★昨日の日米首脳の記者会見については色々な感想が有りますが、原爆投下についての質問にオバマ大統領があいまいな答えをしたことは印象深かった。それについて「東本高志氏」が下記のような感想をメールで送ってくれた。どうかんであり、紹介したい。 (ネット虫)
昨日の13日にあった鳩山首相とオバマ米大統領の日米首脳会談及びその後の共同記者会見の模様についてはみなさまご承知のとおりです。が、同記者会見後の質疑応答の部分で日本側の記者のひとりがオバマ大統領に「広島、長崎への原爆投下は正しかったとお考えですか?」という日米関係の現在(いま)と過去を考える上できわめて本質的で歴史的な質問を投げかけたこと。同大統領がそのエッセンシャルで、ある意味チャレンジングでもある同質問にどう答えたか、についてご存知の方はどれほどいらしゃるでしょうか?
私は同共同記者会見の実況中継を見ていなかったので、同会見を見ての私としての感想を述べることはできないのですが、アメリカ・ニュージャージー州在住の作家、冷泉彰彦氏によれば、その質疑応答の部分は次のようなものであったということです。
同質問を受けた「オバマ大統領は、明らかに狼狽していました。『ずいぶん沢山の質問ですねえ』とふざけて見せ、『最後の質問は何でしたっけ・・・北朝鮮の問題だったかな?』と巧妙に話題を振って、見事に『北朝鮮の話』を延々として時間切れに持ち込んだのです。要するに質問への回答を拒否した形になりました。オバマ大統領という人のスピーチや、質疑応答での対処はずいぶん見てきていますが、こうした光景は異例です」。「その前の部分では、広島・長崎への訪問予定に関しては『短期的には予定はありません』としながらも『訪問ができたら大変な名誉です』という言い方で、『ニュートラル+やや前向き」の回答をしていましたが、『短期的には予定はない』という発言の部分については、『原爆投下の是非』への回答拒否と併せて、これも重苦しい瞬間でした」(「初来日を果たしたオバマとヒロシマ・ナガサキ」from 911/USAレポート 第433回)。
しかし、冷泉氏が「非常に重要なやり取りだった」とし、かつ「オバマ大統領は、明らかに狼狽していました」とするこの「重要な」質疑応答の部分に関するわが邦の側の報道は私の知る限り産経新聞(2009年11月13日付)の次のような報道のみ。
「--大統領は任期中に広島、長崎を訪れる意向があるか。原爆投下の選択は正しかったかと考えるか。
大統領 日本は核兵器について独自の視点を持っている。原爆が投下されたからだ。広島と長崎を将来訪れることができたら非常に名誉なことだ。短期的には訪問の計画はないが、私には非常に意味のあることだ」
http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/091113/plc0911132303015-n1.htm
朝日新聞ほかにももちろん同「共同会見の要旨」記事そのものはありますが、たとえば同紙のこの部分の報道(2009年11月14日付)は次のようなもの。
「広島と長崎で原爆が投下されたことにより、日本は核兵器について特有の視点を持っている。首相が深い関心を持っているのはよく分かる。私が広島と長崎を将来訪れることができれば、非常に名誉なことだ。短期的には訪問の計画はないが、私にとって有意義だと考えている」
http://www.asahi.com/politics/update/1114/TKY200911130445.html
朝日新聞だけを読む限り、日本側記者のひとりがオバマ大統領に「広島、長崎への原爆投下は正しかったとお考えですか?」という重要な問いを発したことすらわかりません。もちろん、その問いを聞いて「オバマ大統領は、明らかに狼狽してい」たらしい様子もわかりません。この点については産経新聞も同様です。
上記に代わる本日の朝日新聞一面のトップ記事の見出しは「日米同盟『深化』強調 米大統領来日 首脳会談」というものでした。そして、同記事にはもちろん平和憲法を持つ日本政府が「日米同盟」、また「日米同盟『深化』」という用語を用いることへの批判や違和感の表明もありません。むしろ記事は「日米同盟『深化』」はすばらしいことだ、という論調で終始しています。
注:「『日米同盟』とはなにか?」については小林アツシさんの次の記事が簡潔にして要を得た説明になっているように思います。ご参照ください。
http://atsukoba.seesaa.net/article/132713980.html
こうしてわが国のマス・メディアは、もはやジャーナリズム精神とすらもいえない「マスゴミ精神」(ゴミにはゴミの意地というものがあるだろう、ということです)でさえ自らの手で次々と放擲していくということを繰り返しています。あゝ、やんぬるかな。
本土のマス・メディアの総堕落の影響ももちろんあるのでしょう。沖縄のメディアにも従来あった気骨、気概がここ一、二年の間に急速に失われつつある気配を私は寒々と感じています。次の琉球新報の社説記事はそのことを端的に示しているのではないでしょうか?
■鳩山・オバマ会談 軍事同盟より民生の鎖を(琉球新報 2009年11月14日)
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-152790-storytopic-11.html
アフガニスタン支援と称して鳩山内閣が今年から5年間で50億ドル(約4500億円)規模の財政支援をするという方針について、その拠出の実態が、これまで同内閣が繰り返し語ってきた経済復興援助という目的から大きく逸脱した反政府勢力タリバンの元兵士への職業訓練、アフガン警察官約8万人の給与負担などを含む治安維持支援というべきものであるにもかかわらず(「アフガン支援:5年間で4500億円 元兵士職業訓練など―政府決定」毎日新聞、2009年11月10日付)、その支援を軍事色の薄い「農業や教育、職業訓練など民生分野の支援」として「民生分野の支援に転換する意味は大きい」などとする同紙の認識、「来年は日米安全保
障条約改定から50年の節目だ。軍の論理がまかり通った世紀が終わ」ったとする認識など、これまで沖縄のメディアの主張とは明らかに一線を画する主張、認識に変質しているように感じられます。「沖縄のメディアよ、お前もか」とは私は言いたくありません。沖縄のメディアには正気を取り戻して欲しい、と切に願うものです。
東本高志@大分
昨日の13日にあった鳩山首相とオバマ米大統領の日米首脳会談及びその後の共同記者会見の模様についてはみなさまご承知のとおりです。が、同記者会見後の質疑応答の部分で日本側の記者のひとりがオバマ大統領に「広島、長崎への原爆投下は正しかったとお考えですか?」という日米関係の現在(いま)と過去を考える上できわめて本質的で歴史的な質問を投げかけたこと。同大統領がそのエッセンシャルで、ある意味チャレンジングでもある同質問にどう答えたか、についてご存知の方はどれほどいらしゃるでしょうか?
私は同共同記者会見の実況中継を見ていなかったので、同会見を見ての私としての感想を述べることはできないのですが、アメリカ・ニュージャージー州在住の作家、冷泉彰彦氏によれば、その質疑応答の部分は次のようなものであったということです。
同質問を受けた「オバマ大統領は、明らかに狼狽していました。『ずいぶん沢山の質問ですねえ』とふざけて見せ、『最後の質問は何でしたっけ・・・北朝鮮の問題だったかな?』と巧妙に話題を振って、見事に『北朝鮮の話』を延々として時間切れに持ち込んだのです。要するに質問への回答を拒否した形になりました。オバマ大統領という人のスピーチや、質疑応答での対処はずいぶん見てきていますが、こうした光景は異例です」。「その前の部分では、広島・長崎への訪問予定に関しては『短期的には予定はありません』としながらも『訪問ができたら大変な名誉です』という言い方で、『ニュートラル+やや前向き」の回答をしていましたが、『短期的には予定はない』という発言の部分については、『原爆投下の是非』への回答拒否と併せて、これも重苦しい瞬間でした」(「初来日を果たしたオバマとヒロシマ・ナガサキ」from 911/USAレポート 第433回)。
しかし、冷泉氏が「非常に重要なやり取りだった」とし、かつ「オバマ大統領は、明らかに狼狽していました」とするこの「重要な」質疑応答の部分に関するわが邦の側の報道は私の知る限り産経新聞(2009年11月13日付)の次のような報道のみ。
「--大統領は任期中に広島、長崎を訪れる意向があるか。原爆投下の選択は正しかったかと考えるか。
大統領 日本は核兵器について独自の視点を持っている。原爆が投下されたからだ。広島と長崎を将来訪れることができたら非常に名誉なことだ。短期的には訪問の計画はないが、私には非常に意味のあることだ」
http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/091113/plc0911132303015-n1.htm
朝日新聞ほかにももちろん同「共同会見の要旨」記事そのものはありますが、たとえば同紙のこの部分の報道(2009年11月14日付)は次のようなもの。
「広島と長崎で原爆が投下されたことにより、日本は核兵器について特有の視点を持っている。首相が深い関心を持っているのはよく分かる。私が広島と長崎を将来訪れることができれば、非常に名誉なことだ。短期的には訪問の計画はないが、私にとって有意義だと考えている」
http://www.asahi.com/politics/update/1114/TKY200911130445.html
朝日新聞だけを読む限り、日本側記者のひとりがオバマ大統領に「広島、長崎への原爆投下は正しかったとお考えですか?」という重要な問いを発したことすらわかりません。もちろん、その問いを聞いて「オバマ大統領は、明らかに狼狽してい」たらしい様子もわかりません。この点については産経新聞も同様です。
上記に代わる本日の朝日新聞一面のトップ記事の見出しは「日米同盟『深化』強調 米大統領来日 首脳会談」というものでした。そして、同記事にはもちろん平和憲法を持つ日本政府が「日米同盟」、また「日米同盟『深化』」という用語を用いることへの批判や違和感の表明もありません。むしろ記事は「日米同盟『深化』」はすばらしいことだ、という論調で終始しています。
注:「『日米同盟』とはなにか?」については小林アツシさんの次の記事が簡潔にして要を得た説明になっているように思います。ご参照ください。
http://atsukoba.seesaa.net/article/132713980.html
こうしてわが国のマス・メディアは、もはやジャーナリズム精神とすらもいえない「マスゴミ精神」(ゴミにはゴミの意地というものがあるだろう、ということです)でさえ自らの手で次々と放擲していくということを繰り返しています。あゝ、やんぬるかな。
本土のマス・メディアの総堕落の影響ももちろんあるのでしょう。沖縄のメディアにも従来あった気骨、気概がここ一、二年の間に急速に失われつつある気配を私は寒々と感じています。次の琉球新報の社説記事はそのことを端的に示しているのではないでしょうか?
■鳩山・オバマ会談 軍事同盟より民生の鎖を(琉球新報 2009年11月14日)
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-152790-storytopic-11.html
アフガニスタン支援と称して鳩山内閣が今年から5年間で50億ドル(約4500億円)規模の財政支援をするという方針について、その拠出の実態が、これまで同内閣が繰り返し語ってきた経済復興援助という目的から大きく逸脱した反政府勢力タリバンの元兵士への職業訓練、アフガン警察官約8万人の給与負担などを含む治安維持支援というべきものであるにもかかわらず(「アフガン支援:5年間で4500億円 元兵士職業訓練など―政府決定」毎日新聞、2009年11月10日付)、その支援を軍事色の薄い「農業や教育、職業訓練など民生分野の支援」として「民生分野の支援に転換する意味は大きい」などとする同紙の認識、「来年は日米安全保
障条約改定から50年の節目だ。軍の論理がまかり通った世紀が終わ」ったとする認識など、これまで沖縄のメディアの主張とは明らかに一線を画する主張、認識に変質しているように感じられます。「沖縄のメディアよ、お前もか」とは私は言いたくありません。沖縄のメディアには正気を取り戻して欲しい、と切に願うものです。
東本高志@大分