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曲学阿世の新聞書評   文科系

2019年06月19日 11時31分20秒 | 国内政治・経済・社会問題
 6月9日のエントリーで、『「求人率劇的増!」は、安倍忖度論議』というのを書いた。国政選挙を前にしているからか、新聞でもテレビでもこの「有効求人倍率論議」が異常に多い上に、9日の中日新聞でもこの主張に出会って、書く気になったエントリーだ。この曲学阿世論議がまだまだ続きそうだから、何回でも批判したい。

 読書欄に、金子勝著「平成経済 衰退の本質」を中沢孝夫・福井県立大学名誉教授が書評をした文章が載っている。金子のこの著作はこのブログでも触れたもので、その書評としては誤りなどとは到底言えないことを「針小棒大」膨らませてだけ成り立つという意味で、僕としては全く同意できない。その典型、中沢の当該文章自身を抜粋してみよう。

『ただ、本書が強く批判している安倍政治に関しては、必ずしもその視線は公平ではない。直近ではたしかに景気に陰りがあるが、近年(過去六年)で見れば、就業者数が劇的に増加し、失業率が下がり、倒産件数も下がる、という肯定すべき現象もあった。そのことについては、著者は関心を持たないようだ』


 さて、これがこの本への正当な評価と言えるだろうか。なによりもまず、金子が「平成経済全体」を論じているのに、中沢の反論、反証は「近年(過去六年)で見れば・・・」というスパンの現象に過ぎない。

 次に、平成を通じた問題としたら、国民1人当たりGDP世界順位を見れば、一桁前半から、見るも無惨な貧乏国に凋落という数字がある。それも、これだけ長期に渡る確実な労働人口減少の中でのことなのだから、中沢が言う「失業率が下がり」などは、政権にとってなんの功績にもならない。

 さらに言うと、中沢が言う「近年(過去六年)で見れば」という数字は、あの100年に一度と世界中で語られた07~8年のリーマンショック恐慌の後のことである。それもそこから少しずつ立ち直って来るなどというのは自然現象であって、きわめて恣意的な反論期間設定と言える。

 要するに、こんな数字などを取り上げてこの書を批判し、まして安倍を擁護するに至っては、「針小棒大」を通り越したねじ曲げ。ためにする批判、議論の典型と言える。
「就業者数が劇的に増加し、失業率が下がり、倒産件数も下がる、という肯定すべき現象もあった。そのことについては、著者は関心を持たないようだ」??』


 ついでに、昨日書いたコメントも転載しておこう。
『 福井県立大学名誉教授・中沢孝夫。こういう稚拙というよりも悪意極まりない政権擁護論を書く学者こそを、曲学阿世と呼ぶのだろう。やっていることが忖度官僚と同じだが、彼らと同様のことをやっているとの自覚ぐらいはないわけがない。だって、こんなことはいやしくも経済学者ならば知っているに決まっているのだから。

①平成時代に、世界有数の金持ち国日本が世界でも最も急激に貧乏国になった。その分、不安定労働者などが増え、結婚できぬ人々、引きこもりが大きな社会問題になっている。中沢は、このことを自然に起こったことのように思っているのだろう。
②前世紀から数十年続いている凄まじい少子化、団塊高齢者引退などから、労働人口が急激に減ったから、就業率など上がって当然である。少ない年金の高齢者も皆働きたいと振る舞っているのだし。
③「この6年の日本経済を観れば・・・」などというのが、リーマンショックから立ち上がった時期であり、きわめて恣意的な反論時期設定である。批判する相手が平成経済を語っているのにこんなことをするというのは、そもそも一体どういう神経をしているのか。

 中沢孝夫、この忖度官僚さえ避けて通りそうな曲学阿世をよく覚えておこう。』
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随筆 「戦争立国」米、なぜ?  文科系

2019年06月19日 10時23分36秒 | 国際政治・経済・社会問題(国連を含む)
 五月一四日朝、朝刊を読んでいる僕の目に、ちっぽけな見出しが二つ、飛び込んで来た。
『サウジの船舶など「破壊活動」の標的 UAE沖対イラン緊張高まる』
『イラン問題 英独仏と協議 米国務長官 核合意一部停止で』


 同じ一つのことを伝えた記事だ。イランがサウジなどに対して破壊活動を始めたとし、これについてポンペオ米国務長官が英独仏にこんな対応協議を申し入れたと。「イランが米軍を攻撃する兆候があるから、地対空誘導弾パトリオットなどの米軍部隊配備などを進める」。イランの破壊活動なるものが事実かどうかさえあやふやと読める記事の中で即「イランによる破壊工作」。対する米の戦争準備! 当然イラン政府もこんな談話を出した。
『イラン外務省のムサビ報道官は「心配で恐ろしい」と懸念を示し、「地域の安定を損なう悪意を持つ人たちによって計画された陰謀」に注意するよう周辺国に呼び掛けた』

 アメリカの戦争外交というなら、四月末までにも南米ベネズエラに戦火の兆しが巻き起こされた。マドゥロ政権に反発するグアイド国会議長が一月二三日街頭デモ中に「暫定大統領」に名乗りを上げ、米国とEU諸国がただちにこれを承認するという異常事態が発生した。その後米国政府は軍事介入を公言し、グアイドの公然たるクーデター失敗事件なども加わって、マドゥロ大統領退陣戦争という様相になっていた。世界の主要メディアはこうした事態を、「独裁」に対抗する「野党勢力」といった構図で大きく報道した。

「イランによる破壊活動」の方はその後一七日の新聞報道では一転怪しげなものになっていく。米報道を垂れ流しがちな日本マスコミとしてはなかなか貴重なこととて、その中日新聞記事を抜粋してみよう。見出しは『米への「脅威」強調 対イラン圧力 ボルトン氏タカ派ぶり突出』、『イラク戦争 重なる構図』。記事のさわり部分は、こうだ。
『トランプ政権は今、毎日のようにイランの脅威をあおっている。タイムズ紙によると、英国の軍高官が一四日、「イランからの危機が増している状況ではない」と述べると、中東を所管する米中央軍は「米国と同盟国は、イランの支援を受けた武装勢力の脅威を示す情報を入手している」と、躍起になって反論した』
『米国への脅威を理由に軍事介入も辞さずに圧力をかけ続ける姿勢は、イラクのフセイン政権が「国内に大量破壊兵器を隠している」という誤った情報をもとに、二〇〇三年にイラク戦争を始めたブッシュ米政権と重なり合うという指摘も出ている』


 こんな風にアメリカが作り出しているイラン(戦争)情勢に対して、イランのザリフ外相が日本政府を五月中旬に訪問し、河野外相と会談した。河野はイランに注文めいたことを語ったようで、「悪いのは、イラン核国際合意から勝手に抜けたアメリカ。我々は最大限自制している。注文はあちらに言ってくれ」とザリフ氏は応じたようだ。後の記者会見でも「日本は(国連仲介で結ばれたイラン核合意からアメリカが勝手に抜け出したことについて、日本は)何ら行動を取っていない」と抗議を述べたと伝えられた。

 さて、イラク戦争も含めて、今時のこれら米戦争外交とは、一体どこから出てくるものなのか。今回の「米、イラン制裁」「イランの脅威」という戦争政策の指揮を執っているのは、悪名高い国家安全保障補佐官ボルトン。ブッシュ政権がイラク戦争に突入した時のチェイニー副大統領、ラムズフェルド国防長官の下で、国務次官を務めたお人である。そしてその「対戦」相手が、イラク、ベネズエラ、イランと言えば世界原油埋蔵量それぞれ五、一、四位を誇る国々であり、かつ親米国ではないという共通性を持っている。さらにこの原油世界貿易には、これ自体以上にアメリカ現在の生命線が、もう一つ隠れている。

『アメリカに決められた石油とガスを米ドルで売るという規則を無視する勇気があったがゆえに、少なくとも二人の国家指導者、イラクのサダム・フセインとムアマル・カダフィが暗殺された。二人とも米ドル以外の通貨で彼らの石油を売買し始めており、他の国々も同じようにすべきだと強く提唱していたのだ』
 文中カダフィとは「アラブの春」で殺されたリビアの元国家元首。因みに当時のリビアは、原油埋蔵量世界第九位の富を国民に還元して、アフリカ有数の生活水準の国だった。
『炭化水素貿易のために、もはやワシントンが押しつける米ドル使用というきまりに敬意を払わない国々が益々多くなるにつれ、ドル需要は急速に減少するが、これは世界に対するアメリカ・ドル覇権に対する直接対決だ。何年も前に、ロシアと中国は炭化水素だけでなく全てのものを米ドルで貿易するのをやめている。インドとイランも同じことをし始めた。他の国々も続くだろう 。そして先駆者の一つベネズエラは世界最大の石油埋蔵国で、従って他の国のモデルになることは許されないのだ。トランプ政権と、そのウォール街のご主人は、ベネズエラがドルを放棄するのを阻止するのに必要なあらゆることことをするはずだ』
 この出典は、『マスコミに載らない海外記事』サイト。著者は、経済学者で地政学アナリストのピーター・ケーニッヒ。三〇年以上にわたり世界銀行で働いた方で、オンライン誌New Eastern Outlookの五月八日掲載記事。同誌の独占的書き手なのだそうだ。

 今のアメリカは、一般の物貿易は大赤字。だからトランプは保護貿易主義を強行した。この大赤字をある程度取り返してきたのが金融投資利益、兵器輸出、そして石油なのだが、石油貿易にはさらに特別な歴史的役割があったのである。ケーニッヒの文章の末尾から。
『オイル・ダラーを破棄したいと望むあらゆる国が危機にさらされているのだ。もちろんイランも。だがイランもベネズエラも、何年も前にドル体制の牙から自らを解放した二国、ロシアと中国の強い保護を得ている。しかも両国は、主に中国元とSCO(上海協力機構)加盟諸国に結びついた他通貨に基づく実行可能な東の通貨制度案によって明るい未来を提示しているのだ。ベネズエラーー Venceremos(ベンセレモス、我々は勝つ)!』


 さて、こんな国際情勢を見つめつつ我が国を振り返るとどうだろう。安倍首相は、爆笑問題・太田光君との対談で、日本国憲法前文の「日本国民は……平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、(われらの安全と生存を保持しようと決意した)」を読み上げてこう非難して見せた。「他力本願ですよ。ベトナム戦争、イラク戦争など戦争は現にいっぱい起こっているのに……」。ベトナムとイラクはいずれもアメリカの戦争。よって、そのアメリカに寄り添ってきた彼が言う「戦争現実」は、自らも作り出して来たもの。日本の首相という世界有数の影響力を活用してこういう現実世界をもたらしているその人がそういう自覚も皆無のままに、この現実に合わせて九条を換えよと叫んでいるのである。
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