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「世界がもし100人の村だったら」ワークショップ

2006-07-09 | └人権教育・学習
昨年度のじ・ん・け・んファシリテーター養成講座でお招きした桜井高志さん(桜井・法貴グローバル教育研究所代表)から、岡山でこんなのやったんです、と紹介していただいた新聞記事のコピー。それは、子どもたちを対象とした「世界がもし100人の村だったら」ワークショップの様子を伝える記事でした。こりゃおもしろそうだなーと思って、はちのへ子ども劇場の方に人権モデル講座の一つとしてやってみませんか?と持ちかけたところ、とんとん拍子に実現したのが、今日行われたワークショップ「ひとりひとりが地球人!」です。

ファシリテーターはもちろん桜井さん。ワークショップ本番は午後からのスタートでしたが、まず驚いたのは、その前に午前中2時間ほどかけて、高校生ボランティアやスタッフを対象としたプレ・ワークショップが行われたことでした。受付や掲示物、会場設営などの準備がメインでしたが、それでも、集まった20人ほどの高校生に向かって「午後の100人村ワークショップを、これからみんなができるようになってほしい」と桜井さんが語りかけるなど、意識づけもばっちり忘れない。単なる「準備作業」に終わらせないところがさすがだな、と思いました。

午後1時。100人以上の子どもたちと親が集まっていよいよ100人村ワークショップ開始。

「世界がもし100人の村だったら」は、2001年にインターネットを介して世界中に広まったインターネット・フォークロア(=民話)です。日本ではマガジンハウス社から絵本仕立ての本が出ています。地球上の63億人がもし100人の村の住民だったら…という設定は、単純ですが、子どもたちが「世界」や「地球」を身近にとらえるための入り口としてはうってつけの方法ではないかと思います。たとえば、「52人が女性で48人が男性である」、「70人が有色人種で30人が白色人種である」。52%とか70%という言い方よりも、「村」の住民という設定で考える方が楽しくはありませんか? ましてや、自分自身がその村の住民に「なってみる」としたらどうでしょう。そんな体験ができるのが今日のワークショップでした。

「100人の村」はいろんな角度から読むことができる本です。今日は、大陸別の人口を体感してみるという、その中でも初歩的な切り口の体験です。体育館の床にビニールテープで作られた世界地図。100人の参加者は、受付で任意に配られた国名カードに従って、地図の上に立っていきます。日本は2人、ヨーロッパが12人、アジアは61人…。狭い大陸にぎゅうぎゅう詰めになるヨーロッパ、余裕のある中南米、一人も立つことのないオセアニアなど、それだけでもいろいろな気づきがあります。

それから、カードに書かれたその国のデータを読み解いていきます。平均寿命、5歳まで生きられる確率、安心して水が飲めるかどうか、識字率や教育普及率。桜井さんに次々と指名されて、「自分の国」のデータを読み上げていきます。アフリカのシエラレオネという国では5分の1の子どもが5歳まで生きられないというデータに驚きの声があがります。「安心して水が飲める国」の人には、ミネラルウォーターが1本ずつ配られましたが、そうでない国には、「毒物」と書かれたボトルが手渡される。「識字率」が高い国の人はそれが読めるから大丈夫。けれど教育さえ満足に受けられない国の人は…。

お菓子の分配については、大陸ごとに計算問題の「試験」が課せられました。北米や日本、ヨーロッパには電卓も配られますが、その他の大陸には鉛筆しか配られません。結果にはもちろん大差がつきます。その結果に応じてお菓子が配られるとしたらどう感じるか。子どもたちの素直な感情が飛び交います。お菓子をもらえない国の人たちからは、不満続出。「不公平だ」、「ヨーロッパの人が電卓を貸してくれなかった」、「奪い取ってやろうかと思った」。先進国の人たちからは、「いっぱいもらえてうれしい」、「もらえない人たちがかわいそう」。

そんな子どもたちの声を丁寧に拾い上げながら、ちょっと別の角度からも考えてみようと話しかける桜井さん。しきりにうなずく子どもたちの表情が印象的でした。

ワークショップが終わってから桜井さんと少し話をしたのですが、「今日の体験で、子どもたちが世界や地球について“何か”を感じ取ってくれたらそれでいいのでは」と話してくださいました。子どもたちにとっては、今日のことがすぐには「次」のステップにはつながらないかもしれません。けれど、いつか彼らが、世界が抱える問題を本気で考えるようになった時、あるいは大人になって「地球人」としての仕事をするようになった時、今日の体験をきっと思い出してくれるにちがいありません。

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