中野みどりの紬きもの塾

染織家中野みどりの「紬きもの塾」。その記録を中心に紬織り、着物、工芸、自然を綴ります。

「紬塾」移動教室--武蔵野美術大学にて

2010年11月28日 | 「紬きもの塾」移動教室





11月17日に東京都小平市にある武蔵野美術大学工芸工業デザイン科テキスタイルコースで、
3年生の学生を対象に特別講義をしてまいりました。
同大学の、すばらしいテキスタイルアートの作品を創られる田中秀穂教授からの依頼で、
「糸や布や着物をめぐっての普段の仕事の話をしてくれればいい」とのことでしたので、
喜んでお受けした次第です。
さながら「紬塾」の移動教室というところでした。


講義タイトルは『糸のかたち、布のちから』として、
このブログでも書いているようなことですが、真綿から一人ひとりにずり出しで、
糸を引いてもらうミニワークショップも交えてのレクチャーでした。


テキスタイルを勉強している人たちですから、染めや織りに日常的に触れているわけですが、
着物についての学習機会はこれまでほとんどなく、絹糸に触れることもあまりないようです。
20歳過ぎの若者が着物をどう受け止めるか、私にとっては未知の体験でしたが、
講義が進んでいくにつれて、学生たちはだんだんと興味を向けてきたように感じられました。





耳(布の端)がきれいに織れているとホメていただきもしました。^^;
さすがに着眼がいいようで……。
私は「耳がきれいに織れている布は真ん中もよく織れているはずです」と応えましたが、
うなずいてくれました。





最後には学生の一人に私の仮仕立ての着物をまとってもらいました。
「浴衣が着られれば、紬も簡単に着れます。半巾帯で文庫に結べばいいんですよ。
補整などしないで、自分なりの体型に合わせてきればいいのです。」
という私の説明に、学生たちの興味はぐっと高まってきたようです。
田中先生も「次回は着付けをやろう!」とノリノリでした。
「本当は着物大学があってもいいぐらいだね」ともおっしゃってました。
まったく同感です。

受講した学生から感想文をいただきました。
みなさん、さすがに感性がいいんです。
下に何人かの文章を紹介させていただきます。
若い人たちが思い思いにデザインし、手紡ぎの糸で着物を織り、
着てくれたらどんなにいいことでしょう。
卒業式には自分で織った着物で参加したら、素晴らしいですね!


[学生の感想文より]

「真綿を初めて見たので、ほわほわしていて面白く、今日一番印象的でした。」

「糸のこと、染色のこと、着物のこと、とてもおもしろい話が聞けました。着物はお正月に、ゆかたは夏に着るか着ないかでしたが、もっと着てみたいと思いました。何か気恥ずかしい気持ちがあるのですが、色とか柄とか、もっと見直してみたいです。Sちゃんの着物姿がかわいかったです。」

「桜の木で染めた布や糸を見て、一つの原料からあれだけ色数ができるなんてびっくりしました。
 色をあわせたり自分で木のチップをつくって煮出したり、やり込めばやり込むほど深いものだと思いました。」

「持ってきていただいた着物に触ったら、知ってるような知らないような不思議な触り心地で新鮮でした。
 着物を自分は着てないけど、前に母が持ってる着物を出しているの見たら、意外と何枚も持っていたから、ためしに着てみようかなと思いました。」

「着物も、とても気軽に着れるんだなあと思ったし、すごくすごくすてきに見えました。毎日着ることは確かに今はむずかしいけど、着物のあるくらしは絶対にすてきだとおもいます。」

「素材に触れて体験できたのがよかった。先生が話されたあの(蚕が吐き出した糸の)波状形が確認できた。
着物というものがどういう存在だったのか、少し垣間見ることができた。」

「季節を感じてそこから直感的・感覚的に色を決めたりするのも、草木染も、自然に密着というか自然の流れと一緒に創っているようで、とてもキレイだと思います。人の生活だとか、人が造ってきたものにすごく馴染んでいて、私は着物を着ないけど、親近感を感じました。」

「植物には植物の四季を通してのリズムがあり、それを読みとって染めることは合理的であるし魅力的なことだと思った。
着物文化はだいぶん変容しているし、着にくい時代だが、やっぱり着物は着たい。暖かいし、涼しいし、立派なエコであるし、長い時間かけて理にかなったつくり、構造になったと思う。
日本人が日本で暮らす日本人のために自然とできてきたもの、すっと未来にも、少しでいいから自分なりに大事なことを伝えていきたいと思った。」

「糸を紡ぐところから始めて、草木染など全て自然のものから生まれる着物はとても魅力的に思います。桜の木や花のみを使って染めた着物を着ることは、まるで桜の化身になったような、なれるような気がしました。昔の人は皆一からの工程で着物を、しかも人の数だけ作っていたと思うと、日本人の着物への執着や愛情を感じます。巷に安価で出回っている機械織りの着物は着物の意味が欠けてしまったような気がしてさみしいです。」

「私がやりたいと思っていることをすべてなさっていたので、私も先生みたいになりたいと思いました。しかし現実として食べていけるのかという問題があり、どうしようか迷っている部分もあります。
今日着てらっしゃった着物が素敵だと思いました。」

「ものと時間を大切に考えていくことを着物を通して学ぶこと。着物を着てみたいと思っていたので、今度母や祖母に教えてもらおうと思いました。」




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