家長昭博三十二歳が、こんな挨拶をする。
『日本を代表するような選手が多いからここに飛び込んできたのですが、多くの刺激をもらえるチームメイトがいて学ぶことがあるクラブに加入して、本当に良かった。皆のおかげで、僕自身も人としても選手としても成長できた。本当に良かったと思えます』

 この家長、十代早くからJリーグ選手育成史屈指の天才と言われながら、芽が出なかったスペインリーグなども含めてここが六チーム目で、それもフロンターレ在籍二年目の選手に過ぎない。こんな彼の言葉に対するに、チームで「長老」と呼ばれている中村憲剛のネット談話もこんな風に報道された。
『加入当初はうちに合わせようという気持ちがありましたが、それよりも自分の間も大事にしてやりたいことをやれ、僕らもそれに合わせる、とやってきて、どんどんアキも良くなっていった。去年の夏以降は苦しい時に突破口を開いたのはアキの左足でしたし、苦しい時に身体を張って時間を作ってくれたのが、アキでした。こんな頼もしい選手はそんなに多くない。数字に直結できるプレーを意識してからすごい怖い選手になった』
 チームに来て二年で現代(世界サッカー)の最高、最新のチーム戦術にこれだけ溶け込んで見せ、かつその先頭にも立って、結果を最大限に評価された家長。やはり天才なのだろう。その天才を見せられる場を、三十路を過ぎて初めて得た希有な幸せ!

 川崎フロンターレ、歴史に残る強豪が誕生した。その二連覇以上に特筆すべきは、そのゲーム内容である。過去に二連覇チームは四つしか無いが、川崎には、日本史上初の快挙が一つ加わっている。川崎からのMVPが三年連続なのだ。一六年の中村憲剛、一七年の小林悠、そして今年の家長。これが特別に興味深いのは、そのチーム戦術とそのプレーとが群れを抜いて優れているということだ。一一人がぴったり意思一致して高度な組織的動きをしてこそ初めて攻守の成果が上がるサッカーにおいて最高殊勲選手が三年続きで生み出せたのは、そのことを証明している。その傍証として、こんな数字も加えられる。本年のJリーグ優秀選手表彰三〇人に、川崎から実に一〇人が入っているのだ。

 川崎のどこが優れているのか。その最大テーマについて、「長老」の説明を聞こう。
『現代サッカーでは攻撃の選手も積極的に守備をするのが当たり前ですからね。その質をどこまで高められるか。いまや、そういうフェーズ(段階)になっている』
『自分が常にスイッチャー(攻から守への切替役)になること、今年最もやるべきことは、そこだと思っています』
 あるサッカーライターは、このチーム、特に中村の凄みを、こう表現している。
『攻から守への切り替えと球際の厳しさを徹底。そこから敵陣でボールの保持(攻撃)と奪取(守備)を繰り返し、敵を一方的にやり込める最強フロンターレの「核」が形づくられていった』
 
(後2回続きます)
 
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