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「追悼 赤塚不二夫展」─とりあえず、イヤミとチカ子について。

2011-08-19 | ■美術/博物
八戸市美術館で開催中の「追悼 赤塚不二夫展」。

え、追悼? 赤塚不二夫が亡くなったのは2008年。もう3年も経ってるのに? 実はこの展覧会、読売新聞社が元締めで、全国各地の美術館を巡回してて、このたびようやく青森までやってきたということですね。3年経とうが何年経とうが、追悼は追悼なのだ!

というわけで、数年前に東京の青梅赤塚不二夫会館を訪れた時以来の赤塚ワールド、楽しんできました。白川東一(KOO-KI)による新作オープニングアニメに始まり、トキワ荘時代の写真、プロになる前に仲間と作った肉筆の回覧誌「門外不出の墨汁一滴」、そして、中学校時代に書いたという「ダイヤモンド島」というマンガ。ギャグのセンスはこの頃から芽生えは見られます。もっとも、まだまだ、のちの「赤塚不二夫風」のキャラクターには程遠いのですけどね。「ナマちゃん」など、プロになってからの初期の作品も、まだほのぼのチック。むろん、こういう作風も確かに「赤塚不二夫」ではあるのだけれど。この頃の作品には、あ、これってチビ太だとか、「ひみつのアッコちゃん」の大将だとか、のちのちの有名キャラクターの原型になるような人物がたくさん出てきて楽しい。

そして、最初の大ヒット作、「おそ松くん」に至る。手書き原稿やカラー扉絵などがずらりと並べられていて、思わずじっくりと1枚1枚見てしまう。面白いのは、最初、六つ子の顔を描くのに、面倒なのでコピーを使っていたということ。原画を見ると、確かに、顔の部分だけ、コピーを切り取ったものが貼り付けてありました。当時はまだコピーの質も良くなかったのか、その部分だけちょっと黒っぽいのですが、それでも印刷には問題なかったのかなとつい余計なことまで心配してしまう。で、もっと面白いのは、結局、コピーを切り貼りするほうがもっと面倒だということになって、手描きに戻ったという話。ま、読者としても、コピーより本人がちゃんと手描きしてくれたほうがうれしいですよね。

「おそ松くん」こそ、赤塚ギャグの嚆矢。イヤミ、チビ太、デカパン、ハタ坊、ダヨーンのおじさんなど、超個性的なキャラクターが目白押し。今で言ったら、「スピンオフ」作品がいくらでも作れてしまうじゃないか! イヤミについては、もう完全に主役といってもいい。フランス帰りのザマス言葉。驚いた時に出る「シェー!」は国民的ポーズとしてすっかり定着しました。今回の展覧会でも、「シェーッ!」オンパレードと称して、各界の著名人(マンガのキャラクター含む)がそれぞれ「シェー!」をかっこよくキメてくれています。ちゃんと、「靴下びろ~ん」も再現してくれている優れた人もいる反面、私は見逃しませんでした。3~4人でしょうか、手足の左右を間違ったシェーをしていることに。誰とは言いませんが。ずっと前にも書きましたが、正式な「シェー」は、右手を真上に(掌は下に向ける)、左手は肘のところで90度に曲げて胸に当てる。右足を膝で折り曲げてまっすぐに伸ばした左足と交差させる。というのが正しい。左右の足を逆にしたら、どう見てもおかしいはず。「オヨヨ」になってしまいますから! 以後気をつけるように。



今回展示されていた手描き原稿で、イヤミが、みんなからシェー!を見せて、と言われて、1回につき1,000円もらうという話がありました。さすが、抜け目のない、というか根がいやしいイヤミ。相手が子供でも容赦しません。3人いたらしっかり3人分お金はもらう。ところが、しばらくすると、シェーも飽きられて、誰も見せてと言わなくなる。そこでイヤミは「新しいギャグ」を考える。たとえば、自分の出っ歯を相手につけてあげるとか。誰もいらないって、そんなの。なんか、イヤミらしい話ですよね。時代や流行の変化に敏感で、常に最先端の潮流に乗りたいのに、なぜかちょっとだけ遅れてしまう。彼は、あの時代だからこそ熱狂的に受け入れられたキャラクターなのかもしれませんね。

で、次にいきなりファンタジー系の「ひみつのアッコちゃん」コーナーです。アッコちゃんのアニメは2回もリメイクされていて、少しずつ設定やキャラクターも変わってきています。会場には、それぞれの時代に売り出された「コンパクト」の実物も展示してあって、それも時代の流れを感じさせます。お母さんが初代のコンパクトを持っていて、娘が2代目か3代目のコンパクトを持っている、というのも十分あり得る話で、そういう意味では、数ある変身少女アニメの中でも、アッコちゃんは不動の女王と言えるかもしれない。

私にとっては、「ひみつのアッコちゃん」といえば、もちろん初代。小学生の頃、いとこの家にあったマンガを読んでたし、アニメも見ていました。このマンガは基本的に少女向けなのですが、たまたま主人公が女の子というだけで、大将のような男くさいキャラクターも出てくるし、友情や根性がテーマだったりするので、男子でも好きな人が多かった。ただ、どう見ても金持ちのお嬢様のアッコちゃんが、「貧乏」だったり「足を引きずって」いたりする「社会的弱者」に優しく接してあげて、時には「施し」っぽいこともしてあげて仲良くなるという、今ならちょっと問題のありそうな設定もけっこうありましたね(この件については、以前も書きました)。高度経済成長時代ならではのマンガなのかもしれません。



このマンガでもっとも特徴的なキャラクターは、なんといっても「チカ子」だと私は思っています。分厚い眼鏡をかけていて、何かの拍子に眼鏡を落とすと、「メガネ、メガネ」と探し回る。そういうコンプレックスもあったのでしょうか(?)、チカ子の最大の強みは、人の話しを盗み聞きして、しかもそれをみんなに言いふらすといういわば「情報通」であるということ。この子の前では、ひそひそ話とか内緒話は通用しませんから! チカ子は必ずどこかで聞き耳を立てている。「みーちゃった、みーちゃった」といって噂を広めるためにピューっと風のように消えていく彼女は本当にうれしそう。チカ子のせいで話しがややこしくなってしまうことはよくあることで、みんなアタマに来たりするのですが、なぜか彼女を憎めない。それは、たぶん、彼女から人の噂を聞くことができるという、うま味もあるからに違いない。人の噂って、みんな好きですからね。それにしても、チカ子はいったい、成長してどんな仕事をしているのか。気になる気になる。

このあと、いよいよ、不朽の名作「もーれつア太郎」、そして、国民的マンガ「天才バカボン」のコーナーがやってくるのですが、それはまた次の機会に紹介しましょう。


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