中野みどりの紬きもの塾

染織家中野みどりの「紬きもの塾」。その記録を中心に紬織り、着物、工芸、自然を綴ります。

着物を着ること、装うこと

2024年06月15日 | こぼれ話(着物)
先日、少人数の夜の会食に出かけました。
心尽くしの美味しいお料理はもちろんですが、主賓の国内外で活動されている方のフラットなものの見方に、学びがあり楽しい充実した時間となりました。

紅一点でしたので、私にしては華やかに装ってみました。(^^♪
桜染めの赤味を含んだ黄色地に薄紅色の細い縞です。
節のほとんどない、玉糸をたて、よこに使い試織したものです。



帯は20年前、たまたま銀座の画廊の前を通りがかった時に、ショーウィンドウに外国の古い美しい布が飾られていて、中へ入ると帯に仕立てたものも数点あり、その中の絹のサリーから仕立てたこの帯が気に入り買い求めました。

母を亡くしたばかりの悲しみのどん底にあった時で、私の体調も懐具合も悪かったのですが、母が「買いなさい・・」と背中を押してくれたような気がしました。
華やぎのある帯ですが、草木染の着物とも合う色合いです。
前柄の裏面(太鼓の左側)も素敵なのですが、今日はお祝い絡みの会ですので、赤を効かせた方を使いました。


野薔薇の洒落紋は、草木で染めた紬の経糸を十数色、職人さんにお渡ししてそれで刺してもらいました。
普通、日本刺繍は無撚糸の糸を使いますが、これは撚りが入ってます。
野趣のある、世界に一つの紋です。
この着物については拙著、「樹の滴-染め、織り、着る」にも掲載されています。

季節の料理とお酒。庭の植物を眺め、楽しく学びのある会話。
人との繋がりの中で、こんな時間を持てたことを幸せだと思います。

着物を着ることは、身体を包むだけではない、その場に何を着ていくのか、心を尽くして考え、選んでいくこと。それはとても高度な精神世界です。

昔の人たちは布や着ることに対して、今以上に大切にし、また拘りがあったと思います。

紬塾後半の、取り合わせの回の時に、ただの色合わせ、コーディネートをすることだけではないこともお話ししますが、"着ること(装うこと)"は人の生き方にも関係してくる奥深いものです。





コメント
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