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「借金と財務省の黒い繋がり」??(2)  文科系

2019年06月12日 13時04分17秒 | 文化一般、書評・マスコミ評など
 表題の「 」文言は、今ネット世界で大々的に宣伝されているある本広告のキャッチコピー。右半身の安倍総理が右手人差し指を立ててこちらを睨んでいる黒い画像に被せて「借金と財務省の黒いつながり」と字幕が入った、真っ黒い広告である。これに付いている「こっちへ行け」マークをクリックすると、ある本の広告が最大画像で飛び込んでくる。その本を出した趣旨、内容が書かれているのだが、これが実は次の選挙目当てと露骨すぎて大問題。日本を「こんなに貧しくした」元凶、黒幕について、安倍と会食して聞いた見解を本にしたものだとあり、そのキャッチコピーが「借金と財務省の黒い繋がり」??
 
 さて、これについて先ず言っておきたいが、日本がこんなに貧しくなったというのを安倍が認めたというのは、まことに重畳。その上で、なになに?財務省が悪い?? としたら、以下のようにこんな強引なことをその財務省にやらせたのは誰だったのか? 日本国家財政史にかってなかった大事件として残るあるできごとを描いた書評拙稿を転載させて頂く。


【 書評、前置きと予告「平成金融史」と「平成経済 衰退の本質」

 今、2冊の本を同時進行で読んでいる。1冊は「平成金融史ーーバブル崩壊からアベノミクスまで」(西野智彦著、2019年4月25日発行、中公新書)と、「平成経済 衰退の本質」(金子勝著、同4月19日発行、岩波新書)だ。いずれも、僕のこういう動機から購入することになったもの。「アベノミクスの破綻が今後どう成り行くか?」ということ。

 例えば、西野本の「金融史」の決定的瞬間を覗いてみると、有名な安倍・日銀闘争の場面もある。白川方明総裁を中心とした日銀を、安倍政権が屈服させた結果の産物「黒田バズーカ」以降の今を築いた、その決定的瞬間のことだ。

『(2013年)1月22日、金融政策決定会合で2%の物価目標設定が決まり、このあと財務省、内閣府との連名で共同声明が発表された。声明には・・・・・1ヶ月以上の長い調整過程で白川がこんな言葉を何度か漏らしたのを、周囲が記憶している。
「この様な文書で、後世歴史の評価に堪えられるだろうか」
 2月5日夕、白川は官邸を訪れ、四月の任期満了を待たず、副総裁の任期が切れる3月19日に繰り上げて辞職する、と安倍に伝えた』

 さて、この時日銀を押し切ってまで強引に決まった「2%」方針が一向に成果を上げられないままの2018年、政権内部ではどんな問題整理論議をするようになったか。その下りがまた、スリリングでさえある。
『「黒田さん、達成時期が何度も先送りされるというのはどうですかね」
「達成時期」とは2%目標の達成期限のことである。2%はアベノミクスの「御旗」であり、黒田も就任時に「2%程度を念頭において、できるだけ早期に実現する」と約束していた。だが、5年経っても達成されることはなく、既に6回先送りされてきた。
 安倍の問いかけは、実は「2%の達成時期にこだわる必要はない」というシグナルだった。』

 この2%目標こそ、2013年白川が日銀と自分の職とを賭けてまで「後世歴史の評価に堪えられるだろうか」と政権と論争して押し切られた結末を悔やんでいるその焦点の文言なのである。この論争が、当時白川が述べたことの方が正しかったと安倍が認めざるを得なくなった瞬間でもあった。「黒田バズーカは敗北する」と言った通りと現状を認めたその瞬間に安倍が「期限などどうでもよい」と開き直るように、大転換したわけであった。
『実際、首相官邸ホームページの「アベノミクス3本の矢」の欄から物価に関する記述はいつしか消えていた』というのだから、日銀からこんな声が上がるのも無理はないという無責任さなのである。
『日銀幹部の1人は「政治とはこういうものなのかと驚いた」と回想する』


 そりゃそうだろうと思うばかりだ。物価目標第一を掲げて日銀を罵倒し、屈服させた政権が、そんな目標どころか物価という言葉さえどうでも良いと鮮やかに転換したのだから。開き直ったこの鮮やかさに接すれば、誰でも唖然とするだろう。

 ただし、こういう平成日本財政史を唖然として見ているばかりではとうてい済まないのは、言うまでもない。戦後史上初めて日銀(の独立性)を押さえ込んでまで作り上げた政府目標をずるずると実践し続けても失敗に終わったとあらば、その後遺症が小さいはずがないのである。それがいわゆる「量的緩和、官製バブルからの出口が大変」という難問。タイ経済バブルがはじけたことに端を発するアジア通貨危機や、リーマンショックの時のように、バブルある所に必ず起こる大暴落の結末。これだけ無責任な政権ならば、軍事大増強(経済)の末に大破綻を来したナチスや、金融が同じく物作りを駄目にして保護貿易を強行しながら70兆円にまで軍事費だけは膨らませているという今のアメリカの行く末(米中衝突狙いから、中国の金融資産を奪い取ること)と同様に、その悪循環の果てはただで済むわけはないのである。】

 さて安倍は今、これら総ての日本社会に己が作った悲惨な結末を「財務省が悪かったからこうなった」などと、選挙の中で逃げ回るつもりなのだろうか。これこそ、この「真っ黒な安倍」広告で宣伝している本の中身なのか。

 折しも、2018年度分の国民1人当たり購買力平価GDPがIMFから4月に発表されたが、日本は31位。台湾にはとっくに追い抜かれ、32位の韓国に抜かれるのは時間の問題である。
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